
6月に初のオールタイムベストアルバム『ALL TIME BEST 25th Anniversary』をリリースしたCrystal Kayさん。
「時代や国境を越えて楽しめる一枚」と語るその裏には、ニューヨークでの“自分探し”の日々や、今のK-POPシーンにも影響を与えた音楽キャリアがあります。
13歳の自分に誇れる「今の私」、そしてこの先に描く未来について、今の想いを語ってくれました。
プロフィール
1986年生まれ、神奈川県出身。1999年デビュー。R&BやJ-POPを融合した“CKサウンド”で注目される。2013〜15年にはニューヨークへ単身移住。帰国後は舞台にも活躍の場を広げ、2024年には日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』にも出演。2024年7月から25周年イヤーを迎え、12月に25周年記念ライブを開催。ジャンルや時代を越えて進化し続ける、唯一無二の存在。
13歳でデビュー。意外と自分は変わってない⁉

――デビューから四半世紀という節目を迎えた今、率直にどんなお気持ちですか?
25年経っても、変わらず音楽を聴いてくれている人たちがいることに、あらためて感謝の気持ちでいっぱいです。振り返ると、“ここまで全力で走り抜けてきたな”という思いもあって。でも、私の音楽人生はまだまだ続くと思っているので、これからも変わらず歌い続けていきたいです。
――25年前のCrystal Kayさんは、今のご自身をどんなふうに見ていると思いますか?
正直、当時の自分は“今の私”を全然想像できていなかったと思います。でも…意外と“想像どおり”かもしれません(笑)。見た目もあまり変わってないし、「そのまんまじゃん!」って思うかも。
ただ、13歳の私は“世界で活躍したい”という夢をずっと抱いていたので、今の自分を見たら「もっと頑張れるでしょ!」って背中を押してくれる気がします。でも、これまでにご一緒させていただいたアーティストの方々のことを知ったら、「わぁ、すごい!」って素直に喜んでくれると思います。
こうしてキャリアを重ねていく中で、少しずつ“成長”や“レガシー”を積み重ねられている実感があります。そう考えると、自分の歩んできた道にちゃんと誇りを持てているな、と思いますね。
自分を知り、“届ける”ことの意味に気づいたニューヨークの1年半
――25年間を振り返って、「これは忘れられない」と思う瞬間はありますか?
やっぱり、アメリカ・ニューヨークで過ごした1年半ですね。あの時間がなかったら、今の私はいないかもしれない。それくらい、大きな変化をもたらしてくれた場所です。
それまでは日本の“心地よくて安全なサークル、バブル”の中で暮らしていたんですが、カオスで刺激的な街・ニューヨークに飛び込んだことで、世界の広さと同時に自分の小ささを痛感しました。言葉の壁は無いけど、文化の違いは有るなかで、初めての一人暮らし。音楽のために行ったはずが、結果的には自分をさらけ出す旅だったなって思います。
――日本では感じられなかった“自分”に出会ったんですね。
私はミックスカルチャーとして日本で育ったこともあり、目立つという風習があまりない日本で生まれ育ったので自分のカルチャーやアイデンティティに対して問う機会や場面がなかったんです。でも、ニューヨークでは逆に「あなたは何ができるの?」って常に問われ続ける。歌って踊れる人なんてゴロゴロいるなかで、自分だけの武器を探して、自信がなくて、落ち込む日もたくさんありました。
そんなとき、現地の友達がふと言ってくれたんです。「君はアメリカ人なのに、日本でキャリアを積み上げてきた。それって本当にすごいことだよ」って。…泣きそうになりましたね。その瞬間、初めて「自分をちょっと好きになってもいいのかも」って思えたんです。
――自分に対して、ようやくOKが出せた。
そうですね。キャリア的な成果はなかったけれど、それ以上に、“心の筋トレ”みたいな日々でした。帰国前に「何か残したい」と思って、自力でライブも開催したんですよ。会場探しからチケット販売、告知まで、すべてひとりで。無我夢中でした(笑)。おかげで満席になって、さらに追加公演の話までいただいて。アメリカのファンにも「ずっと聴いてたよ」って声をかけてもらえて、「あ、私の音楽ってちゃんと届いてたんだ」って実感できたのも、大きな収穫でした。
“タイムレス”な音楽でつないだ25年。今、すべてを詰め込んだベスト盤が完成

――初のオールタイムベストアルバムがリリースされますが32曲という大ボリュームの収録曲は、どのような基準で選ばれたのでしょうか?
まずファン投票を行ったんです。それに加えて、レコード会社の皆さんやLDHのスタッフ、女子ダンサーなど、社内外のいろんな意見を聞きました。自分の「これは絶対入れたい!」という想いも大事にして、全部をバランスよく取り入れた形になっています。それから、今回は初めてソニー時代とユニバーサル時代の楽曲をまとめて収録しているので、そういった時代の流れも意識して選びました。
――32曲の中で、「これが私の曲だ」と思える楽曲はありますか?
デビュー曲の『Eternal Memories』ですね。今聴いてもまったく色褪せていなくて。13歳の当時は歌詞の意味はよく分からなかったけれど、今では内容が自然と自分に重なってくるんです。和の世界観を、ハーフの自分が歌うというギャップも面白くて、しかもR&Bの要素もあって。“これが私の音楽だ”と思える、大切な一曲です。
――Crystal Kayさんの音楽にあまり触れてこなかった世代に向けて、このベストアルバムの魅力を伝えるなら、どんな言葉がふさわしいと思いますか?
言葉で表すなら、“タイムレス”ですね。色褪せない、いつ聴いても新鮮に感じられる音楽。それがこのアルバムには詰まっていると思います。私はたぶん、死ぬまで音楽を作り続けると思うんですけど、その中で「いいレガシーを残したい」という想いがあって。このアルバムは、その第一歩のような感覚です。
――“レガシー” (遺産)という言葉、とても力がありますね。
ありがとうございます。特に、私の音楽を知らない若い世代の方には、“音のタイムマシーン”として楽しんでもらえたらうれしいです。1曲ごとに、その時代の空気感や、自分の成長が詰まっていて、懐かしさと新しさが共存している作品になっています。
時代や国境を越えて、音楽でハッピーを届けたい
――Crystal Kayさんの楽曲は、今のK-POPシーンにも影響を与えていると聞いています。
そう言ってもらえるのは本当にうれしいです。実は、今のK-POPや日本のダンス&ボーカルグループのサウンドって、2000年代の音楽を現代風にアップデートしたものが多くて。韓国に行ったときも、「あなたの曲を参考にしています」って声をかけていただいたことがあって、自分の音楽が今の時代にまた別のかたちで生きているんだと思うと、すごく光栄でした。
今回のアルバムも、そういう意味で“時代や国境を越えて楽しめる一枚”になっていると思います。肩の力を抜いて、ちょっと懐かしい映画を観るような気持ちで、気軽に聴いてもらえたらうれしいです。
――25周年を迎えた今、10年後、20年後の自分にどんな未来を描いていますか?
ずっと“人をハッピーにできる歌手”でいたいという想いは変わりません。そのうえで、歌だけじゃなく演技などにも挑戦して、表現の幅を広げていきたい。将来的には、アジアを代表する歌手として世界で活躍できたら最高ですね。
今は音楽が国境を超えて届く時代。だからこそ、“Crystal Kay from Japan”として、もっとたくさんの国でパフォーマンスをして、世界中の人たちに音楽を届けていけたら嬉しいです。
Information
オールタイムベストアルバム『ALL TIME BEST 25th Anniversary』
Crystal Kay初のオールタイムベストが発売中。「恋におちたら」など、代表曲の再録含む全32曲で、25周年の軌跡をたどる1枚。
撮影/新道トモカ ヘアメーク/遠田眞里 スタイリング/角田今日子(ポストファウンデーション) 取材/池田鉄平 編集/越知恭子
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