【怒られない時代の働き方】芸人・吉住さんの成長する人が実践している「自分から学ぶ力」とは?

芸人・吉住さん

ハラスメント意識が高まり、職場で強く指摘される機会が減った昨今。もちろん安心して働ける環境は大切だけど、時には怒られることが成長のきっかけになることもあります。人間関係や日常に潜む違和感を独自の視点で切り取る、芸人・吉住さんに、CLASSY.世代が抱える「怒られたいけど、怒られない」モヤモヤについて聞きました。

上手い切り込み方をマスターせよ!
自分で“怒られ”に行けるかが
自分のキャリアの鍵を握る

芸人・吉住さん

芸人界も会社員も同じ
今の優しい環境のなかで
課題に気づけるかが重要

今回、このテーマを聞いた時に「まさに私も感じていた!」というリアルな悩みだったので共感してしまいました。私は会社員ではないので、直属の上司がいて怒られる、みたいな環境ではないですが、縦社会と言われる芸人の世界ですら、最近の現場では誰も怒りません。昔は先輩芸人が後輩に「適当に何か買ってきて」というお題を出して、そこから後輩が買物大喜利をする恐怖の文化があったらしいですが、今では後輩が「買ってきますよ!」と言っても、「大丈夫、自分で行く」と先輩が断る。もはや先輩のほうが気を遣っているんです。

それで言うと、最近は『水曜日のダウンタウン』でピン芸人のはっしーはっぴーさんが世間で話題になってましたよね。番組の企画でチームプレーで協力するなか、自分がやってしまったミスを謝らず、むしろ逆ギレする態度に、先輩芸人が怒りたいのに怒れないジレンマを抱える姿が印象的でした。私は彼とお会いしたこともないし、現場にいなかったので本当のところは分からないですが、あれだけ反響があったってことは、世の中でも同じような思いをしている人が多いんだろうなと感じました。芸人の世界ならああやって笑いになりますけど、身近に野放しのはっしーはっぴーさんがいたら結構大変ですよね(笑)。たまに撮影現場で「あれ?」と思う若いスタッフさんに出会うことがあります。明らかに失敗しているのにボーッとしていたり、指示待ち状態で自分から動かない子とか。そういう人がいても誰も注意しないんです。仕方なく、芸人がツッコんだら笑いになってしまい当の本人が「ウケた!」と勘違いして、全く反省せずにまた同じことを繰り返しちゃったり、わざと失敗しようとしたりして…。「それは違うでしょ!」って思うんですけど台本にハラスメント順守って明記されているから会社の人は怖くて怒れない状況なんですよね。そう思うと、今の時代に一番大変なのは会社員の人ではないでしょうか…。上司側も「言ったら傷つけてしまうかな」「パワハラと思われないかな」と考えている。でも、20代後半って、上の世代が思っているより、いろいろ考えているし頑張りたいと思ってる。もちろん人格否定や理不尽な怒り方は絶対に間違っています。でも、「ここは改善したほうがいいよ」と言われたら、自分の失敗を受け止めて次につなげる力はある。それなのに、何も言われないままだと、「信頼されていないのかな」「もう期待されていないのかな」と感じてしまうこともあると思うんですよね。だから、本当に必要なのはただ怒られることではなくて、ちゃんと信頼関係を築いて怒られること。もし上司からアクションがないなら、後輩側から「私、ちゃんとできていますか?」「改善したほうがいいところありますか?」って聞きに行くのも一つの手。「怒られる」のを待つんじゃなくて、自分からフィードバックをもらいに行く。そういう力も今の時代は必要なのだと思います。すでに「怒られたい」と思っているみなさんは、すごく健全で真面目だと思います。「このままでいいのかな」って、ちゃんと自分を疑えている人だから。たぶん、本当に危ない人って、自分が危ないことに気づいてないので(笑)。その感覚は大切にしてほしいです。

芸人・吉住さん

成長しやすい環境を自分で作ること
上司が無理なら“チーム同期”作戦!
ダメ出しを言い合える同盟を組もう

私も少し前までは若手と言われていたんですけど、今はどちらかというと中間管理職みたいな立ち位置になってきました。後輩芸人や年下のタレントさんも増えてきて、先輩として接することも。関係性を築くなかで「もっと甘えてくれていいのにな」と思うことも多々あります。正直、甘えてくる後輩ってめっちゃかわいいんです!(笑) 親のような気持ちで、つい面倒を見たくなっちゃう。上司側の気持ちになると、今ってこっちから踏み込むのも結構勇気が必要。「これ聞いたらパワハラになるかな」「誘ったら断りづらいかな」とか、いろいろ考えてしまう。だから、昔なら普通にあった「ちょっとご飯行く?」とか「最近どう?」みたいな会話自体が減っている気がします。ちょうどこの間、後輩と映画を観に行く約束をしていたのですが、仲良くなりたいと思っていた子だったので、映画の前後でお茶したいなと思っていたんです。だけど、向こうからしたら迷惑かもと思うとなかなか言い出せず…。結局思い切って「休日だし人が多い可能性もあるんだけど、よければカフェしませんか」って相手に断る余地を作って誘いました。その後輩から「ご迷惑じゃなければ、ぜひ行きたいです」と返事が来た時にはガッツポーズ! 目をキラキラさせながら話してくれると、自然とこちらのガードも緩んでしまいます。話が逸れてしまいましたが、とにかく怒ってほしい上司には積極的に甘えに行きましょう! 別に上司に媚を売ったりする必要は全然なくて「部長、コーヒー好きですよね」くらいの何気ない会話でいい。相手に興味があります、という姿勢を見せるだけで、意外とガードってすぐに下がります。そうなると、その後の仕事のことも正直ベースで忌憚なく話しやすくなります。そうすることで、“怒られ方”にも徐々に変化が。いい関係の部下や後輩にはいいアドバイスをしたくなるものです。ただ、これは誰にでもやる必要はなくて。本当に尊敬している人、考え方に共感できる人、センスが好きな人など「この人にだったら怒られたい」と思える相手にだけでいいと思います。仕事って結局、人間関係の距離感が近いほうが言えることも増えるんですよね。一歩踏み込める関係性があるからこそ、ちゃんとしたアドバイスもできる。だから部下側には、少しだけ勇気を持って、ぜひ思いっきり甘えてみてほしいです。

…と言いつつ、私自身も積極的に距離を詰められるタイプではないので(笑)、上司へのアプローチはハードルが高いという気持ちも分かります。そんな人におすすめしたいのが、「チーム同期」作戦です。これは一体何かというと、信頼できる同期と、「お互いの言動で気になることがあったら、言い合おう」と同盟を結んでおくこと。自分のことって、意外と自分では客観視できないじゃないですか。でも、同期を見ると、「今どんな立ち位置にいるのか」「周りからどう見えているのか」が分かったりする。外で自分の悪口を言われていても、自分には意外と入ってこないのに、同期の噂って、なぜか耳に入ってくる。フラットな関係だからこそ、上司よりも指摘しやすいメリットがあります。もちろん、これは信頼関係があってこそ。同期全員と同盟を結ぶ必要なんかなくて、1人いれば十分だと思っています。私自身も、信頼している数人に「私の言動がやばかったら教えて」とお願いしています。そうして、自分の周りを“成長機会を与えてもらいやすくなる環境”に少しずつ育てていくんです。それが、今の時代の成長につながる働き方なんじゃないかなと思います。

「ただ怒られること」=「成長」とは限らない。言葉の裏にある意図や経験を汲み取れるかどうかのほうが大事

傷ついた言葉も成長の糧に
若手時代に見つけた
私が絶対に譲れないこと

私は今から10年くらい前が、芸人として下積み期真っ只中のころ。最後の「怒られ世代」だったので、めちゃくちゃ怒られました。今思えば理不尽なこともたくさんありましたけど、その経験が今につながっている部分もあります。当時はまだ今ほどコンプライアンスが厳しくなかったので、ネタ見せに行くと知らない作家さんやテレビ局のプロデューサーなど偉い人にネタをボロクソに言われるんです。「女芸人なら女のあるあるをやれ」とか、「もっと太れ」とか今だったら炎上しそうな見た目に関することも平気で言われました。でも、そういう発言をする人って、他人へのリスペクトがなかったりするんですよね。別の芸人さんの単独ライブで前の席に足をのせていたり、態度がすごく悪かったり。それを見て、「こんな大人には絶対にならないようにしよう」と思いました。とはいえ、その人たちも一応それなりの立場がある人。あの時代はそれがウケていた部分もあるし、彼らにとってはそれが笑いの正解だった。言葉には棘があるけど、その裏にある意図まで考えてみると、見えてくるものがありました。例えば「もっと太れ」という言葉も、単に見た目の話をしているのではなく、「テレビに出た時に一瞬で覚えてもらえるキャラクターがあったほうがいい」という意味で言っていたんです。ただそれと同時に「それって今の時代と合ってることなのかな?」とも考えました。少しずつ、見た目をいじることへの違和感も広がっていた時期だったので。考えていくうちに、私は「ネタを面白いと思ってほしい。賞レースで勝ちたい」と気づいたんです。その時に、自分が譲れないものがはっきりしました。そこから、より一層ネタ作りに力を入れるようになって、結果的に優勝もできたので、あの頃の先輩にほんの少しは感謝しています(笑)。

とはいえ、みなさんに同じ経験をしてほしいかと言われたら、全くそんなことはありません。理不尽なことで不用意に傷つく必要なんてないし、私はたまたまそれをエネルギーに変えられるタイプだっただけ。年齢を重ねて、最近はすっかり先輩側の自覚も出てきたので、若い人にはできるだけ快適に働いてほしいと思っています。それでも、はっきりダメと言われない環境だから成長のきっかけが難しいですよね。以前だったら、上司や先輩が自分たちの経験をもとに、「それはいい」「それは違う」とある程度ジャッジしてくれていた。良くも悪くも進む方向を示してくれる人がいたんですよね。でも今は、褒められることはあっても、「ここは違う」と言われる機会が少ない。だから、悪い部分は自分で見つけて、自分で修正していかなきゃいけない。ある意味、選択肢が増えた時代だからこそ、「これは本当に自分に合っているのか」「この方向でいいのか」を、自分で経験しながら選択して判断していくしかないんです。当時、理不尽とかではなく、「これは面白くない」とバッサリ言われることがありました。その時はしっかり傷つきましたけど、あそこで曖昧に「可能性はあるね」と言われていたら、向いていないものに期待し続けていたかもしれない。ダメなものを早く知れたからこそ、次に進めた部分もありました。そういう機会が少ない分、今の若い人たちはどうしてもトライ&エラーの回数は増えると思います。だから、自分から「どうでしたか?」と聞きに行ける人のほうが、成長のスピードは早いんじゃないかなと思ったんです。ただ言われた言葉をそのまま正解として受け取るのではなく、「これは今の時代にも通用する考え方なのか」と20代のフレッシュな価値観で考えて、自分で読み取っていくことが大事だと思います。

芸人・吉住さん

本音はできる限り怒られたくない!

怒られた時、
意見を素直に受け入れられている
=そのこと自体が成長の証し

他人の意見を聞けなかった
尖っていた20代が過ぎ
多様な意見を入れるように

アラフォーを目前にして、20代のころは到底受け入れられなかった価値観も、今では新鮮に感じるようになりました。むしろ「もっと知りたい」と思うことも増えました。最近、仏教の本を読んでみましたが、こんなに歴史が続いているのに、人間の悩みの根本って変わらない。それってすごく面白いなと思って。昔の人が残してくれた言葉や考え方のなかに、今の自分にも響くものがたくさんあるんです。そうやって、自分になかった視点を取り入れられるようになった時に、「少しは成長したのかな」と感じます。きっと、読者のみなさんも同じように思う瞬間があるはず。でも、私、20代は本当に尖っていました(笑)。プライドが邪魔して、人に相談するのが苦手だったんですよね。「自分はこう思う」「こういうものを作りたい」という気持ちが強すぎて、自分と違う意見を素直に聞けなかった。本当は先輩に聞けばすぐ解決するようなことでも、「自分で答えを出したい」と意地になってしまう。今思うと、視野がすごく狭かったです(笑)。でも、あのころはあのころで、自分を信じる力がないと続けられないこともあったと思います。芸人って特に、周りと違うことをやらなきゃいけない仕事なので、「自分はこれでいく」という頑固さも必要だった。だから、若手時代にもらった言葉って、すぐには理解できなくても、後から効いてくることが多いんです。その時は「何を言っているんだろう?」「間違ってる」と思ったことでも、経験を重ねた後に「あの人が言っていたのは、こういう意味だったのか」と分かる瞬間があります。昔、親戚のおじさんに「勉強しといたほうがいい」と言われることってあったじゃないですか(笑)。そういう言葉の本当の意味って、自分の経験が増えた時に初めて見えることもあると思います。だから今は、すぐに「違う」と跳ね返すのではなく、一回自分の中に置いておくようにしています。

芸人って、人からどう見られているかがすごく重要な仕事なんです。自分ではコンプレックスだと思っている部分が、実は個性や武器になることもある。私は周りから「暗そうに見えるね」と言われたとしても、それを悪い意味だけで受け取るのではなく、客観的な意見として取り入れる。自分では気づけない意見のおかげで、新しい可能性やスキルアップへとつながるきっかけになることだって結構あります。もらった言葉をそのまま受け入れる必要はない。でも、一度ちゃんと咀嚼してみるのはどうでしょうか。その言葉が、何年後かに自分を助けてくれることもあると思います。

CLASSY.世代の読者のみなさんは自分の成長を俯瞰して考えられている真面目な人ばかり。だからこそ、令和の“怒られない時代”に上手く順応して、自分自身で成長のきっかけを掴みとっていってほしいです!

\教えて 吉住さん!/
怒ってくれない上司に
何て言えばいいですか?

芸人・吉住さん

しごでき先輩風に答えちゃってます!

Q1.いつも褒められるばかりで、
注意やアドバイスがもらえません。
ダメな時はきちんと教えてほしいです。

A.褒められたらすかさず、
「からの〜?」と切り返す。

褒められるだけで終わるってあるあるですよね。若手の登竜門である「ネタ見せ」も最近ではいいところしか言われないそう。でもそれだけで自分で改善点を見つけるのって意外と大変です。なので、上司には「からの〜?」作戦で、褒めるだけで終わらせないように! 1回褒めの言葉を聞いてすぐ受け入れるのではなく、うざいくらいに何回も「からの〜?」と切り返すことで、上司も芯をくったアドバイスをせざるを得なくなるはず(笑)。

Q2.ミスをしても上司がフォローしてくれて終わり。フィードバックもなく、このまま年次が上がっていくことが不安です。

A.ショートコント「体育会系」。
ミスした部下が落ち込んでいる時にフィードバックをすると「さらに傷ついてしまうのでは?」と思い、上司は気を遣って何も言えなくなってしまうもの。読者のみなさんに伝えたいのは、あんまり凹みすぎないように“体育会系マインド”をおろして、振る舞うこと! 体育会系になりきって、「すみませんでした! 失敗しないようにするにはどうしたらいいすか!」とまっすぐ聞くと、意外と素直に答えてくれるはずです。

Q3.ハラスメントを意識してか、
ふんわり遠回しの指摘ばかりで、
結局何を改善すればいいのか分からない。
もっと端的な言葉が欲しい。

A.「この資料の〇〇の部分、どうやったら先輩のように作れますか?」とめちゃくちゃ聞きたいことを具体的に分解する。
ちょっと真面目に答えちゃいました(笑)。たまに後輩から「どうやったら賞レースで勝てますか?」みたいな、めちゃくちゃ大きな質問をされることがあるんですけど(笑)、1回戦で敗退する子と勝ち上がって行く子って、質問の解像度が違う気がします。これは知能の差ではなくて「どこまで問題を分解できているか」の差だと思います。仕事でも「何がダメでしたか?」と全部相手に委ねるより「この時こうしてみたけど、上手くいかなかった。次はどう変えたらいいですか?」と聞いたほうが、相手も具体的にアドバイスしやすくなります。

Q4.上司に聞きづらくて、AIに改善点を分析&フィードバックしてもらっています。
これってアリだと思いますか?

A.一緒に自分の悪口を言ってもらう!
そうすることで客観的に見られるから。

私もAIを使うことはあるのですが、上辺のことしか言わない時が結構あります。こちらに都合のいい回答をしてくれるから、客観的な改善点が欲しいのに、ただ優しく寄り添ってくれているだけ、みたいなこともある。だから、本当に成長したいなら、やっぱり勇気を出して上司や先輩に聞くのが一番。でも、もしAIを使うなら、自分の失敗を「他の誰かの失敗談」として話して、自分の悪口を一緒に言い合うくらいがAIとのちょうどいい距離感かも。どれだけ厳しい内容でも最後はちゃんと慰めてくれます(笑)。

Q5.フィードバックが物足りない…とはいえ、本音では怒られたくない。ちょうどいい塩梅で怒られる方法ってないですか?

A.フィジカルを鍛える。心にマッチョを飼う。
言いやすい部下って、きっと良くも悪くも「何を言っても大丈夫」と安心されていることもあると思うんです。そこで、手っ取り早いのは筋トレです! 見た目的に「なんかこの人、すごいやつかも!?」と思わせる(笑)。実際に私も、舐められたくなくてキックボクシングを始めたのですが、フィジカルが強くなるにつれ「いざとなったら、こいつには勝てる!」という謎の心の余裕も生まれて、一石二鳥でした。

profile 

吉住さん
1989年生まれ。福岡県北九州市出身。「女芸人No.1決定戦 THE W 2020」で4代目チャンピオンに輝く。テレビや配信番組、ラジオなど幅広く活躍中。

〈衣装クレジット〉ジャケット¥24,200シャツ¥19,800パンツ¥18,700(すべてアンタイトル)フラットシューズ¥12,650(アルテミス by ダイアナ/アルテミス by ダイアナ アーバンドック ららぽーと豊洲店)イヤリング¥12,960リング[左手]¥13,200リング[右手]¥4,320(すべてアビステ)

撮影/川﨑一貴(Ajoite) ヘアメイク/桑野泰成 スタイリング/大野由加里 取材/小森香沙音 編集/鈴木日向 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2026年10月号「本当は“怒られたい”私たち」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。