木村多江さん「『結婚したら幸せになる』とは思わないほうがいい。結婚は夢ではなく、現実です」

34歳で結婚した木村多江さんは、当時を振り返り「決意というより、流れにさらわれたような感覚だった」と語ります。結婚に向いていないかもしれないと思っていた自分が、なぜ人生をともにする相手と歩むことになったのか。結婚後に見えてきた現実や、年齢を重ねるなかで変わっていく自分との向き合い方まで。木村さんの率直な言葉には、結婚やパートナーシップを“現実の生活”として見つめるためのヒントが詰まっていました。

Profile

1971年、東京都生まれ。学生時代から舞台活動を始め、1996年にドラマデビュー。2008年には初主演映画『ぐるりのこと。』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など多数の賞を受賞。以降、連続テレビ小説『純情きらり』『とと姉ちゃん』、大河ドラマ『北条時宗』をはじめ、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍している。繊細な感情表現と確かな存在感で、多くの作品に深みを与えてきた。日本舞踊の師範としての一面も持つ。

結婚は、決意というより“流れにさらわれた”感覚でした

――CLASSY.読者にとっては、「結婚」も関心の高いテーマです。木村さんは34歳で結婚されていますが、結婚を決意した決め手はどんなことでしたか?

決意したというより、気づいたら結婚の流れに向かってしまったんですよね。もともと、私はあまり結婚するつもりがなかったんです。むしろ「私は結婚に向いていないかも」と思っていたくらいで。でも、流れに乗ってしまったというか、波にさらわれたような感じでした。

大きな波が来て、それにさらわれて、気づいたら結婚に向かっていた。そういう、運命みたいなものってあるんだなと思います。自分で決めたわけではないのに、そちらへ向かってしまうような。

――自分で決めたというより、状況に背中を押された感覚だったんですね。

当時、彼のご両親がお付き合いに反対されていたので、「付き合っています」とご挨拶に行こうとしていたんです。その途中で、彼のお兄さんから電話がかかってきて、「あんなに強烈な親を説得するのに、付き合っていますくらいじゃ納得しないぞ。“結婚します”くらい言わないとだめだぞ」と言われて。

――ご挨拶に向かう途中で、急に話が大きくなったんですね。

そうなんです。「え、結婚するの?」と思いました(笑)。でも、そう言われたので、結婚する前提でご両親にお話しすることになりました。そこで、自分の仕事についてもきちんと話すきっかけになったんです。

すると、「じゃあ、いつ結婚するの? 来月? 3カ月後? 4カ月後?」という話になっていって。「おばあちゃんがもう90歳だぞ」みたいなこともあって、どんどん話が進んでいきました。私は「付き合っています」と伝えに行く予定だったのに、気づいたら「結婚します」という流れになっていたんです。だから、何が決め手だったのかは正直わからないんです。

大切なのは、日常を一緒に生きられる相手かどうか

――結婚そのものより、「その人と日常をどう過ごせるか」を見ていたんですね。

もし結婚や子どものことを考えるなら、「どういう相手が自分に合うのか」をちゃんと考えることはすごく大事だと思います。私はどちらかというと、仕事に集中したいタイプなので、普段からあまり構ってほしくないんです。でも、いざというとき、ここぞというときに手を差し伸べてくれる人がいいと思っていました。

普段から「大丈夫? 大丈夫?」と言われ続けるのは少し苦手だけれど、本当に困ったときに「大丈夫だよ。やってあげるよ」と言ってくれる人。私にとっては、そこが大事でした。

それから、結婚すると急に家族になるじゃないですか。相手の親や親族も増える。そうなったときに、うまくいかないことも出てくると思うんです。そのときに、ちゃんと自分の味方になってくれる人かどうか。そして、自分の家族も大事にしてくれる人かどうか。そこも大切だと思います。

たとえば夫は、お年寄りがいれば荷物をさっと持ってあげたりするんです。そういう姿を見て、「この人は、ほかの人にも自然に優しくできる人なんだ」と感じました。それも判断材料になっていた気がします。

――結婚をゴールとして見るのではなく、生活として考えるということですね。

そうですね。ただ、「結婚したら幸せになる」とは、あまり思わないほうがいいと思います。
結婚は、修行の形が変わるということなんです。だから、結婚したらどうなるのか、その人と結婚した場合の日常をちゃんと想像しておいたほうが現実的だと思います。

共働きでやっていくなら、料理、洗濯、掃除、やることはたくさんあります。もしパートナーが何もやらない人だったら、本当に大変です。そこに子育ても加わったら、負担はどんどん増えていきます。

もちろん、「自分が全部やってあげたい」という人なら、それでいいと思うんです。でも、自分が相手に何を求めるのかは、きちんと考えておいたほうがいい。結婚は夢ではなく、現実です。だからこそ、ちゃんと見ておいたほうがいいと思います。

年を重ねても、誰かをハッピーにできる人でいたい

――結婚や仕事、子育てなど、さまざまな人生の節目を重ねてこられた今、木村さんはこれからどんなふうに年齢を重ねていきたいと思っていますか?

見てくださる方が楽しかったり、ハッピーになってくれたらいいなと思っています。面白がってもらえるのがいいんです。まず、木村多江というものを。役を通して、「木村多江ってこんなことをするんだ」とか、「こういう木村多江もいるんだ」と思ってもらえたらうれしいです。人を楽しませたいという気持ちが、私の根底にはすごくあるんだと思います。

小学生の頃、入院していた叔母を楽しませたくて、ずっと漫才みたいなことをしていたんです。きっと、そこから続いているんですよね。お芝居をすることも、誰かを喜ばせたい、ハッピーにしたいという気持ちが根底にある気がしています。

――俳優として表現することの原点にも、誰かを楽しませたいという思いがあるんですね。

みんながゲラゲラ笑ってくれたら、それでいいかなって。もちろん、苦しい物語もあります。でも、その中で少しでも誰かの背中を押せたり、見てくださる方が何かを受け取ってくれたりしたらいいなと思っています。

年を重ねていくと、「こうなってしまうから年を取りたくない」と思うことも出てくるかもしれません。でも、「あんなふうに楽しくしていればいいんだ」とか、「あんな挑戦もできるんだ」と思ってもらえたらうれしいです。そういう面白さも、見ていただけたらいいなと思います。

Information

舞台『わたしの書、頁を図る』

第31回読売演劇大賞で3部門を受賞した作・演出家・小沢道成さんによる最新作。舞台は静かな図書館。過去に傷を抱え、孤独に生きてきた図書館職員・柳沢町子が、個性豊かな利用客たちとの出会いを通して、退屈だった日常を少しずつ変えていく姿を描きます。木村多江さんが舞台初主演を務め、味方良介さん、光嶌なづなさん、中井智彦さん、坂口涼太郎さん、猫背 椿さんが共演。芝居、歌、演奏で物語を彩る、笑いと涙のヒューマンエンターテインメントです。

2026年7月3日(金)~19日(日)@紀伊國屋ホール

コンビネゾン¥48,400(LE PHIL/LE PHILニュウマン新宿店 03-6380-1960)イヤーカフ右大¥280,500イヤーカフ右小¥184,800イヤーカフ左上¥225,500イヤーカフ左下¥169,400リング右中指¥53,900リング右人差し指中指¥88,000リング左¥198,000(すべてHirotaka/Hirotaka 表参道ヒルズ 03-3478-1830)靴 スタイリスト私物

撮影/You Ishii ヘアメイク/ヘアメイク/土谷郁子(FACE-T) スタイリング/成子美穂 取材/池田鉄平 編集/宮島彰子