【辻愛沙子さん】の“心の整え方”「気分がハイでもダウンでも一度自分のBasicに立ち戻る」
仕事や人間関係、将来への不安など、悩みが尽きないCLASSY.世代。そんな日々を健やかに過ごすために必要なのは、無理に前向きになろうとすることではなく、自分の心と上手に付き合うこと。今回は辻愛沙子さんに話を伺い、自分の“ご機嫌”を自分の手元に取り戻すためのヒントを探りました。
自分の“ご機嫌”を他の人に取られない!
カウンセリングも、“美容室”感覚で
もっとプロに頼っていい!
自分の“かかりつけ”を探して、
筋トレのようにメンタルケアを積み重ねよう。
今回、読者の皆さんのお悩みを見ていて感じたのは、「みんな自分で抱え込みすぎているな」ということ。私は中高生時代を海外で過ごしていたこともあって、カウンセラーに話を聞いてもらうのがとても身近な環境でした。すごく落ち込んでいる時だけじゃなくて、「今日はなんだか授業に出たい気分じゃないかも」という時にも、ふらっと立ち寄れる存在だったんです。だから今でも、コーチングやカウンセリングに対してのハードルをあまり感じていません。むしろ、「ちょっと体調が悪いから保健室に行く」くらいの感覚で、もっと気軽に頼っていいものだと思います。実際に私自身もカウンセリングを受けていますし、最近はオンラインで気軽に利用できるものも増えているので、自分の生活圏と関係のない第三者に話せる“サードプレイス”を持っておくことはすごく大切です。
私にとってメンタルケアは、一度で劇的に変わるものではなくて、むしろ筋トレに近い感覚。続けていく中で、自分の感情のクセや思考のルーツに気づけたり、浮き沈みの波を少し俯瞰できるようになったりする。そうやって少しずつ整っていくものだと思っています。カウンセリングは、そのプロセスに伴走してくれる、いわばパーソナルトレーナーのような存在です。自分に合う“かかりつけ”をきちんと見つけるためにも、まずは体験を重ねてみてほしい。私自身もいろいろ試して、ようやくフィットするカウンセリングに出合えましたが、「話を聞いてほしいタイプ」なのか、「自分でも気づいていない感情を引き出してほしいタイプ」なのか、相性は人それぞれ。美容室やネイルサロンを選ぶような感覚で、まずは気軽に門を叩いてみてほしいです。どこから手を付けたらいいか迷ったら、自分の悩みの領域を専門にしているかや、国家資格を持っているかを軸にすると判断しやすいです。一人で抱え込んでいると視野が狭くなり、抜け出しづらくなるもの。自分の状態を定点観測できる場所を持つことが、結果的に心を安定させることにつながっていくと思います。
メンタルを整えて“パフォーマンス”を
上げるのはスマートな生き方です
メンタルが晴れの日も雨の日も、気持ちの波を“引いて見られる”ことが、整える力になる。
とはいえ、最終的に自分の感情と向き合うのは自分自身。だからこそ、日ごろから自分の“ご機嫌”を扱えるようになる必要があると思っています。忙しい毎日を過ごしていると、知らぬ間に自分を見失って他人からの目や意見を気にして行動してしまうことがありますよね。でも、自分の心の中は誰にも邪魔されない唯一無二の場所。感情はもっと自由で、本来は誰にも奪われないものなんです。だからこそ、嫌なことがあった時も、「出来事」と「感情」を切り分けて、どう扱うかを自分で選ぶことがスマートな生き方だと思います。
私自身も、周りの状況に振り回されて感情が大きく揺れた経験があります。以前所属していた代理店で事業を運営していた頃、自分が立ち上げて大切に育ててきたものを手放す決断を迫られ、理不尽さや悔しさでいっぱいになりました。でもその時、「この感情まで誰かに委ねてしまったら、自分の人生を手放すことになる」と感じたんです。そして、自分の独立する道を選びました。嫌なことがあった時は、「返してもらう」くらいのイメージで、自分の中のポジティブなエネルギーを手放さないように意識しています。ネガティブな感情が湧くこと自体は悪いことではなく、違和感は自分を大切にしているサイン。もし受け止めきれない時は、友達に「それは理不尽だね」と怒ってもらう“怒り代行”をお願いしたり、頭の中にもう一人の自分をつくって本音を代弁してもらうのもひとつの方法です。そうやって自分と対話しながら、「じゃあどう行動する?」と未来に目を向けていくことが大切だと思います。自分の感情を自分の手元に置いておくこと。それができると、外の出来事に振り回されにくくなり、自分の“ご機嫌”を自分で守れるようになっていくはずです。
「今日の自分の状態」を
セルフモニタリングする
気分がハイでもダウンでも、
一度自分の“Basic”な状態に
立ち戻るのが大事。
今の私は、メンタルが“凪”な状態でいられることが多いのですが、その秘訣は「今の自分の状態」をちゃんと把握できているから。メンタルがいい状態って、ずっとポジティブでいられることではなくて、気分の波があってもそれを俯瞰できること。上がる時もあれば、下がる時もある。そのどちらにも振り回されず、「こういう状態なんだな」と受け止めることが大事なんです。
そのために実践しているのが「Back to Basic」という方法。日々慌ただしく過ごしていると、影響する要素が多すぎて自分の状態を見失いやすくなる。だからこそ、どんなに忙しくても「変わらないいつもの基準」に立ち返り、セルフモニタリングする時間を取っています。私の場合は、毎朝同じ朝食を食べること。その日によって「今日はちゃんと食べられているな」「なんとなく気分が乗らないな」と、小さな変化に気づけるようになります。朝ごはんに限らず、毎朝のシャワーやコーヒーを飲む時間でもいい。特別な習慣をつくる必要はなくて、日常の中にある当たり前の行動を、自分と向き合う時間に充てていけばいいんです。「今日の自分の機嫌はどうかな」「体調はどうだろう」と、天気を確認するように自分の状態をチェックする。良し悪しの評価はせず、「今の自分はこうなんだ」と知ることが大事。その小さな積み重ねが、自分を整える力につながっていくと思います。
自分だけは、自分を評価しなくていい
自分を丸ごと愛するのは難しいけれど
可能性は否定しないで!
周りと比べることが当たり前になっている今の時代、自信をなくしたり、落ち込んでしまう瞬間はどうしても避けられないものだと思います。でも、そんな時に自分を信じてあげられるのは、やっぱり自分だけなんですよね。私自身、「自己肯定感が高いタイプ」だとは思っていないんです。ただ、その一方で、自分のことは大事にしたいと常々思っています。自己肯定感を「コップにどれだけ水が入っているか」に例えるとしたら、私が大切にしたいのは、その「コップ自体の大きさを広げていくこと」。今の自分を無理に肯定しようとすると苦しくなることもあるけれど、「これからできるようになるかもしれない」と可能性を信じることは、未来の話だからいくらでも変えていけると思うんです。だからこそ、自分に対して評価を下しすぎないこと。少なくとも、自分だけは自分に厳しい採点をしすぎなくていい。調子が悪い時は「今はそういう状態なんだ」と受け止めて、その中でどう過ごすかを考える。事実と感情を切り離して、自分を客観的に見てあげることが大切です。自分に過度な期待をしすぎず、できたことにはきちんと目を向ける。その積み重ねが、自分の可能性を信じられる状態を育ててくれると信じています。
\辻さんが実践してる心の整え方/
Back to Basic
「いつもの自分」の基準を知るために、
毎日自分を“定点観測”する
「どんな時でも自分のコンディションを見失わないために“いつもの自分”に戻る行動を決めています。ルーティンのように完璧にこなす必要はなく、シンプルな習慣でOK。私は“朝ごはん”の時間をその目安にしています。毎日必ず訪れる時間の中で自分と向き合うことで、自然とその日のコンディションを把握できるのでおすすめです」
シックス・ヒューマン・ニーズ
自分にとって重要なものとは何かを問いかけて、自分の価値観を探る
「自分の価値観を知るために取り入れている手法のひとつ。6つの要素の中から自分にとって欠かせないもの2つと不要なもの1つを選ぶことで、自分の大切にしたいことが見えてきます。その時の状態によって答えは変わるものなので、迷った時に問い直しています」
安定/変化/重要感/愛・つながり/成長/貢献
生き方に迷ったときに読みたい本
『あたしたちよくやってる』山内マリコ著(幻冬舎)
「自分の生き方に迷った時や、こういう幸せもあるんだと思えるサンプルが欲しい時は、本を通して他の人のストーリーに触れてみると◎。知らないだけで不安になっていることも多いからこそ、選択肢を増やす感覚でいろんな生き方を知ることが大事だと思っています。この本は、“女性らしい生き方”の固定観念から解放され“自分らしい生き方”を模索したさまざまな女性たちの姿が描かれていて、自分にとっての幸せのヒントを見つけやすい一冊です」(辻さん)
教えてくれたのは…
実業家・クリエイティブディレクター
辻愛沙子さん
1995年生まれ。「社会課題をクリエイティブで解決する」を掲げ、広告・メディアなどの枠にとどまらない幅広い領域でディレクションを手がける。また、スポーツドクターである父の影響で、幼いころからメンタルケアに興味を持つ。広告代理店での会社員時代や実業家としての経験から、自身の感情や社会への向き合い方などを発信する。
撮影/越野夕也 イラスト/green K ヘアメイク/Hitomi(Chrysanthemum) 取材/下田真里衣 編集/鈴木日向 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2026年6月号「辻愛沙子さんと考える“セルフメンタルケア”」より。
掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。
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