ヒコロヒーさん(36)「弱さを見せるより、抱えたまま立っている人に惹かれます」【映画『TOKYO BURST-犯罪都市-』インタビュー】

ヒコロヒー

忙しそうに見えることでも、強く見せることでもない。ヒコロヒーさんが“かっこいい”と感じるのは、自分の役割をきちんと引き受けた上で、無理なく自然に立っている人だという。映画『TOKYO BURST-犯罪都市-』で演じた先輩刑事・吉井みゆきを入り口に、役作りの裏側はもちろん、働く人として惹かれる人物像や、弱さとの向き合い方について聞きました。

Profile

1989年、愛媛県生まれ。飾らない語り口と鋭い観察眼で注目を集め、“国民的地元のツレ”の愛称でも親しまれる。20代後半には『女芸人No.1決定戦 THE W』準決勝進出などを通じて、お笑いファンの間で存在感を高めた。30代に入ると、『キョコロヒー』やラジオなどで見せる日常の違和感をすくい取る語り口と、切れ味のあるコメントで支持を拡大。現在は司会、俳優、脚本、執筆などにも活動の場を広げ、著書『黙って喋って』では第31回島清恋愛文学賞を受賞している。

あの世界に自分も入れる、そのことがまずうれしかった

ヒコロヒー

――今回の『TOKYO BURST-犯罪都市-』で、吉井みゆき役のお話を聞いたとき、最初にどんな印象を持ちましたか?

もともと内田英治監督の作品がすごく好きで、たとえば『ミッドナイトスワン』のように、人物の感情やその場の空気が生々しく立ち上がる作品に惹かれていたので、まずは純粋にうれしかったです。そんな監督の世界の中に自分が入れるんだ、というワクワクがありました。一方で、吉井みゆきという役は、最初からすべてが説明される人物ではないんですよね。どこかミステリアスで、見る人にいろいろ想像させる余白がある。どう存在すればこの人の奥行きが伝わるのか、考えなければならないと思いました。

――そんな吉井みゆき役を演じるにあたって、どんなことを意識しましたか?普段、役作りではどんなことを取り入れることが多いのでしょうか。

細かい設定を自分の中で固めていくというより、その人物がどんな空気をまとっているのかを大事にしました。吉井みゆきはすごくミステリアスな存在ですし、男性が多い警察署の中でも物怖じせずに立っていられる人。だからまずは、芯の強さや、少し気の強い感じが自然ににじむように意識していました。

見た目の部分でも、その人の生活がにじむほうがいいなと思ったんです。たとえば、美容室にもなかなか行けていないのかな、と感じるような、少しだけ手入れが行き届きすぎていない髪の質感だったり。そういう細かなところから人物像を立ち上げていきました。きれいに整いすぎているよりも、日々の仕事や置かれている環境の中で生きている人なんだろうな、と伝わるほうがいいと思いました。

韓国語を身につけていく時間も、役作りのひとつだった

――吉井みゆきは韓国語を話す場面もありましたが、作品のために一から勉強されたそうですね。準備の過程で印象に残っていることはありますか?

最初は正直、「できるんかな?」と怯えていました。でも、現場ではスタッフの皆さんが本当に丁寧にサポートしてくださって、何とかベストを尽くした、という感じです。普段なかなか触れることのない言語に向き合うのは、やっぱり難しい。ただそのぶん、すごく新鮮でもありました。韓国語を身につけていく時間そのものが面白かったです。

強く見せることより、自然に立っている人がかっこいい

ヒコロヒー

――吉井みゆきは、複数の言語を操るインテリな先輩刑事ですが、ヒコロヒーさんご自身が「こういう人はかっこいいな」と感じる“働く女性”像と重なる部分はありましたか?

あんまり女性だからこうみたいな見方はしないかもしれないですね。どちらかというと、男女関係なく、仕事をちゃんと面白がれている人はかっこいいなと思います。ただ忙しそうとか、ただ厳しそうとかではなくて、自分のやっていることにきちんと向き合っていて、そのうえでどこか楽しそうな人っているじゃないですか。そういう人は、無理して格好つけている感じがなくて、仕事している姿そのものが自然に様になっている気がするんです。

吉井みゆきも、ただ有能な人というより、自分の役割をちゃんと引き受けた上で立っている。そういう意味では、“仕事をしている姿が絵になる人”というか、静かなかっこよさのある人だと思いました。

――吉井みゆきのように、一見クールで仕事ができる女性にも、きっと人に見せない弱さや葛藤があると思います。ヒコロヒーさん自身は、そういう“表に見えない部分”に共感することはありましたか?

あまりないですね。もちろん、人それぞれ見せていない部分はあると思うんですけど、それをわざわざ表に出さないほうが、私はかっこいいなと思うんです。

――“見せないほうがかっこいい”というのは、どういう感覚なんでしょうか。

しんどいことや葛藤があるのは、たぶん誰でも同じだと思うんです。でも、仕事の場では、それをそのまま前に出すというより、どう抱えて、どうその場に立つかまで含めて、その人の仕事の仕方なんじゃないかな。弱さがあることより、どう立っているかのほうに、その人らしさは出る気がするんです。

Information

映画『TOKYO BURST-犯罪都市-』
5月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。韓国で累計動員4000万人超を誇る『犯罪都市』シリーズが、日本オリジナルストーリーで新展開。欲望が渦巻く歌舞伎町を舞台に、水上恒司演じる破天荒なルーキー刑事と、ユンホ(東方神起)演じる韓国エリート刑事がバディを組み、福士蒼汰演じる最凶ヴィランに挑むノンストップ・アクションエンターテインメント超大作。

撮影/You Ishii ヘアメーク/コン イルミ スタイリング/カミモト リサ 取材/池田鉄平 編集/越知恭子