「圧倒された…」坂東龍汰さん(29)が声の仕事で痛感した“岡山天音という俳優”の凄み【映画『我々は宇宙人』】

今年のカンヌ国際映画祭で、監督週間に正式出品された長編アニメーション映画『我々は宇宙人』。主人公・翼の声を担当しているのは、大胆な感性と繊細な表現力を併せ持ち、どんな役柄もいきいきと演じる坂東龍汰さん。俳優デビューから9年、ドラマや映画で着実にキャリアを積んできた坂東さんですが、ここ数年は舞台や声の仕事にも積極的に挑戦中。オファーを受けた段階からワクワクが止まらなかったという本作には、一体どんな魅力が? カンヌの空気に触れて感じた思いについても教えていただきました。

Profile

1997年5月24日生まれ。北海道出身。2017年、ドラマ『セトウツミ』で俳優デビュー。翌年の2018年には、NHKスペシャルドラマ『花へんろ 特別編 春子の人形』に初主演。2024年に出演したドラマ『ライオンの隠れ家』で、自閉スペクトラム症の青年を好演し注目を集める。2026年、前年に出演した映画『爆弾』で、第49回日本アカデミー賞新人賞を受賞。近年の主な出演作は、ドラマ『366日』(2024年)、『シナントロープ』(2025年)、映画『ヒックとドラゴン』(日本語吹き替え、2025年)、『君の忘れ方』(2025年)『黒牢城』(2026年)など。2026年10月に映画『わたしの知らない子どもたち』、2027年1月に映画『かすかな彼を抱きしめて』が公開予定。

映像の美しさに感動「絶対におもしろいものができる」と確信

―まずは、本作への出演が決まったときのお気持ちや、初めて脚本を読んだときの印象を教えてください。

もう、これは絶対におもしろいことが起きるぞと、ワクワクするような気持ちでした。脚本がいいのはもちろん、最初に見せていただいた映像があまりにも美しくて。自分がずっとやりたいと思っていた声の表現にも挑戦できるんじゃないかと、とにかくうれしかったですね。門脇(康平)監督ともお会いしたんですけれど、作品にかける熱量の高さがハンパじゃなくて、間違いなく最高のものが出来上がると確信できました。

―たしかに、創作への強い思いやこだわりを感じさせる作品でした。ちなみに、門脇監督とはどんなお話をされたんですか?

あの人、いい意味でめちゃくちゃなんですよ(笑)。何年もかけて下地となるものを手描きしたっていうのもすごいし、最初はスタッフさんもかなり少人数だったらしいんです。僕は、アフレコがひと通り終わってから、制作現場を見学させてもらったんですけど、そのときは20人くらいの方々が追い込みをかけている、まさに“佳境”でした。ここまで熱い思いを持った方々とお仕事ができる機会に恵まれて、本当に幸せな機会をいただけたなと思っています。

共演・岡山天音の演技に圧倒「全然ついていけなくて…」

―共演の岡山天音さんとの演技合戦も見どころですが、アフレコ現場はいかがでしたか?

「さすが岡山天音!」って感じでしたね。彼はすべてを的確に演じてくれるんですよ。最初はふたりで一緒にアフレコするシーンが多かったんですけど、僕は全然ついていけなくて。本当に圧倒されました。アフレコで印象的だったのが、画面に吹き出しみたいな感じでセリフを出していただけたこと。台本を見ずにお芝居できるのが、ありがたかったです。

―セリフを追わなくていいから、演技に集中できるわけですね。

そうなんですよ。ページをめくったり、自分のセリフを探したりする作業がないだけで、本当にやりやすくて。100%お芝居のことだけに集中できました。とくに、翼と(岡山さんが声を担当する)暁太郎がふたりで対峙するシーンは、相手の表情を見ながらセリフを言えたのがすごくよかったです。

カンヌで実感した映画の神聖さ「またあの場所に戻りたい」

―ここ数年、声のお仕事の機会が増えていますが、何かきっかけはあったのでしょうか?

新しいことに挑戦したかったんです。俳優デビューしてから9年間、ドラマや映画を中心に出させていただいてきて、場数を踏んでいくとどうしても“慣れ”が出てしまうというか。ノウハウがわかってきたからこその楽しさもあるんですけど、まったく違うジャンルの表現にも挑戦してみたくなってきて。最近は、舞台や声のお仕事も積極的にやらせていただいています。

―坂東さんは、常に新しいことに挑戦していたいタイプなんですね。

やったことがないことは、なんでもやってみたいんですよ。子どものころから、ひとつのことだけをずっと続けていくのは苦手で。いつもどこかに「見たことのない景色を見たい」って気持ちがあるんですよね。それこそ今回は、門脇監督がカンヌ(国際映画祭)に連れて行ってくださって。あの空気感を初めて味わせてもらったので、映画に対する向き合い方も少し変わったような気がします。カンヌの時期は別の舞台の稽古中だったんですけど、2日間だけお休みをいただけて。現地に行けたこと自体が、奇跡のような出来事でした。

―カンヌでの経験を通して、映画に対する姿勢にどんな変化があったのか気になります。


映画を心の底から愛している人たちがこんなにいるんだって感動したんですよね。集まった人たちがみんなで同じ作品を見て、本気で感想や意見を言い合う。そして評論家たちが、これもまた本気で評価して、それぞれの賞を決めていく。もちろん知識としては知っていましたけど、実際にこの目で見て初めて、その神聖さを実感しました。かといって、僕がやることは、これまでと変わらないんですけどね。とにかく、一つひとつの作品に全力で取り組むだけですから。ただ、またあの場所で自分が関わった作品を見たいという強い気持ちが生まれて。改めて俳優という仕事への覚悟が強まった経験でした。

Information

『我々は宇宙人』(9月25日公開)
YOASOBIの『優しい彗星』をはじめ、数々のミュージックビデオやアニメーション映像を手掛けてきた門脇康平さんの初監督作品。カンヌ国際映画祭の監督週間に正式出品。
<STORY>
平成のある田舎町に住む少年・翼は、自分が内気で“普通”であることに悩んでいたが、小学3年生の春、クラスの人気者で“特別”な存在である暁太郎と仲良くなる。放課後はいつも一緒に過ごし、たくさんの思い出を作っていくふたりだったが、ある日を境に暁太郎がクラスで浮いた存在となってしまう。

撮影/HAL 取材/近藤世菜 編集/宮島彰子