漢字自体は簡単なのに、なぜか正しく読めない漢字ってありますよね。音読みの熟語はたとえ意味を知らなくても、何となく読めてしまう場合がありますが、訓読みはそうはいかないので、実は難しいのはではないでしょうか。長年、高校で国語を教えていますが、生徒たちが間違いやすい漢字から、いくつかピックアップしてみます。
1. 「漸く」と「暫く」は読み分けられますか?
ともに副詞で送り仮名が同じということもあり、この二つはどっちだっけと迷う人が多いはずです。おまけに、それぞれの漢字を含む熟語にも、「漸次」と「暫時」というのがあって、この二つは漢字書き取りでも大学入試の定番です。「漸次」は「ぜんじ」、「暫時」は「ざんじ」。紛らわしいですね。さて、問題の「漸く」と「暫く」は何と読みますか?
正解は「漸く」が「ようやく」。「暫く」が「しばらく」です。「漸く」は、「予想以上に時間がかかって期待した事態が実現する様子」。「暫く」は、「長いと感じられるほどではないがある程度の時間を要する様子」です。意味を覚えておくと、読み間違うことがなくなりますよ。
2. 「徐に」は読めても、その意味まで理解していますか?
私は、「除行運転」という手書きの間違い表示を見たことがあります。正しくは「徐行運転」ですよね。この間違いに気がつく人でも意外と読めないのが、訓読みの副詞である「徐に」です。
どうです、読めますか?
正解は「おもむろに」です。ところで、意味は「いきなり・急に」だと思っていた人はいませんでしたか? 正しい意味は「あわてずゆっくりと何かをする様子」です。「徐に立ち上がる」のように使います。
3. 似ているけれど「侮る」は「くいる」ではなく、なんと読む?
最後は「侮る」です。字形が似ている「悔いる(くいる)」と間違える人が多いのではないでしょうか。ヒントは「相手を軽く見てばかにする」の意味です。さあ、読めますか?
正解は「あなどる」です。熟語「侮辱」はよく見るけど、「侮る」は普段使うことがない言葉かもしれませんね。
訓読みを間違わないポイントは「漢字の意味を併せて覚える」ことです。因みに、訓読みは、日本語固有の言葉に意味の近い漢字を当てたものですが、ビジネスや日常会話の中でさりげなく使えると、教養ある感じが醸し出せるかもしれませんね。(「ちなみに」と「かもしだす」はもちろん読めましたよね)。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「できる大人の教養 1秒で読む漢字」(青春出版社)
・「漢検ポケットでる順2級」(旺文社)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室