「好かれよう」としなくていい!【雑談が苦手】な人の心が軽くなる作家・小川哲さんの言葉

小川哲さん

堀田茜が「30代になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きに行く連載。今回は、作家の小川哲さんに「雑談」についてお話を伺いました。“雑談が苦手”な人の心がふっと軽くなる言葉をお届けします。

〈今月話し合いたいこと〉
雑談に気を遣わなくてよくなりたい!

堀田茜さん

【今月の茜のモヤモヤ案件】
エレベーターの中とか、ちょっとした休憩中とかの雑談が難しい!まだ関係性が浅い人だと余計に悩みます。どんな話なら、少し打ち解けられる?雑談が苦手と話す作家の小川哲さんに、対策を聞きました。

重要なのは話題選びよりも
会話する意欲があることを
相手に態度で伝えること

堀田茜さん

大事なのは話題選び?タイミング?
雑談に失敗したことがあるから口火を切って話すことに勇気が要ります

堀田:小川さんは初のエッセイ『斜め45度の処世術』で雑談が苦手と書かれていましたよね。雑談が苦手ゆえの対策や考え方が独特で、でも言葉に迷いがなくてとてもおもしろかったし、共感する部分や参考になる部分もたくさんありました。私は職業柄、初対面の方やまだ打ち解けていない方と過ごす時間が多く、場を和ませようと自分から雑談をはじめてみたりするのですが、それに大失敗したことがあって…。それ以来、雑談に対して苦手意識があります。

小川:僕も「雑談が苦手」と書いている立場なので、うまくいく雑談のポイントを教えられるはずもないんですけど(笑)。ただ、お互いに知らない相手だった場合の雑談って、僕は失敗しかないと思うんですよね。

堀田:え〜! まさかの結論です(笑)。

小川:僕の中で雑談がうまくいく場合って、僕が相手のことを知っているときです。雑談自体が盛り上がるというよりは、「あなたと話す気があります」という態度を示すことのほうが雑談の本質かなって気がしていて。堀田さんの失敗って何だったのですか?

堀田:私が知る限りのお相手の情報をぶつけてみたのですが…無視されて。すごくショックでした。

小川:自分がそうなったらどうかなって今考えたけど、やっぱショックですね。でも、話しかけたことにより事態が悪化したわけではなくて、その人の性格が悪い・またはコンディションが悪いときには無視する人だという特性がわかりましたよね。その材料はトライしたことによって得られた。それにより今後はその人と関わる機会を減らす選択ができるじゃないですか。だから決してマイナスだけではないと思います。それに雑談の失敗というより、人間同士の失敗ですよね。

堀田:たしかにそうですね。人に嫌われたくなさすぎて、どんな現場でも嫌われないように振る舞っているつもりなのですが、その立ち回りが報われないときは結構辛いです。

小川:著書にも書いたのですが、人って自分の努力と関係なく無視されたり嫌われたりするじゃないですか。相手の感情をこちらはどうしようもできない。だから僕はせめて、自分から人を嫌いにならないように気をつけているんです。

堀田:あぁ…その発想の転換、素敵ですね。

小川:好かれようとする行動って、相手の感情を操作しようとしていることになるから良くない。それに嫌われないように振る舞う人を嫌いな人もいます。だから、まずは相手のおもしろいところや好きになれる要素を探すこと。自分がその人に好かれるかどうかではなくて、自分が相手のいいところを見つけてそこを楽しめるようになると、雑談はうまくいくんじゃないかなと思います。

相手を楽しませようとするより
「この人とこういう話をすれば楽しいかもな」
を探してみるのがいいと思う

堀田:相手のために無理して話題を作る必要がないということでしょうか。

小川:相手がこういう話題好きかなと考えるよりも、自分がこの人とこういう話をしたら楽しいかもな、と思える話題を見つけるのがいいと思います。自分が興味のない話で無理しても盛り上がらないし、相手も楽しくならないんですよね。あとは自分にとって興味のない話題を相手が好きだったとしたら、その話題のどこに自分の楽しめるポイントがあるか見つけるのもいいかもしれないです。たとえばゴルフ好きが多い場で、自分はゴルフがわからなかったとしても、「ゴルフって高級なイメージがあるけど実際どう? 会員権って何? ゴルフ後のサウナって楽しいの? 場所はどこがいいの?」とか。

堀田:自分もその場を楽しむのが大事ということですね。たしかに、それで言うと、私が話の中心にならないといけない場では自己開示できる話題を選ぶことにしています。それなら失敗もしにくいですし、話している自分も楽しいからいいのかもしれないなと今思いました。自分のプライベートの話だけどここまでなら話すことができる範囲だなっていう話題とか、業界のあるある話だけど人に言える範囲までの話とか。「自分の話をしてくれた」と感じてもらえるなって。

小川:それは結構僕もやります。自分のガードを下げて、直球の反応を打ち込んできてもいいですよという状態を作るんですよね。その上で相手がどうするか反応を見て、乗ってきてくれたら話題を盛り上げられるから。

堀田:そうそう。「私はあなたにオープンですよ」と伝えるのに自己開示の話題はいいですよね。そこからまた会話が広がって、相手の話を聞きやすくなりますよね。

「こういうつもりの話題です」の
意思表示をしつつ無言を恐れないこと

小川哲さん

堀田:相手への好意の向け方って難しくないですか? 好意と言っても、いろんな受け取り方がありますよね。

小川:特に異性と話す場合は違う意味に捉えられないようにと気を遣いますよね。

堀田:そうですね。同性同士の会話だったとしても気を遣っちゃいます。美味しいレストランの情報交換がしたい時にもいろいろ考えてしまったりします。「今度一緒に行きませんか」という言葉がくっついてきがちな話題じゃないですか。それがいいときもあるけど、そうなりたくない場面もあって、難しいなって。

小川:僕は結婚して子供ができてからは、このステータスが「下心はありません」の名刺がわりになってくれるので、独身時代よりも雑談が簡単になりました。本当は踏み込んだ話をしたいのに違う文脈に勘違いされるのが嫌で雑談が苦手だった部分もあったかもしれません。食事の話題にせよ仕事の話題にせよ「そういうつもりじゃなくて、こういうつもりです」という意思表示をうまくするのが総じて大事ですよね。

堀田:難しいですね(笑)。小川さんが著書に書かれていた、美容室で施術してもらっている間のなにげない会話も同じように悩む人が多いと思います。本当は静かにこの美容時間を楽しみたい…その意思表示を上手にしたい! 感じ悪くしてるつもりはない!と思うけど、どうするのがいいのかなと考えたり…。

小川:僕は美容室では一切喋らない、無言の人です。ただ、美容師さんが話しかけてくるのは、本気で会話を楽しもうと思っているわけじゃなくて仕事上良かれと思ってのことなのはわかるから、その気持ちは受け取っていることを伝えられる返事をしつつ、会話はがんばらない。「今日は暑いですね」と声をかけてくれるとして、そりゃ暑いよねっていう答えしかないときには「天気の話ってどうやったら盛り上がるんですかね」と聞いたりするのも好きです。

堀田:がんばらないっていう選択肢があってもいいんですよね。

小川:そう。無言の時間はマイナスではない。無口な人のことを嫌いになることってそうないはずなんです。好きになることもないけど、その場はプラマイゼロなので、無言の時間を恐れなくていいと思います。

堀田:そもそも、全部の会話で戦わなくていいんですよね。

小川:僕が常々言いたいのは、無口な人や雑談が苦手な人=コミュニケーションが苦手な人ではないです。それに、堀田さんみたいに悩んだり苦しんだりしている時点でコミュニケーションのことをちゃんと考えてるから、周りから嫌がられてることも多分ないんじゃないかな。コミュニケーション上手を自称して、自分の話をずっと喋っていたり他人の話を聞かないほうが周りに不快感を与えていると思うので…。

堀田:あぁ…たしかにそうですね。わー、やり直したい場面が今頭の中に浮かんで恥ずかしくなっています(笑)。考えすぎて空回りしてたなぁ…。

小川:あとはもう、その人が引き受けているキャラクターっていうものがあるから、喋りがうまい人と同じことを無理してやらないこと。無理してやったとしても、同じようには盛り上がらないですよね。その人の積み上げてきた人生があるから、昨日今日の小手先の技術でなんとかなることじゃない。がんばりすぎると「今日どうしちゃったの?」ってなるでしょうし。自分の背負ってきた人生に沿うように、無理のない会話で十分だと思っています。

堀田:なんだかそれを聞いて生きるのが楽になりました。嫌われることを恐れるよりも、自分が嫌いにならない。それだけで良かったんですね。盛り上げなきゃいけない、という凝り固まった考えから解放された気がします。

対談したのは…

小川哲さん

Satoshi Ogawa
おがわさとし●小説家。1986年12月25日生まれ、千葉県出身。2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞しデビュー。2022年刊行『君のクイズ』は第76回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉を受賞、映画化・漫画化・舞台化され大ヒット作に。その他数々の作品が賞を受賞している。

『斜め45度の処世術』

初のエッセイ集『斜め45度の処世術』(CEメディアハウス)が好評発売中。

堀田茜さん

Akane Hotta
ほったあかね●モデル、俳優。1992年10月26日生まれ、東京都出身。CLASSY.をはじめ多くの女性ファッション誌、ドラマに出演。「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)レギュラー。『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(J-WAVE)ナビゲーター。2024年4月に結婚。SHIPS×堀田茜コラボ服も発売中。

[茜衣装]Tシャツ¥2,990(Gap)ビスチェ¥20,900(MIESROHE/MIESROHE ルミネ新宿1店)イヤカフ〈上〉¥11,550イヤカフ〈下〉¥13,750リング〈人差し指〉¥20,900リング〈中指〉¥20,900(すべてココシュニック オンキッチュ/ココシュニック)
※小川 哲さんの衣装は本人私物です

撮影/杉本大希 スタイリング/川瀬英里奈 ヘアメイク/TONOE 取材/野田春香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2026年9月号「堀田茜のほったらかしにしたらアカン!」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。