「肩書はひとつじゃなくていい」AI時代のパラレルキャリアと始め方【平野未来さん×堀田茜さん】

堀田茜が「30代になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きに行く連載。今回は、起業家・平野未来さんを迎え、AI時代に注目されるパラレルキャリアの考え方や、自分らしい一歩の踏み出し方について伺いました。

肩書ってひとつに絞らないといけないの?とずっと悩んでいます

【今月の茜のモヤモヤ案件】
30代になって、自分でも仕事の得意不得意がわかる年齢になり挑戦してみたいことが頭の中に常にふんわりとあります。でも実際に行動にうつすことや挑戦するって難しい。そんな迷いとどう戦えばいいか、起業家の平野未来さんに聞きたい!

〈今月話し合いたいこと〉
本業の他にやりたいことが複数あると中途半端かな、と思って挑戦できません

AIを駆使してひとりでもスタートしやすく。
本業と並行して何かをはじめてOK!

堀田:自分で起業して会社経営している女性に尊敬と憧れがあるんです。どんな想いで夢を実現されたのかをお伺いするのが楽しみで、今日は3月に著書も出された平野さんをゲストにお迎えしました。平野さん、ご自身の会社の他にもいろんなことをやっていらっしゃいますよね。

平野:起業家としてのはじまりがすでに学生をしながらでしたし、今もシナモンAIという自分の会社を経営しながら、高市総理がトップを務める日本成長戦略会議の有識者メンバーでもありますし、他の会社の社外取締役や、本の出版、今日はこの取材の前後にイベント登壇があったり…と。こうして本職を持ちながら複数の仕事を並行させる働き方を「パラレルキャリア」と呼びますが、私はこれで人生がとても豊かになったと思っています。

堀田:パラレルキャリアという呼び名があったのですね!私は20代で芸能界に入って、モデルも俳優もタレント活動も同時スタートで今までやってきました。これまでたくさんの人から幾度となく「今後は俳優一本に絞っていくんですか」と聞かれてきたのですが、「肩書ってひとつに絞らないといけないの?」とずっと思い悩んできて。ひとつに専念しない人はブレてるとか、何がしたいのかわからないとか、そういう声もあったので。でも最近は芸人であり作家とか、タレントであり経営者とか珍しくないですよね。だからようやく私も「俳優もモデルもバラエティ出演も、なんだってやりたい」と堂々と言えるようになりました。私が思っていたことは間違っていなかったんだと、今少しホッとしています。

平野:今の時代は職種の壁を跨いでも、やりたいことをはじめやすくなったのがいいですよね。とくに現代はAIに頼れるので、起業を手伝ってくれるパートナーを探さなくてもいいし、バックオフィス業務はAIにやってもらえることもあるから、ひとりでスタートしやすくなった。外部からの投資や借入に頼らず、自己資金のみで起業・成長させることを「ブートストラップ」と呼ぶのですが、このやり方は今アメリカでかなり市民権を得ています。もし私が今起業するとしても確実にこのやり方にしますね。だから、やりたいことには気軽にチャレンジしてみていいんじゃないかなと思います。

堀田:はじめることへのハードルが下がっているんだなと理解はしつつも、やりたいことにチャレンジするという第一歩が踏み出せずにいます。私もさっき挙げた仕事以外にも、夢は色々あるんです。平野さん、著書や他のインタビューで〝自分軸を大事にすること〟と強く伝えていらっしゃいますよね。でもつい自分と誰かとを比べて「私なんかじゃまだまだかな」と感じるし、それでいて憧れられる自分になりたいとか欲深さもあるし。自分軸を保つって大変じゃないですか?

今はひとりですぐに起業できる時代。
でもその前に自分の本音を知ることが大事だと思います

平野:そうですね。まず〝人は自分に嘘をついていることが多い〟という事実に気づくことが大事です。これは著書に書けなかった話ですが、私が最初に起業したときの想いは「Googleみたいにすごい技術を持った会社を作りたい」でした。でも自己分析をしていくうちにそれは建前で、実は私は「母親にすごいと言われたかったから起業した」という本音に行き着いてしまって…。

堀田:もしかしてインナーチャイルドを満たしたかったということですか?

平野:そう!まさにそれです!昭和的な価値観の母だったので、子供の頃から立ち居振舞いや品性に厳しく、優秀な子供として振る舞わないといけなかったんです。だから大人になった今でも潜在意識のどこかに母から褒められたい願望があったみたいで。自分の原動力がそれだと気づいたときにはショックでしたけど、でも母という他人軸で生きて、自分に大きな嘘をつき続けてきたと気づけたのは良かったですね。

堀田:他人軸が原動力だと良くない理由は何ですか?私もどうしても他人の視点を気にしてしまい、毎日「あのときのあの行動、どう思われたかな」と振り返りをしちゃってて。それがネガティブに働くことも理解はしているので、自分らしさを取り戻す時間を作ってはいるのですが。

平野:私も以前は原動力がなんであれいいと思っていたのですが、自分のために自分が何をしたいかで考えたほうがいいと、価値観が変わりました。私、もともとは自分の優先順位がすごく下のほうにあって。

堀田:え、そうなんですね。

平野:この数年、大変なことがたくさんあったんですね。そういうときって自分の意志に他人軸が入っていて濁りがあるし、濁りがあると体が壊れるまで努力しても何も変わらない・進まないんです。その逆で、自分がどうしたいのか、どう生きたいのか意志をクリアにしてそれを優先していると、なんだか物事がトントン拍子に進んでうまくいくんです。〝自分がしたいことって本当はこれなんだ!〟とわかってからは、過ごす時間がラクになりました。穏やかな日々が送れるようになって、これまで以上に自分らしい生き方ができるようになったと思います。起業をしたり、新しい仕事に踏み出したりするときには、まず自分の本音を知ることが大事だと思います。

堀田:私もそのクリアな感情になるにはどうしたらいいですか?正直濁った感情まみれです…!

平野:ドロドロした感情にもまずは向き合って、なぜそう思ってしまうんだろうと自己分析。原因を理解して、浄化させるのが一番です。自分のドス黒い感情が見えてくることもありますが(笑)、でもたとえば「私ってあの人のことが嫌いなんじゃなくて嫉妬してるんだ」とか「うらやましいんだ」とかわかると、ドス黒さと距離を置けるようになります。そうすると迷いから解放されて、自分軸が見えて、自分が今何をすべきか自ずとわかりますよ。著書の中で「紙飛行機メソッド」という気持ちの整理方法を紹介しています。もし自分の夢や目標に悩んだり、次に何をしていいかわからなくなったりしたら、それを実践してみてください。頭の中に紙飛行機を思い浮かべて、飛行機の上に自分の夢を乗せて、どこまで飛ぶかをイメージするのですが…。堀田さん、やってみてください。

堀田:私の紙飛行機、なんだかすぐ落ちちゃいました(笑)。

平野:それは自分に嘘をついている証拠ですね(笑)。

堀田:え…私、本当は何がしたいんだろう。

平野:ひとつの夢があっても、それにはいろんな側面がありますよね。純粋に事業で成功したいのか、有名になりたいのか、お金持ちになりたいのか、自分の人生経験値を高めたいのか、シンプルに楽しいことがしたいのか。今、堀田さんが紙飛行機に乗せた言い方だと嘘の夢だけど、見方を変えた言い方で乗せるとどうですか…?一番クリアな感情を乗せると、紙飛行機はひたすらまっすぐに飛び続けます。

堀田:きれいに飛びました!いろんな仕事をしてみたい、仕事を通していろんな国に行ってみたい、将来海外に住んでみたいとか、かなり個人的な想いなのですが…。

平野:素敵。それが自分軸ですね!いろんな国に行ける仕事がもっと来るといいな、その結果海外に住めたらいいなと思っていれば、そういう仕事の機会に恵まれると思いますよ。

堀田:なんだかハッとしました。最初に飛行機が落ちちゃったほうは、夢というより他人の目線も入った欲望だったかも。自分軸を持つってこういうことなんですね。平野さんもこのメソッドを日々やっているのですか?

平野:はい。何かやりたいことがあったときには紙飛行機を飛ばしてみて、うまく飛ばなかったらそれは自分には合わないということになるから、違うやり方を探す手段になっています。あとは、何か行動を起こしたときに変な感情が動いたら、自分に嘘をついていないか自分を試すいい方法になっています。

堀田:私も自分に正直でい続けられるように、これを習慣にしてみたいと思います。

平野:そう言えるのは、自分に正直な証拠ですよ。

堀田:今日、平野さんに心を開いていただいたからです。何かに挑戦するにはどうしたらいいかがテーマの対談だったので、もっと実務的なことが話題になると思っていました。まさかメンタル面の話が中心になるなんて予想外で、とても興味深かったです。カウンセリングに来たかのような気持ちになりました(笑)。私も夢に向かっていい方向に進めるように、自分軸を日々探しながら生活していきます。

対談したのは…

ひらのみく
●シナモンAI代表取締役社長CEO。日揮ホールディングス社外取締役。1984年生まれ、東京都出身。東京大学大学院在学中にネイキッドテクノロジーを創業、売却。世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズに選出。ダボス会議で登壇。高市政権における日本成長戦略会議の有識者構成員。著書に『心をすませば:未来をひらく自分軸の見つけ方』(東洋経済新報社)。三児の母。

ほったあかね
●モデル、俳優。1992年10月26日生まれ、東京都出身。CLASSY.をはじめ多くの女性ファッション誌、ドラマに出演。「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)レギュラー。『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(J-WAVE)ナビゲーター。2024年4月に結婚。SHIPS×堀田茜コラボ服も発売中。

[茜衣装]トップス¥14,000(バナナ・リパブリック)イヤリング¥5,500(ieLS/ロードス)※平野さんの衣装は本人私物です

撮影/杉本大希 スタイリング/川瀬英里奈 ヘアメイク/日高 咲(ilumini)[堀田茜さん分]、小林未波(PEACE MONKEY)[平野さん分] 取材/野田春香 編集/小林麻衣子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2026年7月号「堀田茜のほったらかしにしたらアカン!」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。
※自治体により指定の捨て方は異なります。各自治体ホームページをご確認ください。