鞘師里保さん「極端に失敗を怖がっていた」完璧主義の彼女が“自分を許せる”ようになるまで【EP「OWN」インタビュー】
12歳でモーニング娘。としてデビューし、アーティスト・俳優・ミュージカルと多方面で表現者として活躍を続ける鞘師里保さん。25年にavexからメジャーデビューを果たし、現在、2作目となるEP「OWN」が発売中です。「失敗を恐れていた」という完璧主義な一面を持つ鞘師さんですが、今作には失敗を受け入れ、新たな挑戦へと踏み出す姿が詰まっていると言います。
Profile
1998年5月28日生まれ、広島県出身。2011年に12歳でモーニング娘。9期メンバーとしてデビュー。15年にグループを卒業し、渡米。20年より本格的に芸能活動を再開し、25年にavexよりソロメジャーデビューを果たす。俳優としても活動しており、ドラマ『付き合ってあげてもいいかな』(MBSほか)にも出演。
失敗を怖がるのをやめたら、新しい自分に出会えた
—avexからメジャーデビューして、2作目のEP「OWN」が発売中です。タイトルに込めた意味を教えてください。
タイトルの「OWN」は、「失敗を自分のものにする」という意味の「Own your mistakes」というフレーズからとっています。私は完璧主義に近い性格で、“ちゃんとやらなければいけない”と思うタイプで、極端に失敗を怖がっていたんです。だからこそ、失敗も含めて自分のものにしていこう、というメッセージを込めています。
—そう感じるようになったきっかけは?
前作のEPでは、“自分に制限をかけずに思い切りやってみる”という意味を込めて、「Too much!」というタイトルをつけたのですが、そのEPを引っ提げたツアーでの経験が大きかったです。思い切り動けたからこそ、失敗を感じたこともあった。でも、失敗から学ぶこともありましたし、チャレンジしたことで新しい自分にも気づくことができました。そこで経験したことが正解であれ失敗であれ、そのすべてを受け入れて、自分の人生にどう生かしていけばいいのか…。そうした試行錯誤を繰り返すことが大事だと思うようになったんです。
—自分を解き放ったからこそ、見えたものがあったのですね。
そうですね。魂を込めてエネルギーを全力で使うパフォーマンスは、今までもやっていたことですが、まだまだ自分の中にしまっていたものがあって。 “今出さないと、きっともう出せない”という思いで、解き放ってみたんです。そうすることで、自分のキャパシティにも気付くことができたように思います。ある程度の失敗はどんどんしていかないと、何も見つからない。前作では、行動することの大切さを実感することができました。
“ずっと玄関口にいるような気持ち”から抜け出すために
—鞘師さんは、失敗は気にせずにどんどん進んでいくタイプなのかと思っていました…!
「チャレンジしたい」と「失敗してはいけない」という、相反する気持ちが私の中には強くあるんです。失敗したくないのにチャレンジしようとしてしまうのは、自分でもよく分かりません(笑)。私はいろいろなジャンルでお仕事させていただくことが多いので、音楽の現場、演技の現場、どの現場でも “お邪魔させてもらってる”という気持ちが抜けなくて。 “皆さんに追いつかなければいけない”という気持ちが、私をそうさせているのかもしれません。
—多くのフィールドで活躍されているからこその悩みですね。
常に学ぶ姿勢を忘れないことは大切だと思いますが、なんだかずっと玄関口にいるような気持ちになってしまうこともあって…。それは本当によくないな、と。どのジャンルでも“自分はここにいるんだ”というプライドをもっと強く持たないといけないなと感じていたんです。例えば、お芝居の解釈をいくつか持って現場に行ってみたり、自分には合わないかもしれないと思った音楽にも挑戦してみたり、自分自身が変わり続けていくことが大切だと思っています。
—「OWN」のなかで、挑戦した曲といえば?
全部です(笑)。というのも、私はいつもEPには誰が聴いてもダンスナンバーだと分かる曲を収録することが多かったんです。私はダンスがきっかけで今ここにいると思っているので、そうした曲がないのはすごく不安で。だから、今回のEPではそれを意識的になくしています。ダンス曲をなくすことは、私の中ではリスクでもあると思っていたので、そういう意味でもこのEP全部が大きな挑戦なんです。
「働かない」を選ぶのは、実は勇気がいること
—完璧主義を貫き、全力で走り続けている鞘師さんですが、疲れてしまうことも?
もちろんあります!(笑) でも、以前よりはようやくエネルギーをいろいろなところに分散できるようになった気がします。10代のころは、休みなんて頭になかったし、「休みたい」なんて言ってはいけないと思っていましたから。
—プライベートと仕事のバランスがうまく取れるようになったということですか?
そうだと思います。ちゃんと生活をすることにもエネルギーを使うようにしていますし、まとまった期間のお休みをいただいたりもしています。「働かない」という選択をするのはすごくエネルギーがいることだけど、そうした思いもきちんと持つようにしています。勇気がいることだけど、そうすることでどんどん自分が暮らしやすい形へと近付いている気がしています。
—完璧主義だからこそ、ですね。
昔は、「時間があるならあるだけ準備ができる!」と思っていたタイプで(笑)。でも、必死に走り続けていることだけが正解ではないと気付いたんです。一方で、急かされることで生まれるものもあるので、休み過ぎもよくない。そうした適度なライフバランスは、今も探している最中です。
“自分大好き”じゃなくていい。「許す」「受け入れる」から始める
—そんな鞘師さんが、自分を愛し続けられる秘訣を教えてください。
“自分大好き”なんて到底思えないし、「愛する」となるとハードルが上がってしまうので、私には「許す」「受け入れる」という言葉のほうが近いかもしれません。いいところも悪いところも受け入れて、自分を知ることが結果的に自分に優しくなれる第一歩なんだと思います。
—自分を許せるようになったのはどれぐらいから?
ここ最近のことで、2〜3年前ぐらいからです。これまで、自分で自分をどうにかしないといけないと思っていて、誰かが助けようと手を差し伸べてくれても「自分でできます」と突っぱねてしまうところがあって。でも、それを受け入れて、甘えてみてもいいんじゃないかなって思えるようになったんです。そうすることで、自分にも優しくなれました。
—落ち込んだときは、どうやって自分を鼓舞していますか?
落ち込んだレベルに合わせて、いろいろな手法を使っています(笑)。友達に全部吐き出して聞いてもらう日もあれば、お酒を飲んで忘れちゃおうという日もあるし、片付けをすることで気持ちを整理しようとする日もあります。
—自分を知っているからこそ、解決法が分かっているんですね。
確かにそうかもしれません。昔の自分は、家から出ないで閉じこもることくらいしか解決法を知らなかったんです。自分を甘やかす範囲を少しずつ広げて、気分を高める手段を増やしていくのは必要なことなんだと学ぶことができました。
Information
コンセプトEP「OWN」が発売中!
鞘師里保のコンセプトEP「OWN」が9月2日より発売中。“Own your mistakes(失敗も自分のものにする)”をテーマに、“自分自身を選び直す過程”を描いた作品となっている。主演を務めるドラマ『付き合ってあげてもいいかな』のエンディング主題歌「幸福失格」を含む、全6曲を収録。
撮影/永峰拓也 ヘアメイク/本岡明浩 スタイリング/UTA 取材/小林揚 編集/宮島彰子
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