その「割り勘」って本当に平等?令和のカップルが直面してる目に見えない“不均衡”の正体
自立した対等な関係でいたいから、お金はいつも半々。そのスタイルに納得していたはずなのに、ふとした瞬間に感じるこのモヤつきはなんだろう。今回は妻側のリアルな実感をもとに、令和のカップルが直面する、目に見えない不均衡の正体を探ります。
その50:50、本当にフェア!?
実は私たちこんなモヤモヤ、
感じちゃってます…
対等の呪いを解くヒントは
フェミニスト経済学にあった!?
割り勘にモヤモヤ…これって変?
Q.彼の方が稼いでるのに割り勘だと、なんかモヤモヤする…でも“対等でいたい”から言い出せない。この感覚って正しいのでしょうか?
ーーTさん
その感覚は、ごく自然なもの。むしろ大切にしてほしい違和感です。相手の方が収入が多いなら、割り勘で出し合った後に残るお金の余裕は、自分の方が小さくなってしまいますよね。二人のあいだで生活の余裕に差が生まれると、どちらか一方が我慢したり、仕方がないと諦めたりする関係になりかねません。だからこそ、「言い出しづらい」と飲み込むのではなく、モヤモヤを言葉にすることは、対等な関係を築くための一歩です。「自分たちはどうありたいか」を二人で話し合うことが大切。まずは、小さな違和感を言葉にして、二人にとって公平な分担を考えることから始めてみてください。
話し合いってどうすれば上手くいく?
Q.出産後にキャリアを中断する可能性を、
今のうちから二人で話し合いたい。
どう話し合えばいいのでしょう?
ーーYさん
まず前提として、この悩みを「個人の問題」として捉えないことが大切です。出産後にキャリアが中断されやすい背景には、育児や家事などのケア責任が女性に偏り、女性のキャリアや収入が損なわれやすい社会構造があります。だからこそ、女性だけがどう対応するかではなく、「私たちはどうしたいか」を二人で考えることが大切。いきなり将来の結論を出すのではなく、まずは今の生活で「どちらかに負担や不満が偏っていないか」を見つめてみてください。そうした対話を重ねることで、「女性だけが仕事を調整するのはおかしい」という将来のイメージも共有しやすくなります。話し合いの目的は、完璧な答えを出すことではありません。お金・時間・ケア・キャリアをめぐる負担や希望を尊重し、必要に応じて見直せる二人の関係をつくることです。
対等でいたいけど、奢られると嬉しい
Q.「奢られると嬉しい」という気持ちと、
「パートナーと対等でいたい」という考え、
矛盾していますか?
ーーAさん
矛盾していませんし、そう感じる自分を否定する必要もありません。誰かに気遣われたり、大切にされていると感じて嬉しいのは、とても自然なことです。ただし、注意したいポイントが2つあります。ひとつは、「払う側が発言権を持つ」関係に転じないこと。もうひとつは、「男だから払うべき」「女は奢られて当然」といったジェンダー規範を前提にしないことです。大切なのは、奢るか割り勘かという形式ではなく、その支払い方で二人の対等さが保たれているかどうか。後ろめたさや負い目を感じることなく、「今日はありがとう」と自然に言い合えるなら、奢られることも対等な関係のなかのケアや贈与のひとつと言えるでしょう。
数字の平等より、心の対等が欲しいから
週末の朝カフェで
夫婦の価値観アップデート中!
ーー植田さん夫婦
\CLASSY.カップルズ3期生/
植田 舞さん(30歳・商社)
植田 悠太郎さん(30歳・IT関係)
私たちは結婚2年目。付き合っていた頃は、外食も旅行もすべて割り勘。お互いの実家に、昔ながらの夫婦のかたちを感じる部分があり、違和感があった私たちにとって、上下関係を作らないための自然な選択でした。転機は、結婚を前提に同棲を始めたとき。家賃の話をしていたカフェで、私から「半分ずつだと少し負担が大きい…」と切り出しました。収入差を考えれば自然な流れで、夫も「そうだよね」と納得。今は生活費込みで6:4(夫が6)の傾斜負担に落ち着いています。
6:4にしてから私に心とお金の余裕が生まれ、相手へのリスペクトの気持ちが自然と強まりました。平日のご飯や掃除は私が多めに担当。一方で夫も「お金を多く払っているから偉いとは思わない」と言ってくれて、洗濯を干したのが私なら夫が畳む、私がご飯を作ったら夫が食器を洗うなど、小さな積み重ねでバランスを取っています。
大切にしているのは、精神的な対等さ。家事分担はあえて決めていません。「これはあなたの仕事」と線引きしてしまうと、上下関係が生まれてしまう気がするから。スケジュールをLINEで共有し、余裕がある方が自然にフォローするようにしています。とはいえ、いつも上手くいくわけではなく。家事の偏りにモヤモヤして、私がつい無言の圧をかけてしまうこともあります。そんなときのルールはひとつ。「夜に話し合いをしないこと」。疲れた状態で向き合うと、どうしてもこじれてしまう。だから私たちは、週末の朝、カフェに行ってコーヒーを飲みながら、仕事やお金、そのとき気になっていることをフラットに話すんです。その時間があるから、また一週間、同じ方向を向ける。今の私たちにとっての“対等”は、そうやって少しずつ整えていくものなんだと思います。
差し出すものを対等にするより、
残るものを対等にすることが大切
ーー藤原千沙先生
「半々ルール」はフェアに見えるけれど、知らないうちに自分を苦しめている…そんなモヤモヤを抱える人は少なくありません。でもそれは、相手が悪いわけでも、自分の思いやりが足りないからでもない。背景にあるのは、日本社会に根強く残る構造。共働きが当たり前になった今でも、男女の賃金格差はあって、「男性が稼ぎ、女性が支える」という規範も消えていません。社会の仕組みが生む不均衡なのに、「気遣い」や「愛情」の問題として処理されてしまう。それがこのモヤモヤの正体です。
ここで陥りやすいのが「経済合理性の罠」。役割を分業し、片方が稼ぎ、もう片方が家事や育児を担う。世帯としては効率的でも、家事や育児を担う側はキャリアを損ない、二人の関係や生活のあり方を交渉する力(バーゲニングパワー)が弱まってしまいます。効率を優先した瞬間、対等な関係は揺らぎ始めます。
では、どうすれば本当の意味で対等な関係を築けるのか。ヒントは、「差し出すもの」ではなく「残るもの」に目を向けること。お金や時間、キャリアの見通しなど、持っている資源は人によって違うのだから、同じだけ出すことが公平とは限りません。大切なのは、後に残る“お金の余裕”や“気持ちのゆとり”、“自分の時間”、“将来の選択肢”が二人のあいだで偏らないこと。そして、構造の問題だからと諦めず、そのしわ寄せを一方に背負わせないよう、二人で話し合い続けること。それこそが令和のパートナーシップのかたちです。
教えてくれたのは…
法政大学
大原社会問題研究所 教授
藤原千沙先生
専門は社会政策・労働問題、フェミニスト経済学。共著に『フェミニスト経済学――経済社会をジェンダーでとらえる』(有斐閣)など。
撮影/イマイハルカ イラスト/Kana Amano 取材/藤井由香里 編集/宮島彰子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2026年7月号「令和の割り勘クライシス」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。
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