漢字自体は簡単なのに、なぜか正しく読めない漢字ってありますよね。前回に引き続いて「読めそうで読めない」訓読み漢字を紹介します。それも、普段お目にかからないような難読漢字ではなく、「常用漢字表の漢字で、なおかつそこに示された訓読み」のみです。
誰もが読めない漢字をさらりと読むのはもちろん格好いいものですが、読めて当たり前の漢字が読めないとちょっと恥ずかしい。そつなく読めるようでありたいですよね。今回は、国語教師歴40年近くのライターが、その中でも意外と難しい「読みが4文字以上となるもの」から出題します。学校でも、生徒たちが戸惑うものばかりです。
1.若い人ほど読めない傾向が「承る」
まずは簡単な問題でウォーミングアップから。熟語「承諾」や「了承」の「承」の訓読み、「承る」は何と読みますか?社会人にとっては日常語であっても、謙譲語を使う機会の少ない高校生にとっては「?」の表現です。
正解は「うけたまわ・る」。「受ける、聞く」などの謙譲表現ですね。常用漢字表の漢字では、この5文字読みが、送りがなを伴う語の読みとして最長の読みとなります。
2.送り仮名で意味が微妙に変わる「翻す」
前問の5文字「承る」の次に長いのが4文字読みの語で、これは十数語あります。その中から、熟語「翻訳」や「翻弄」の「翻」は送りがな「す」を伴うと、何と訓読みしますか?
正解は「ひるがえ・す」です。「手のひらを――」のように使い、「すばやくひっくりかえす」こと。なお、同じ読みで「翻る」とも使いますが、この場合は「風に吹かれてひらひらする」ことです。
3.高校生は書けるけど読めない人が多い「唆す」
この「唆」を使った熟語「示唆」は、入試書き取り漢字の頻出語で、多くの漢字学習本でもトップクラスにランクされますから、そのぶん高校生はよく書けます。しかし、この訓読み「唆す」となると正解率はがくんと落ちるような気がします。さあ、何と読みますか?
正解は「そそのか・す」です。意味は、新明解国語辞典の語釈が秀逸です――「自分自身では出来ない(手を下したくない)事を相手にすすめて(をおだてて)やらせる」。思わず、にやりとしてしまいました。
ところで、平成22年に改定された常用漢字表には、2,136の漢字と4,388の音訓が示されていますが、そのうち、訓読みは2,036。文化庁のHPには、「常用漢字表の範囲を身に付けておけば、社会で用いられる漢字の96%程度は理解できる」とあるくらいですから、常用漢字表=社会人の常識とも言えるのではないでしょうか。
なお、4文字読みには、他にも「覆す」「憤る」「遡る」「陥れる」などの出題候補がありました。こちらは読めましたか?続きは、また次回に。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「頻出入試漢字コア2800」(桐原書店)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室
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