【産後単独初主演】山本美月(33)が表現する女性同士の恋愛【Huluオリジナル「おとなになっても」配信直前インタビュー・前編】

2023年の出産後、単独初主演作となるHuluオリジナルドラマ「おとなになっても」がまもなく配信スタートする俳優・山本美月さん。原作は、美月さん自身が「大ファン！」という志村貴子先生による作品。思い入れたっぷりだからこそ、演じるにあたっては楽しさだけじゃなく難しさも。インタビュー前編では、作品に入る心構えから、役へどう向き合ったかまで…たくさんお話を伺いました。

――美月さんが「大ファン！」と話す志村貴子先生。作品が実写化されるのは今回が初めてなんだとか。
「そうなんです。昔から志村先生の大ファンで、今までの作品はすべて読んでいます。取材やインタビューなどいろんな場面で大好きと公言していたので、今回のお話をいただいた時は幸せでした。志村先生のマンガは今まで一度も実写化されたことがなかったからこそ、本当にうれしくて。なんていうか、一人の俳優として認められたような感覚で…とても感激しました」
――美月さんの喜びと、特別な思い入れがあるのが伝わってきます。
「うれしいという感情はもちろんなのですが、初めて実写化される先生の作品で綾乃というキャラクターを演じる責任の重さも感じました。志村先生の作品の登場人物は、ちょっと複雑な家庭環境があったり、繊細な心の持ち主だったり…心の機微のようなものがとても丁寧に表現されているんです。実写化されるならどの作品になるだろう？と勝手に予想していたのですが、『おとなになっても』が初の実写化される作品になったのは驚きでした。おとなの女性同士の恋愛という繊細なテーマを、見てくださったみなさんがどんな感想を持つか…とてもドキドキしています」
――そんな美月さんが、この作品に臨むにあたって特に意識したところを教えてください。
「原作が大好きすぎるので、その世界観を忠実に表現したいというのが大前提としてありました。ただ、それと同時に実写でなければ描き出せない部分に、〝あえてやる〟意味を持たせたかった。たとえばちょっとした目の動きだったり、息遣いだったり…生身の人間だからこその表現を大事にできれば、と。私が演じた綾乃のことは他の誰よりも理解したいと思っていたし、ファンの方々が抱いてきた作品やキャラクターに対する思いを壊さずにちゃんと表現したいということを意識していました」

――美月さんが演じる綾乃はどんなキャラクターなのでしょうか？
「綾乃は小学校の先生で既婚者。自分とは違うけれどそういう子もいるよね、という感じの友達っていますよね？綾乃はそんな感じの女性。彼女は感情があまり動かない…表に出せない不器用な子なんです。その分、心の声がすごく多い。だからこそ時折出てくる感情的な部分を、なるべく丁寧に描きたかった。正直、彼女の不器用さに私自身もイラッとすることもありましたし(笑)、視聴者のみなさんももどかしく感じるんじゃないでしょうか。でも、そのもどかしさみたいなものは、きっと綾乃本人がいちばん強く感じているはず。そういう思いで演じていました」
――相手役の朱里を演じる栗山千明さんとは、今回が初めての共演なんですね。
「私が演じる綾乃は、おっとりした雰囲気とは裏腹に、二人の関係性では引っ張る方なんです。綾乃の大胆な行動は、ぜひドラマをお楽しみに…！ 栗山さんとは今回が初共演だったのですが、私が思い描いていた朱里さんそのもの！ キリッとした美しい顔立ちで、華奢で。どちらかというと甘めの顔立ちで高身長という、私との身長差もギャップ萌えの要素かも！？ 原作に忠実な作品なので、マンガっぽい言い回しが多いのも特徴のひとつ。朱里さんの方がキャッチーなセリフが多くて難しかったと思うのですが、栗山さんはさすがでした…！」

――女性同士の恋模様を描くドラマ。今まで演じてきた恋愛作品との違いはどんな部分でしたか？
「作品に入る前に、キャストとスタッフ全員でLGBTQ＋に関する講習を受けました。インティマシーコーディネーターの方にも入っていただくなど、いつも以上に気を配りながら作り上げました。でも恋愛という面では男女の場合と女性同士とで、実はそんなに変わらないと思っていて。ただ人を好きになって、その相手が女性だったというだけ。もちろん全然違わない、というわけじゃありません。世の中的にまだそこまで可視化されていると言えない恋愛だからこその生きづらさみたいなものを、細やかに表現することを意識しました。女の人が好きだなんてただの遊びでしょ、と言われてしまったり、不動産屋でなかなか部屋が借りられなかったり…。恋愛の楽しいだけじゃない現実の部分は、同性同士ならではだと感じました。母親に打ち明けるシーンがあるのですが、演じる上でも…ものすごく重みがありました」