『着回しDiary』ファンタジー担当の舞台裏って?【ストーリー編】|キツネ男、男女入れ替わり、宇宙旅行…

前回、大反響があった『着回しDiary』の舞台裏に迫るこの企画。独特のストーリー展開が特徴の『CLASSY.』の名物企画は、いったいどうやって作られているの…?今回は、「キツネ男」「宇宙旅行」などのストーリーを手掛けてきた、編集・前田&ライター・棚田トモコの“ファンタジー担当コンビ”にCLASSY.ONLINE新米編集・平賀がインタビュー!
まずは、「ストーリー秘話」について。現実離れした設定の裏に込められた、2人のメッセージとは…?

元々は、「現実的」な企画の方が得意だった

(左)編集・前田、(右)ライター・棚田
(左)編集・前田、(右)ライター・棚田

平賀(以下、平):以前、編集月田・ライター野田ペアに『着回しDiary』の裏側をお話してもらった時に、前田さんとティナさん(棚田)ペアは「ファンタジー担当」だとお伺いしましたが、おふたりがファンタジー系を作り始めたきっかけって?

ライター・棚田(以下、棚):実はもともと前ちゃん(前田)と組むまでは、私はファンタジーとはかけ離れた「モテの実用書」みたいな企画をよく担当していて。着回しでも「いかにリアルに、でもちょっとした憧れ要素をプラスできるか」を意識して作っていました。読者の子たちの日常を投影して、調理して…みたいなのが得意で。

棚田さんが担当していた“モテ企画”がこちら。「東横線女子の〝好感度MAX!〟の着回しDiary」(『CLASSY.』2017年9月号)
棚田さんが担当していた“モテ企画”がこちら。「東横線女子の〝好感度MAX!〟の着回しDiary」(『CLASSY.』2017年9月号)

編集・前田(以下、前):当時の『CLASSY.』が今よりも「モテ路線」が強かった、というのも大きいですよね。でも、メンズの好みって基本的なところはいつの時代も変わらないじゃないですか。だから、ずっと同じことをやっていても変わり映えしない。

棚:そうそう。だから何かちょっと他の要素をプラスしたいな、ということで「よし、ファンタジーだ!」と(笑)だから班替えで前田チームになった時(CLASSY.では、編集とライターがチームを組んで二人三脚で企画を考えています)に、ダメ元で「キツネに恋する女の子の話」と「デニムが好きな商社OLの話」の2つの着回しプランを出したんだよね。そしたら前ちゃんがキツネに乗ってくれて!

“ファンタジー班”の始まりは、「キツネ男」

▼“ファンタジー班”歴代ストーリーをcheck

前:今までの『CLASSY.』って、「王道にモテてお金持ちと結婚するのがゴール」みたいなイメージがあって。読者として読んでいた時も「なんでこの着回し主人公の相手は商社マンばっかりなんだろう、世の中にはたくさん男性がいるし、なんなら男じゃなくてもいいのに!」って思っていたんです。だから、キツネの案をもらった時に「そう!こういうのがやりたいの!相手が人間じゃなくたっていいじゃん!」と感動しました。

平:なるほど、そういう経緯があったんですね。

前:とはいえ、ここまでぶっとんだ設定は前例がなかったから、どんな反応が来るかはとても不安でした。編集長にも「確かに面白いけど、世間でこれがウケるのかはわからない」と言われましたし。

棚:でも、蓋を開けたら予想以上に反響をいただけて。特に嬉しかったのが、はらだ有彩さんという方が『FRaU』のオンライン記事で民俗学的観点から「キツネ回」(2019年10月号)を取り上げてくださったことかな。

前:この主人公は、既存の慣習を

前:この主人公は、既存の慣習を蹴って“キツネ王国に嫁がない”ことを選択するんですよ。逆にキツネの彼に人間になってもらう。その“彼だけに合わせない”という姿勢を「新しい民俗学だ」とはらださんに評価していただいて。そうやって結果的に、今までのCLASSY.読者とは別の層にまで届けられたことが嬉しかったです。

ストーリーに込められた、アラサー女子へのメッセージ

平:確かに、おふたりのストーリ

平:確かに、おふたりのストーリーには毎回「女性の自立」とか「選択の自由さ」みたいなものを感じます。

棚:これ、私たちの裏メッセージなんです。『CLASSY.』の読者って、恋愛にしろ仕事にしろ世間体を気にしちゃってて自由に楽しめなかったり、動けなかったりする子がまだ多い印象で。でも、自分がいかに幸せになれるかがポイントで、決して競争なんかじゃない。だから、「もっと自分主体で生きていいんだよ」というメッセージを散りばめているんだよね。

前:人と比べるとか、相手に選んでもらうとか、そういう“しがらみ”から解放されて、「私が主人公よ!」というくらいの図々しさが欲しいなと。モード誌からしたら「個性」「自分らしく」みたいなものって当たり前だと思うんですけど、王道コンサバ誌の『CLASSY.』がそういうスタンスを発信するっていうことに意味があるんじゃないかなって。

棚:もちろんただ気が強いだけではなくて、一生懸命頑張っている子ね。私、どんな状況でも楽しみながら、ガムシャラに奮闘している女の子の姿が大好きで。だから着回しの時は、毎回どこかのショットで必ずパンプスを脱がせるの。隠れミッキーのように(笑)

前:とはいえ、「“ファッション

前:とはいえ、「“ファッション誌の”着回し企画として、満足してもらえるページを作る」ということが最優先なので、コーディネートが可愛いかったり実用的だったりするのが大前提ですけどね。

棚:例えば、着回しって点数が多いし全て誌面と同じものを買うのは難しい。だから、手持ちの服でも真似できるようなベーシックなアイテムを入れるようにする、とか。スタイリストいちおしのコーデを大きいカットに持ってくる、とか。

前:そのへんのテクニカルな話は『CLASSY.』2020年8月号でもお話させていただいたので、そちらを読んでいただくとして…(笑)

平:そうやって、「実用的なコー

平:そうやって、「実用的なコーデの話」と「生き方・価値観の話」を同時に届けられるのは、着回しの魅力ですよね。

棚:私も前ちゃんも、テクニカルな説明の背景にストーリー性が乗っかっているものが好きなんだよね。だから、お互いのやりたいことがハマるし、やりやすい。これからも『着回しDiary』を通して読者の子たちの自己肯定感を上げられるようなページを作れたら、と思います。

『着回しDiary』に込めたアツい想いが伝わりましたでしょうか。次回は、ファンタジーな世界観を作り上げるのに欠かせない「小道具」の秘密についてクローズアップします。楽しみにしていてくださいね!

構成/CLASSY.ONLINE編集室

Feature

Magazine

最新号 202501月号

11月28日発売/
表紙モデル:堀田茜

Pickup