漢字の中には、「他に似ている一般的な漢字」があるために、そのせいで読み間違えたり、書き間違えたりしてしまいがちな漢字があります。前回に引き続き、今回もそんなタイプの漢字を紹介していきます。
1.「荼毘」
最初は「荼毘に付す」などと使う「荼毘」です。何と読みますか?「荼毘」は「荼」も「毘」も常用漢字外ですが、「毘」のほうは漢字の構成部分に「比」があるので「ヒ」「ビ」と読めそうですね。問題は「荼」のほうです。「紅茶」「喫茶店」の「茶」と似ていますが、よく見ると一画多いようです。ですので、「チャ」「サ」とは読めません。
正解は「ダビ」でした。「荼毘」とは「火葬すること」を意味する仏教用語で、ほぼ、「荼毘に付す」の形で用いられます。古代インドで用いられたサンスクリット語を音訳(漢字を当てた)もので、ここでは漢字そのものに意味があるわけではない、とされているようです。
2.「喧伝」
次は「喧伝された逸話」などと使う「喧伝」です。何と読みますか?「伝」は普通に「デン」と読むとして、問題は常用漢字外の「喧」です。「口」の右側には、「宣伝」「宣言」の「セン」がありますので、そのまま「センデン」と読んでしまいたくなりますが、間違いです。
正解は「ケンデン」でした。「盛んにいいふらして世間に知らせること」という意味です。「宣伝」と「喧伝」は、ともに「伝」が付くだけに、間違いやすいのではないでしょうか。この「喧」は、「喧(やかま)しい」と訓読みすることからもわかるように、「騒がしい・うるさい」という意味の漢字です。「喧伝」以外だと、「喧噪(ケンソウ)」とか「喧嘩(ケンカ)」などで使います。また、「喧(かまびす)しい」とも読めますが、高校の古典の授業で形容詞「かまびすし」やこれから生まれた「あなかま(=ああうるさい、静かに)」を思い出す方もいるでしょう。
3.「獰猛」
最後は「獰猛な性格」などと使う「獰猛」です。何と読みますか?「猛」は普通に「モウ」と読むとして、問題は常用漢字外「獰」のほうです。「けものへん」の右側には「丁寧」の「寧」がありますから、「ネイモウ」と読みたいところですが、間違いです。
正解は「ドウモウ」でした。「獰」は、この「獰猛」という熟語でしか見かけないと思いますが、「悪い・にくにくしい」と言う意味の漢字で、ほぼ同じ意味を持つ漢字「猛」と連結して、「性質が荒々しくて乱暴なこと」という意味を表します。
それにしても、「寧」という漢字は、本来「やすらかで落ち着いている」という意味なのに、「けものへん」が付いただけで、正反対の意味になるのがおもしろいと思いませんか?
いかがでしたか?この手の漢字はまだまだたくさんありますので、また取り上げます。では、今回はこのへんで。
《参考文献》「広辞苑 第六版」(岩波書店)/「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)/「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)/「新字源」(角川書店)/「難読漢字辞典」(三省堂)/「古語林」(大修館書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)