石井杏奈さん「プレッシャーや悔しさがあるからこそ、お芝居って楽しい」11年のキャリアで築いた“演技との向き合い方”

映画にドラマ、CMと多方面で活躍している俳優の石井杏奈さん。ドラマ『彼女たちの犯罪』を終え、11月に行われるW主演舞台『SHELL』を控えた石井さんに今の心境をインタビュー。11年のキャリアを持ちながら、まだ25歳。そんな彼女の仕事観や先輩・後輩論について、教えてもらいました。

キャリアの転機になったのは…映画『ソロモンの偽証』

—長いキャリアの中で多くの作品

—長いキャリアの中で多くの作品に出演されていますが、転機になった作品や役はありますか?
転機はいくつもあるのですが、あえてひとつ挙げるとしたら、映画『ソロモンの偽証』です。半年かけたオーディションで役をもらって、その後1ヶ月のワークショップを経て、本番に挑んだ作品。お芝居へのアプローチが根本的に変わるきっかけになりました。ほぼ1年間、ずっとその役として生きていたので、自分なのか役なのか分からない瞬間もあるくらいで。次の作品の台本をいただいたときも、まだ『ソロモンの偽証』の役が抜けなくて、その役として読んでしまうくらい没頭した作品でした。

「お芝居って楽しい」と思えるのは、プレッシャーや悔しさがあるからこそ

—キャリアに悩んだり、失敗して

—キャリアに悩んだり、失敗して落ち込むことはありますか?
自分の思い通りの表現ができなかったり、相手のお芝居にしっかり応えられなかったりすると結構、落ち込みます。でもいつからか、その処理が上手くなりました。悔しくて家で泣くこともありますが、「これが今の実力だから、がんばらなきゃ」と未来に向かえるようになったのは大きな変化です。そう思えるようになったのは、二十歳の頃。当時、ライブとドラマを両立していてとても忙しく、寝る時間も少なくて。その時期に自分の機嫌を自分で取ることの重要さを感じて、「せっかくなら忙しい毎日も楽しもう!」と楽観的に考えられるようになったんです。悔しいことも多いですし、プレッシャーに負けそうになることもあるけれど、そういったものを乗り越えてこそ「お芝居って楽しい」と思えます。

—今年、25歳。実際に25歳を迎えていかがですか?
基本的には何も変わらないですが、「大人になったな」と感じることが増えました。私の母が25歳のときには、もう兄も私も産んでいました。この歳で自立して、二児の母だったんだと思うと、改めて母の偉大さを感じます。あとは、10代の頃から活動していたこともあって、「まだ○歳なんだね」と言われることが多かったのですが、25歳になると「もう25歳なのね」という反応が増えました。それがいちばん変わったことかもしれません。

「自分の人生を肯定できる人でいたい」年齢を重ねて見えてきた信念

—思い描いていた25歳と今のご

—思い描いていた25歳と今のご自身にギャップはありますか?
理想としていた25歳と今の自分には、ギャップがあります。中学生の頃に抱く高校生像ってとても大人に感じるけれど、実際に自分が高校生になると案外子どもだな、と思ったのと同じ感覚です。16歳の頃は、「24歳で子どもが欲しい」と漠然と人生設計していました。でもそう思い通りにはいかないですし、今経験したいこともたくさんある。理想通りではない部分もありますが、私は私の人生が好きですし、いい人生を送れていると思っています。どんな道に進んでも、自分の人生を肯定できる人でいたいです。

—プライベートでの変化はありますか?
以前は、月の3分の1は友達とごはんに行っていましたが、最近は外食の回数が減りました。自分で作るごはんが好きになってきたのか、今は3カ月に1回程度しか外食しません。得意料理は和食。ですが、先日弟が「杏ちゃんのハンバーグが食べたい」と家に遊びに来てくれて。妹も大絶賛してくれたので、ハンバーグも得意なのかも、と思っています。

後輩の気持ちがよくわかるから…石井さん的“先輩の心得”とは?

—年齢を重ねる中で、お仕事現場

—年齢を重ねる中で、お仕事現場に後輩も増えていると思います。石井さん的“先輩の心得”を教えてください。
E-girlsでは私が最年少だったけれど、最近は後輩が増えてきました。自分がずっと後輩だったので、後輩の気持ちもよくわかるんですよ。私自身、先輩に話しかけてもらえるとうれしかったんです。緊張でうまく話せないこともありましたが、コミュニケーションを重ねるうちに打ち解けられて、距離が近くなるとうれしくて。私自身は4人兄弟の長女で、兄・妹・弟はいますが姉はいないので、先輩たちはお姉ちゃんのような存在でありがたかったです。そんな体験もあって、私も後輩や年下の役者さんには、自分から声をかけることを意識しています。もし相手とスムーズにコミュニケーションが取れなくても、きっと緊張してるんだなと受け止めて、また次の機会には自分から声をかけます。自分もしてもらったから、後輩とは積極的にコミュニケーションを取りたい。それは今回の舞台の現場でも大事にしたいことです。


舞台『SHELL』

とある高校の放課後の教室。そこには生徒の未羽(みう)、希穂(きほ)、咲斗(さくと)と数名の友達たち。彼らは、突然学校に来なくなった松田先生について、そしてこの学校の問題について度々話し合っている。ある日、未羽は通りがかったビルからマネキンが落ちてくる現場に遭遇する。そのマネキンを抱きかかえていたのは中年男の高木だが、未羽には高木でもあり希穂の顔にも見えるという不思議な体験をする。同じ人間がいくつもの<顔>を持っている。それは、一部の者だけが知っている世界だったのだが、未羽にはそれを見抜く力があった。
希穂たち以外にも、いくつもの<顔>をもっている人々が分かる未羽。様々な登場人物たちがうごめく中で、顔を見抜けて「絶対他者」を繋げてしまう未羽、顔を持つ人々、そして全く分からない人々との間に、摩擦が生じていく…

【神奈川公演】
会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
開催日時:2023年11月11日(土)~11月26日(日)

【京都公演】
会場:京都芸術劇場 春秋座
開催日時:2023年12月9日(土)、10日(日)

公式ホームページ『SHELL』

【衣装詳細】
ニット¥29,700ジャケット¥74,800パンツ¥48,400(ともにBEIGE,/オンワード樫山 お客様相談室 tel.0120-58-6300)イヤリング¥24,200リング¥30,800(ともにLana Swans/SUSU PRESS tel.03-6821-7739)シューズ スタイリスト私物

撮影/永峰拓也(SIGNO) ヘアメーク/八戸亜季子 スタイリング/二宮ちえ 取材・文/坂本結香 構成/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)

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表紙モデル:山本美月

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