女優・夏帆さん「『仕事も人生の一部でしかない』と思えるようになって気持ちがラクに」

良質な作品に出続けて、順調にキャリアを積み上げてきたように見える夏帆さん。〝ずっと、この仕事でいいのかと悩んでいます〟との言葉にとても驚きました。俳優という仕事に真摯に向き合っているからこその迷いと悩み――。その解決方法は、きっと私たちにも参考になるはずです。

基本、悩んでいますが「仕事も人生の一部でしかない」と思えるようになって気持ちがラクになりました

ジャケット¥90,200パンツ

ジャケット¥90,200パンツ¥50,600(CURRENTAGE/MELROSE Co.,Ltd.)シューズ¥77,000(forme)ピアス¥8,900(yoaa)その他スタイリスト私物

この仕事でいいのか、できているのか…ずっと悩んでいます

仕事に悩む時期と解放される時期を繰り返していますが、基本、悩んでいる気がします。思うようなお芝居ができなくて悩んだり、果たしてこの道で良いのか考えたり…。この仕事をする上で、自分には足りないものが多いと思っているので、周りと比べることもあります。

これだけ長く俳優を続けられているのが自分的には不思議で仕方ないんです(笑)。ネガティブな方向に引っ張られがちなタイプだから、悩んだりモヤモヤしたときは立ち止まって「そっちじゃないよ」と自分に言い聞かせます。ちょっとした意識の変化で自分のマインドは変えられるもの。だから、自分の気持ちが晴れたり、機嫌良くいられる方法を何個かストックしておくことも大切にしています。

子どもの頃から仕事をしてきてこの世界しか知らないので、これまではやらなきゃいけない、と追われるようにやってきた部分もあります。でも20代半ばの頃、仕事は自分の人生の一部であってすべてではない、と気が付いたんです。同時に、仕事でもプライベートでも、より自分の人生が満たされることをしたいと考えるようになりました。今は、自分が豊かでいられることを見つけるために、仕事以外にもちゃんとアンテナを張るようにしています。たぶん、悩みに悩んだ末に辿り着いた結論だったと思うのですが、私の中では大きな発見で。それで何かが激変するわけではないけれど、少し視点が変わるだけで、物事の受け取り方も変わる、という気付きにもなりました。

旅行に行くこと、舞台を観ることで考えをリセットしています

知らない場所を訪れて違う価値観に触れる経験は、常に取り入れていきたいので、旅行はよく行きます。悩んだときも旅するのが一番。旅から帰ってくると新しい自分になったような気持ちになりませんか?家ではない場所や環境に身を置くと考えも変わるし、前向きになれる。

映画や舞台のように半強制的に集中できる空間に行くのもいいですよね。携帯を見られない時間を意識して作る。その時間は違う世界に行けるし、普段は考えないことや気付かないことも持って帰れる。気持ちをリセットするためにも、日常から離れて何かに没頭する時間は必要だと思います。

8月から始まる舞台『いつぞやは』は、出演者全員30代で、作・演出の加藤拓也さんも今年30歳、と世代が近いメンバーが集まっています。10代から仕事をしていることもあり、年上の方とご一緒する現場がほとんどだったので、育った環境や思春期を過ごした時期が近い世代で作品を作るって、どんなふうになるんだろう、と楽しみです。これまでは演出家の方も年上が多かったのですが、最近は同世代も増えてきました。それこそ『silent』の風間太樹監督は同い年。同世代というだけで親近感があるし、さらに仲間意識も芽生えるから、今回の舞台も新たな感覚で向き合いながら、みんなで一緒に作品を作り上げていきたいと思っています。

夏帆さん
1991年生まれ。東京都出身。2007年、主演映画「天然コケッコー」で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数々の新人賞を受賞。以降も多くのドラマや映画、舞台で活躍。2015年には映画「海街diary」で、第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。最近の出演作に、フジテレビ「silent」、Netflix「First Love 初恋」、日本テレビ「ブラッシュアップライフ」がある。8月26日からは、舞台「いつぞやは」に出演。〈東京公演〉8月26日〜10月1日シアタートラム、〈大阪公演〉10月4日〜10月9日森ノ宮ピロティホールwww.siscompany.com/itsuzoya/

旅先で出会った人と旅仲間になる

旅先で出会った人と旅仲間になることもあります
最近訪れたのは、台北。昨年制作した写真集の展示もあり、遊びに行きました。ごはんも美味しくて、人も優しく、ギャラリーの方との出会いもあり、いい思い出がたくさん。旅先で出会った人と、そのまま旅友達になることもあります。距離が離れていても長く関係が続いて、そういう仲間が次の旅を誘ってくれることも。違う価値観や人との出会いなど旅は得るものが多いです。

撮影/秋山博紀 ヘアメーク/秋鹿裕子〈W〉 スタイリング/李 靖華 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc

MOVIE

MOVIE

Feature

Magazine

最新号 202406月号

4月26日発売/
表紙モデル:山本美月

Pickup