今週末には、昨年までのセンター試験を継承する「大学入試共通テスト」の実施が予定され、いよいよ2021年の本格的な受験シーズンがスタートします。現在の新型コロナウイルス感染状況の中、すべての受験生の皆さんが、無事に受験当日を迎え、これまで積み重ねた努力の成果を発揮されること願っています。そのようなわけで、今回は、これまでも何回か特集した「大学受験によく出る漢字」からの出題です。もう何年か(?)前に、受験を「卒業」した皆さんも、まだ読めるか再確認してみてください。
1.「敷設」
最初は「鉄道を敷設する」の「敷設」です。これを学校のテストで出題すると、誤答のほとんどは「シセツ」となります。確かに「敷」の訓読みは「敷(し)く」ですが、これだと「訓読み+音読み」の「湯桶(ゆとう)読み」になってしまいますね。さて、何と読みますか?
正解は「フセツ」で、「設備・装置などを広い範囲にわたって設置すること」という意味の熟語です。なお、大学入試では、読み・書きの両方で出題されることの多い語ですが、例文は、ほぼ「鉄道を敷設する」の形が使われます。
2.「払拭」
次は「不安を払拭する」などと使う「払拭」です。さて、何と読みますか?
「拭」の字の右側には「式」があるので、それにつられて、つい「フッシキ」と読んでしまった人がいると思いますが、正しくは「フッショク」です(実は「式」にも「ショク」の読みはあります)。「拭」の意味は、「拭(ふ)く」「拭(ぬぐ)う」の2つの訓読みでおわかりでしょう。ですから、熟語「払拭」の意味は、「払ったり拭いたりして、そこにあってほしくないものをすっかり取り去ること」となります。
3.「克己」
最後は、「克己心を養う」などと使う「克己」です。意味は「意志の力で自らの欲望や邪念にうちかつこと」です。人名にも使いますが、あくまでも熟語として答えてください。さて、何と読みますか?
これはさまざまな誤答が出る問題ですが、正解は「コッキ」です。「克」の字は「克服(コクフク)」などの熟語でわかるように、「うちかつこと」の意味を持ちます。「己」の字は「自己(ジコ)」などの熟語の通り、「自分」ですね。ただし、音読みは、「呉音(日本に最も古く伝わった中国南方地方の発音)」である「コ」の他に、「漢音(平安時代に遣唐使などによって伝わった中国唐代の発音)」である「キ」があり、「克己」の場合は、この「漢音」の「キ」で読みます。また、「コクキ」が「コッキ」となるのは、「学校(ガッコウ)」などの発音変化と同じです。
大学入試に出題される漢字問題も「常用漢字2,136字の範囲内で、その音訓表に記載されているもの」というのが大原則です(実は「読み」の場合はこの原則から外れるケースも見られます)。これは漢字検定で言えば、ほぼ「2級レベル(高校卒業程度)」に相当します。大学入試漢字と言うと、難しいイメージがあるかもしれませんが、「普段目にする漢字がきちんと読める?」を出題コンセプトとしているこの連載には、ぴったりの出題ネタでした。
もしこれを読んでいる受験生の方がいたら、一言。本番前の不安や緊張は誰もが持つものです。「克己心」で乗り越えてください。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「頻出入試漢字コア2800」(桐原書店)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室
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