「水を得た魚=みずをえたさかな」は間違い!意外と読めない慣用句3選【ベテラン国語教師が解説】

今回は「慣用句」をテーマにした漢字の読み方について解説します。よく目にしたり耳にしたりする慣用句の中から、読み間違いが気になるものをピックアップ。自分が思っていたのと違う読み方を聞くと、ドキッとすることがありますよね。では、始めましょう。

1. 「水を得た魚」

最初は、「水を得た魚」です。「

最初は、「水を得た魚」です。「彼は、新しい職場で水を得た魚のようだ」のように使います。今日の出題の中では、最もポピュラーですね。その分、読み間違いも多いような気がします。さて、この中の「魚」は何と読んでいますか?

正解は「うお」です。「さかな」と読んでいた人はいませんか? 現在の常用漢字表の「魚」は、音読みの「ギョ」に対し、訓読みが「うお・さかな」と二つ示されていますが、このうち、現在は一般的な読みの「さかな」は、もともと「酒菜(肴)」と書き、「お酒を飲む時につまむもの」でした。その「つまみ」は、魚類が多かったことから、「魚」の字もそのまま「さかな」読むようになったようです。ですから、「魚」の字は、慣用句や中国の古典が語源である故事成語(「魚心あれば水心あり」など)の場合、本来の「うお」と読むべきであると考えます。

2. 「歯に衣を着せない」

つぎは慣用句の「歯に衣を着せな

つぎは慣用句の「歯に衣を着せない」です。古風な形では「歯に衣着せぬ」とも使いますが、「相手の感情などを無視して思った通りを言う」という意味です。さて、この中の「衣」は何と読むでしょうか?

「ころも」と読んだ人はいませんか?正解は「きぬ」です。常用漢字表では、音読みの「イ」に対し、訓読みは「ころも」のみが示されていますので、そう間違えるのも無理からぬ話です。「衣」の字を「きぬ」と読むのは、「絹(きぬ)」から来ていると思われますが、古典文学の世界でいうと、「ころも」と読むのはお坊さんの「僧衣」を意味することが多いようです。

3. 「金のわらじで尋ねる」

最後」は「金のわらじで尋ねる」

最後」は「金のわらじで尋ねる」です。「金のわらじで捜(探)す」という形でも使います。なお、「わらじ」は「草鞋」と漢字表記をする場合も多く、これはこれで漢字クイズなどでは定番なのですが、今日の問題はそこではありません。「金」を何と読みますか?

恐らくは、「キンのわらじ」だと思っていた人の方が多いのではないでしょうか。正解は「かねのわらじ」です。この「金(かね)」は、「ゴールド」ではなく、「鉄などの金属」のことです。「すり切れることのない鉄製の草鞋を履(は)き」、辛抱(しんぼう)強く探し回るわけですね。ちなみに、一昔前は、「年上の女房は、金のわらじを履いてでも探せ」という言い回しをよく聞きましたが、最近はどうなんでしょうか?

では、今週はこのへんで。

《参考文献》
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新字源(角川書店)」
・「1秒で読む漢字」(青春出版社)

文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室

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