【凰稀かなめ&紅ゆずるスペシャル対談】元宝塚トップの2人が12年ぶりに『ホロー荘の殺人』で共演!

アガサ・クリスティー原作の舞台『ホロー荘の殺人』が、元宝塚トップスターの凰稀かなめさんと紅ゆずるさんという豪華なお2人の共演で上演! 初めてミステリ作品に挑む気持ちや12年振りとなる共演について、また歌劇団時代の初出しのエピソードまでたっぷり話していただきました!

――今回の舞台『ホロー荘の殺人

――今回の舞台『ホロー荘の殺人』のお話がきたときのお気持ちを教えてください。
凰稀 舞台のお話をいただけるのは嬉しいです。ミステリをやるのは初めてですし、それがアガサ・クリスティーの作品だと聞いて、いろいろと挑戦できそうだなとワクワクしました。
 ミステリだったので難しそうだなと思いましたが、「やってみたい!」という気持ちのほうが強かったのでお受けすることにしました。かなめさんとご一緒できるのも、とても楽しみです。

――台本を読んだときの印象、ま

――台本を読んだときの印象、また原作や過去の映像化作品をご覧になったことがあるか伺えますでしょうか。
凰稀 私はいつも(原作がある作品でも)台本だけを読んで稽古に挑むんです。今回の舞台のために作られた台本をもとに、演出家の野坂 実さんや他の演者の方と作り上げたいと思っています。お稽古が始まって原作を読んだほうがいいと思ったら読みますし、映像を観たほうがいいと思ったら観ると思います。
紅 私は本を読むのが好きなので、原作があればすぐに読むタイプです。でも「ミステリは得意なジャンルじゃないんだよなー」と思いながら読んだのですが、これはミステリというより人間関係を深く描いた作品だなと思いました。
凰稀 そう、トリックよりも人間関係が複雑! 心情が絡み合っている感じですよね。ミステリは複雑なトリックを暴いて最後にスッキリするものだと思っていましたが、これはトリックがわかった後も考えさせられる作品です。

紅 原作も読んで映像も観ました

 原作も読んで映像も観ましたが、どちらも「このお話が伝えたいことは、これです」といった明確なことはないのだなと感じました。読んだ方や観た方がああでもない、こうでもないと考えさせられる作品なので、受け取り方は何十通りにもなると思います。
凰稀 それが面白さなのだけど、表現するのは難しいよね。演出の野坂さんとお仕事するのは初めてなのですがお客様にどう見せようと考えていらっしゃるのか、気になります。
 どういう印象を与えたいか、ですよね。
凰稀 今回の台本は台詞だけでなく演者の動きや感情まで細かく書かれているんです。あんなに詳しく書かれている台本は初めてなので、お稽古が始まる前の今は戸惑っています。
 私も台詞の隣に書かれている「動き」や「感情」に大混乱です! 台本だけだと頭がウニになってしまったので(笑)。早く立ち稽古して指示していただきたいです。
凰稀 野坂さんの考えをお聞きしたうえで、演者どうしが心を通わせないとね。

――凰稀さんが演じるヘンリエッ

――凰稀さんが演じるヘンリエッタ、紅さんが演じるガーダについて、どう役作りをしていきたいか教えてください。
凰稀 ガーダって、べに子ちゃん(紅さんの愛称)のイメージにまったくない役だよね。
 私もまったくないと思いました。台本を読んだ最初の印象は、ちょっと頭が悪くて鈍い女性。ジョンという夫がいるのですが、愛しているだけでなく依存している感じもあります。それに至るまでのバックボーンがとても大切だと思うので、私とはまったく似ていない人なのですが自分の持っている何かと繋げて作り上げるしかないと思っています。想像と空想と妄想の繰り返しになるでしょうね(笑)。
凰稀 私が演じるヘンリエッタは彫刻家です。
 芸術家はかなめさんのイメージにあります。
凰稀 ある意味で役者も芸術家か。でも自分との共通項はそれくらいです。男性関係も交友関係も私には理解できないことが多いので、「どういう神経しているの?」と思ってしまうのですが(笑)。ヘンリエッタとして動けるようになりたいです。
 ヘンリエッタとガーダだけでなく、他にも一癖ある人がたくさん出てきます。その中で関係性が生まれてくるから…。本当に大変です。
凰稀 関係性が重要だからね。難しいけれど、頑張らなくては!

――凰稀さんと紅さんは12年振りの共演で女性役として一緒にお芝居をするのは初めてということですが、久しぶりだと恥ずかしかったりするのでしょうか?
凰稀 恥ずかしいことはないのですが、べに子ちゃんが相手だと面白いほうにいってしまいそうで(笑)。
 私達、やるときはやる子だから大丈夫ですよ(笑)!
凰稀 そうなんですけど、いろいろな事を思い出してしまって(笑)。
 今日のメーク中も昔話で大笑いでしたね。珍事件ばかりだから(笑)。

――インタビュー後編ではお2人

――インタビュー後編ではお2人の関係性についてもお聞きするので、その時に何か一つでも教えていただきたいのですが。
凰稀 話せないことだらけ、話したらえらいことになります。
紅 本当に話せないことばかりですが、〝双子コーデ〟の話はどうですか?
凰稀 それなら話せるね! では次回のお楽しみで。

――インタビュー前編の最後に舞台を楽しみにしている皆さまへ一言お願いします。
凰稀 原作を読んだことがある方もまだの方もいらっしゃると思いますが、先ほどもお話したように人間の関係性や感情が緻密に描かれた作品です。今日はこの人、明日はあの人といろんな見方で、アガサ・クリスティーの世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。
 貴族の殺人事件と聞くと自分とはまったく違う世界のことだと感じると思いますし、登場人物は癖の強い人ばかりです。でも、どこかちょっと共感できる部分が見え隠れするんです。簡単には理解できないので、「何で?どうして?」といつの間にか引き込まれてしまい、最後には自分の人生と照らし合わせているのではないでしょうか。そんな、今まで体験したことのない舞台だと思いますので、ぜひ観にいらしてください。

ノサカラボ舞台『ホロー荘の殺人』
世界の名作ミステリを舞台化・上演する長期プロジェクト、ノサカラボ。今回はアガサ・クリスティー『ホロー荘の殺人』を野坂実の演出・構成で上演。ロンドン郊外に住むヘンリー・アンカテル卿とその妻ルーシーのもとに親しい人々が集まった翌日、銃撃事件が起こり…。愛と憎しみが渦巻く中、真犯人と事件の謎が明らかに――。5月3日(水・祝)~8日(月)東京・三越劇場(東京都中央区日本橋室町1-4-1日本橋三越本館6階) 原作・脚本:アガサ・クリスティー 演出・構成:野坂実 翻訳:小田島雄志、小田島恒志 キャスト:凰稀かなめ/紅ゆずる/林翔太 高柳明音/旺なつき/綾凰華 佐々木梅治(劇団民藝) 河相我間/細見大輔 松村優/中尾隆聖/長沢美樹(声の出演)

凰稀かなめ
‘00年に宝塚歌劇団に86期として入団。雪組、星組を経て’12年に宙組トップスターに就任。『風と共に去りぬ』のレット・バトラー、『ベルサイユのばら』のオスカル等を演じ、‘15年退団。退団後も舞台を中心に映像でも活躍している。

紅ゆずる
‘02年に宝塚歌劇団に88期として入団。華やかさとコメディエンヌとしての才能が支持され、’16年に星組トップスターに就任。‘19年退団。退団後は舞台出演のほか、特技の俳句に関す分野にも活動の幅を広げている。

撮影/平井敬冶 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)

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最新号 202406月号

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表紙モデル:山本美月

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