先週の記録的な猛暑は何とかひと段落したものの、夏らしい蒸し暑い日が続きますね。というわけで「夏の漢字」をいくつか紹介していきます。
1.「団扇」
最初は「団扇」です。さて、何と読むでしょうか?
正解は「団扇(うちわ)」でした。音読みで「ダンセン」とも読むことはできますが、「熟字訓」の読みである「うちわ」のほうが一般的です。この「熟字訓」とは、いわゆる当て字の一種。「団扇」二文字全体を「うちわ」と読むわけですから、「うち・わ」でも「う・ちわ」でもありません。「団」は「まるい」という意味(「団子」とか使います)、「扇」は「おうぎ」ですが、「扇(あお)ぐ」とも読みます。つまり、「あおいで風を送る丸い道具」です。
なお、この「団扇(うちわ)」は、もともとは「打ち羽」と書かれていたそうです。「涼を取る」だけでなく、「蚊(か)や蝿(はえ)などの虫などを追い払う羽」という意味合いがあったわけです。
2.「蜩」
次は「蜩」です。漢字検定1級レベルの漢字です。ヒントは、「セミ」の仲間です。さて、何と読むでしょうか?
正解は「蜩(ひぐらし)」でした。実はこの漢字は、「せみ」とも読むのですが、上のヒントにも示したように、その「せみ」と総称される昆虫の中の一つ、「ひぐらし」のことを普通は指します。逆に、総称としての「せみ」は、「蟬(蝉)」と書くほうが多いですね。
夏の早朝や夕暮れ時、どこからともなく聞こえてくる「カナカナ……」の声に、何とも言えぬ哀愁を感じてしまう人も多いのではないでしょうか。筆者もその一人です。今年は梅雨が短く、いきなり本格的な夏が到来したために、「暑さ」つきものの「せみ」の声がなくてひそかに心配していましたが、ここ数日、ようやくその声が聞こえてくるようになって、何となくホッとしています。
3.「蕣」
最後は「蕣」です。これは難しい。漢字検定では1級レベルなので、ヒントを出します。「夏の朝」といえば、あなたは何をイメージしますか?これで、読めたでしょうか?
正解は「蕣(あさがお)」でした。ほとんどの人は、「あさがお」と聞いて、「朝顔」の表記を思い出しますね。実は、この常用漢字外の「蕣」も、「シュン」という音読みの他に、「あさがお」の訓読み(さらには別の植物をさす「むくげ」の訓も)を持ちます。多くの学校では、子供たちが待ちに待った夏休みが間もなく始まりますが、昭和の子供たちの夏休みの思い出と言えば、「ラジオ体操のカードと朝顔の観察日記」でした。
ちなみに、「秋の七草」を知っていますか?『万葉集』の「山上憶良(やまのうえのおくら)」の歌から、秋の野山に咲く代表的な草花である、「萩(はぎ)・尾花(おばな)・葛(くず)・撫子(なでしこ)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・朝顔」のことを指すようになりますが、この最後に名を連ねる「朝顔」は、今の「朝顔」のことではなく、「桔梗(ききょう)」のことであろうと言われています。
今週の夏の風物詩は、いかがでしたか?再び感染拡大の兆候が見られるウイルスの心配をしながら、暑い夏を楽しんで乗り切りましょう。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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