今回は、訓読みの漢字の中から、読みにくいものを紹介します。漢字そのものは、常用漢字に含まれる、おなじみのものですが、その表の読みには含まれない訓読み(表外読み)ということになると、難しいと感じるかもしれません。常用漢字表に含まれない読みの場合は、公用文などではひらがなで表記されることが普通なのですが、漢字で書いてはいけないというわけではないので、よく使う言葉は覚えておきたいものです。
1.「怠い」
最初は「怠い」です。常用漢字「怠」の読みですが、常用漢字表中では音読みの「タイ」(「怠慢」「怠惰」倦怠」などの熟語で使います)が示されます。それに対し、訓読みは「怠る」と「怠ける」です。これは問題なく読めますね。そう、「怠(おこた)る」と「怠(なま)ける」です。
では、「怠い」は何と読むでしょうか?ヒントとなる参考例文は、「微熱があって全身が怠い感じだ」これで何とか読めますね。
正解は「怠(だる)い」でした。「病気や疲れなどで体が重苦しく、動くのがつらいと感じる」状態のことです。
2.「適う」
次は「適う」です。常用漢字「適」の読みですが、常用漢字表では音読みの「テキ」(「適応」「快適」「最適」などの熟語で使います)が示されます。訓読みの記載はありません。
しかし、常用漢字表には取り上げられていないだけで、何種類かの訓読みが考えられます。そのうちの一つ「適う」は何と読むでしょうか? ヒントとなる参考例文は、「目的に適う商品を集める」です。これで読めるでしょうか。
正解は「適(かな)う」でした。「あてはまる・ぴったり合う」という意味の「適(かな)う」です。
なお、この「適(かな)う」と同じ意味をあらわす熟語に「適当」があります。「最も適当な選択肢を選びなさい」や「野菜を適当な大きさで切る」のように、漢字の意味を考えれば、本来は「うまくあてはまる・ほどよく合う」というプラスの意味の言葉ですが、最近は「適当に返事をしておく」とか「適当な男だから当てにはならない」のように、マイナス評価の用法も増えてきています。「ほどよい→その場しのぎ→いいかげん」という意味の変遷が考えられますので、誤用ではないのかもしれませんが、どの意味で使われているのか注意することが必要です。
3.「託つ」
最後は「託つ」です。常用漢字「託」の読みですが、常用漢字表では音読みの「タク」(「委託」「託児」「信託」などの熟語で使います)が示されます。訓読みの記載はありません。
しかし、これも常用漢字表にはないだけで、訓読みすることはできます。それでは、「託つ」は何と読むでしょうか? ヒントとなる例文は、「我が身の不遇を託つ」にします。
正解は「託(かこ)つ」でした。「不平を言う・嘆く」という意味で使います。
なお、この「託」の訓読みには、この他に「託(かこつ)ける」があります。「雨に託けて仕事をさぼる」のように使いますが、実はこの「託ける」には、「託(ことづ)ける」という別の読み方があります。この場合は「人に頼んで先方に伝言してもらう=言付ける」の意味になりますので、注意が必要です。
いかがでしたか?漢字の構成部分から読めることも多い音読みと違い、もともとの漢字の意味がわからないと読めないことの多い訓読みは、難しいけれどおもしろいと思いませんか。
では、今回はこの辺で。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「古語林」(大修館書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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