関東地方は、予想外の早さの梅雨明けともに、いきなり記録的な猛暑日が連続しました。体の準備がまだできていないうちに到来した本格的な夏に、すっかり閉口している方も恐らくは多いことでしょう。そのような方に、少しでも涼を感じていただきたく、夏の季節限定の難読漢字を紹介します。
1.「欠氷」
最初は「欠氷」です。「氷」の字が入っていますから、これは間違いなく涼しくなりますね。さて、何と読むでしょうか?
正解は「欠氷(かきごおり)」でした。「氷を細かく削った、蜜(みつ)やシロップなどをかけたもの」です。「かき氷」と表記するのが一般的ですが、出題のように「欠氷」、または「欠き氷」とも表記します。同じものを「氷水(こおりみず)」「氷水(こおりすい)」とも呼びます。
約1,000年前に清少納言によって書かれた、随筆『枕草子』の「あてなるもの(=上品なもの)」を集めた段に、「削った氷に甘い汁をかけて新しい金属製の椀(わん)に入れたもの」の記述が見えます。氷が貴重であった夏に、かき氷が入った器の表面がうっすらと汗をかいている様子が目に浮かぶようですね。
2.「心太」
次は「心太」です。こちらも食べ物です。一年中手に入りますが、やはり夏になると食したくなる食べ物です。さて、何と読むでしょうか?
正解は「心太(ところてん)」でした。「心太」の原料をご存じですか?海藻の「天草(テングサ)」です。これを煮て溶かしたものを、型に流して冷やし固め、専用の道具を使って棒状に突き出し、酢醤油(すじょうゆ)などをかけて、食します。どうでしょう、読んでいるだけで、口の中が酸っぱくなってきませんか。
なお、漢字の通り、もともとは「心太(こころぶと)」と呼ばれていたものが、やがて、「こころたい→こころてい→こころてん→ところてん」と発音変化していったと考えられています。
3.「鱧」
最後は「鱧」です。「魚へん」の漢字ですから「魚類」ですが、食用になります。私のような関東の田舎育ちの人間には、あまり縁のない魚料理でしたが、夏の京都旅行でその美味しさに目覚めました。このヒントでもうおわかりですね。では、何と読むでしょうか?
正解は「鱧(はも)」でした。「鱧(はも)」とは、「ハモ科の海水魚」のこと。形はウナギに似て細長く、小骨が多いために骨切りをしてから料理します。なお、「鱧」の名の由来は、人にかみつくほど凶暴であるため、「食む(はむ)」が転じて「鱧」となった説などがあるようですが、その外見からは想像がつかないほどキレイな白身で、淡白な中にも濃厚な味わいを持つ魚です。特に、産卵を迎える今の季節は、「鱧」の最もおいしい季節と言われています。さっと湯引きした「鱧」は、梅肉ソースがよく合います。
いかがでしたか? 結果的に、すべて食べ物となってしまいました。ここ数日の猛暑日により、暑さにもようやく慣れてきたところで、例年より長くなりそうな夏を楽しむ準備をしましょうか。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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