私たちの日常をザワザワさせる〝うらやましい〟気持ち。リアルな世界だけにとどまらず、ネットの世界でも私たちの心を乱す〝うらやましい〟気持ちについて、その正体や付き合い方を話題の脳科学者、中野信子さんに教えていただきました。
どうして〝うらやましい〟と思ってしまうの?
脳科学者・中野信子さんが解説!
ただモヤモヤ、イライラしてしまうだけで自分でもうまく説明できず、持て余してしまう〝うらやましい〟気持ち。そもそもなんでうらやましいと感じてしまうの?脳科学者の中野信子さんにお話を聞きました。
他人の恋愛や結婚に対する妬み、どうしたらいいの?
他人の恋愛や結婚に対してもし妬みを感じているなと思ったら、それをどれだけ自分の気づきにできるかが大切ではないでしょうか。表面のキラキラした部分だけが見えてしまい〝うらやましい〟という気持ちにとらわれてしまうと、本当に自分にとって大事なものは何かが見えなくなることも。たとえば「お金持ちの人と結婚した友達」に対して〝うらやましい〟を感じたら、それをきっかけにして、自分はどうしてお金持ちがいいと思ったのか、お金が必要だとしたらどのくらい必要で、それには自分で稼ぐよりもお金持ちと結婚するほうがいいのか、お金以上に重要なポイントはなかったのか、自分にとって本当に必要なもののために、いま何ができるのか、自分に改善の余地がないかを見つめ直すいい機会にもなります。新たな気づきと行動のきっかけになるのであれば、妬みも価値がある感情です。
そもそも人間は誰かと比較しないと「幸せ」を感じられない!?
誰かが得をしているとモヤモヤするのは、決してあなたの性格が悪いからではありません。人間の脳はそういう風にもともとできているのですから、こうした感情を持つのは健康な証拠でもあるのです。他の誰かと比較しないと幸福を感じられないのは、ちょっと残念な性質かもしれませんが、良いほうに考えれば、その状況に合わせて基準を変えられる柔軟さを備えているのだともいえます。自分の中に基準をつくりにくく、他者との比較を優先しやすいのが人間の脳の基本的な性質です。だから、誰かが得していることを知ると、なんだか自分が損をしたような認知が生じて妬みにつながっていってしまうのですが、イヤな気持ちはそのメカニズムを知って、うまく処理していきたいところですね。
お話をお聞きしたのは…
中野信子さん
脳科学者、医学博士、認知科学者。脳や心理学をテーマに人間社会に生じる事象を科学の視点からわかりやすく解説した著書やコメントが多くの支持を集める。嫉妬する感情について取り上げているヤマザキマリ氏との共著『生贄探し 暴走する脳』(講談社+α新書)をはじめ、著書多数。
イラスト/島 タイガー 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc