「大晦=?」意外と読めない漢字3選【ベテラン国語教師が解説】

年末年始をいかがお過ごしでしょうか。「ステイホーム」を強いられる例年とは違う過ごし方に、戸惑うことも多いかと思いますが、今が「我慢の時」と考え、皆で何とか頑張りましょう。さて、今回と次回の2回にわたり「年末年始特別企画」ということで、この時期ならではの漢字を集めてみました。一部、年賀状の留意ポイントにも触れていますので、まだ書かれていない方は、よろしければ参考にしてください。

1. 「大晦」

最初は「大晦」です。「大晦日」

最初は「大晦」です。「大晦日」の形で「おおみそか」とも読みますが、本来は何と読むべき言葉でしょうか?

正解は「おおつごもり」です。1年の最後の日、つまり12月31日を表わす「おお・みそか」と同じですが、言葉の出来方が違います。「みそか」は「三十」を「みそ」と読んでいます。これは、「その月の三十番目の日」の意味ですね。1年の最後だから「大」がついて「おおみそか」です。それに対し、「つごもり」は「月籠り(つきごもり)=月が満ち欠けによって隠れること」を意味します。今の暦と違って、旧暦では月末は「月が見えない夜空」となります。私たちの祖先は、それを「月が隠れた」と考えました。1年の最後の月の末に「大」が付くのは、「みそか」と同じです。この言葉に、「暗い・黒い」の意味を持つ漢字「晦」をあてたわけですね。それが発音変化し、「つきごもり → つごもり」となりました。
ちなみに、月初めの「一日」を今でも「ついたち」と読むは、空に「月が立ち」、それが「つきたち → ついたち」と発音変化したものであり、漢字では「朔日(さくじつ)」とも表記されます。

2. 「一月元旦」

次は「一月元旦」です。これは読

次は「一月元旦」です。これは読み方クイズではありません。お正月に届く年賀状で、「一月元旦」という文字を見ることがありますが、何か違和感を覚えませんか? どこに問題があるでしょうか?

漢字「旦」は「太陽の昇る朝」を表わすものですので、「元旦」はという言葉は、もともと「一月一日の朝」という意味です。ですから、「一月元旦」とか「元旦の朝」という表現は、厳密に言えば、重複表現ということになってしまいます。年賀状に書く場合は、「令和三年元旦」とするほうが無難です。(※「元日=元旦」と広く解釈ができるので、これは間違いではないという説もありますが、間違いと判断する方のほうが、恐らくは多いことでしょう)付け加えますが、年賀状では「新年あけましておめでとうございます」という表現を見ることがありますが、「新年」と「あけまして」は重複表現となりますので、「新年おめでとうございます」で十分なのです。

3. 「頌春」

年賀状つながりで、もう一つ。賀

年賀状つながりで、もう一つ。賀詞の「頌春」です。印刷や手書きの文字として、年賀状のご挨拶によく使われますが、何と読み、どんな意味なのか、おわかりですか?

「こうしゅん」と読んでいた人はいませんか? これ、正しくは「しょうしゅん」と読みます。「頌」の字は、常用漢字の中にはに入っていませんが、「ほめる・たたえる」の意味を持ちます。「頌春」ならば、「新年を迎えたことを祝う」の意味になりますね。ところで、この「頌春」以外にも、「賀正」「迎春」「新春」などの漢字二文字の賀詞がありますが、手紙マナーなどの指南書で、「二文字の賀詞は本来敬意を省いた言葉なので、上司など目上の人には使わないほうが無難である」とのアドバイスを見かけます。気になる場合は、これらを避け、先ほどの「新年おめでとうございます」や「謹賀新年(つつしんで新年のお喜びを申し上げます)」を使うようにするとよいでしょう。

この年末年始シリーズ、次回も続きます。みなさま、よいお年を。

《参考文献》
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新字源(角川書店)」

文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室

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