言葉は生きています。漢字の本来の読み方とは違う読み、つまり誤用であったとしても、多くの人が使うようになれば、それが「慣用」読みとして許容され、やがて定着していきます。ただし、そこまでの過程においては、間違いだとする人も中にはいるわけですから、本来の正しい読み方を知り、それを守るということも必要ではないでしょうか。今回そんなグレーゾーンに入っている読みをいくつか紹介します。
意外に知らない!?漢字の本来の読み方3選
1.「一段落」
「仕事もやっと一段落ついた」。「ひとだんらく」と読んでいる方が多いのではないでしょうか。
近年では「ひとだんらく」のほうを多く聞きますが、正しくは「いちだんらく」です。「段落」自体が音読みの熟語ですから、その前につく「一」は、訓読みの「ひと」ではなくて音読みの「いち」が正しいわけです。しかし、「一安心(ひとあんしん)」「一苦労(ひとくろう)」などの例外と言える言葉があるために、これに影響されて「ひとだんらく」の読みが浸透したと考えられます。ただし、多くの人がそう読んでも、各社の国語辞典では「ひとだんらく」は誤用(誤読)としているものがまだ多い。テレビ・ラジオでも、「いちだんらく」と読んでいるはずです。
2.「他人事」
「自分には関係のないこと」という意味ですが、多くの人が「たにんごと」と読んでいませんか?
これも正しくは、「ひとごと」です。「人事(ひとごと)=他人事」なんですね。ただ、「人事」には、「じんじ」と読んで「会社の人事異動」などとも使いますから、それとの紛らわしさを避けるために、「他人事」と書くようになったと考えられます。しかし、「常用漢字表付表(熟字訓、いわゆる当て字などを集めてある)」では、「他人=ひと」の読みは示されていないので、「他人」とあったらそのまま普通に「たにん」と読む人が増えてしまったのでしょうか。それでもやはり、本来の読みは「ひとごと」。これも、テレビ・ラジオではそのように統一しているようです。
3.「貼付」
履歴書に写真を「貼付」する。あなたは、何と読んでいますか?
「てんぷ」と読んでいた方、実はこれ、正しくは「ちょうふ」と読みます。常用漢字の「貼」には、「チョウ/はる」の読みしかありません。「(補足となるものを)そえること、つけくわえること」という別の意味の「添付(てんぷ)」に引かれての読み間違いと考えられます。実際のところ、私の周りでも「貼付」を「てんぷ」と読む人は多く、そのため、多くの国語辞典でも、誤用のこの読みを見出し語には出しておいて、「ちょうふの慣用読み」と示すようになりました。そのようなわけで、本来の読み「ちょうふ」で読んで欲しいところですが、文章中ではなく口頭で使用する場合は、「ちょうふ」と聞いてもイメージしにくいことが多いことから、「貼り付ける」と言い換えてしまうのがよいかもしれませんね。
では、また次回。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「なぜなに日本語 もっと」(三省堂)
・「1秒で読む漢字」(青春出版社)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室
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