今回は、久し振りに四字熟語を紹介します。四字熟語は「漢字四字で構成される成句や熟語」のこと。中国の古典などに由来するものも多く、常用漢字外の難しい漢字を使うものもありますが、普段目にする機会が多いもので、読み間違いやすいものを選んでみました。
読めそうで読めない四字熟語の漢字3つ
1.「画竜点睛」
「物事を立派に完成させる最後の仕上げ」という意味で、「画竜点睛を欠く」というように使います。さて、何と読みますか? 「ガリュウテンセイ」と読んだ人はいませんか?
正しくは「ガリョウテンセイ」です。「竜(龍)」という漢字の音読みは、「漢音(中国唐代の都長安で行われた音)の「リョウ」と、「慣用音(日本で広く使われるようになった音)」の「リュウ」と二つあり、一字単独で想像上の動物を言う時は「リュウ」と読むのが普通ですが、中国の故事(古い話)から生まれた「画竜点睛」という四字熟語は、やはり「リョウ」と読むべきでしょう。なお、この四字熟語の最後の「睛」の字にも注目してください。「晴」ではありませんね。「竜の絵に瞳を書き入れたら天に昇った」というのが元の話なので、「瞳」を表わす「睛」の字でなくてはならないのです。書く時には注意してください。
2.「多士済済」
次は、「優れた人材が多く集まっている」という意味で使う「多士済済」です。「済」という漢字の読みがポイントです。さて、何と読みますか?
正解は、「タシセイセイ」です。「サイサイ」と読んだ人はいませんか? それも道理で、「済」の字は常用漢字表でも「サイ」の音読みしかありません。この「サイ」は「呉音(漢音よりも古く日本に伝わった音)」であり、「返済・救済・経済」など、普段目にする熟語は、ほぼ「サイ(ザイ)」と読みます。しかし、この他に漢音の「セイ」という音があるのです。この「多士済済」も中国の古典に由来する語ですから、「タシセイセイ」と読むべきです。国語辞典の中には、「タシサイサイとも」的な補足が見られるものもありますが、反面、これを「誤読」としているものもあるので、将来的にはともかく、現状では「タシセイセイ」と読むのがよいと思われます。
なお、「済済」は「済々」とも表記しますが、「々」は「踊り字(繰り返し符号)」で漢字ではないので、ここでは「済済」としました。
3.「女人禁制」
前項でも、読みは常に変化していく可能性があることに少し触れましたが、その流れで「女人禁制」です。意味の理解は問題ありませんね。では、読み方は?
正解は「ニョニンキンゼイ」です。まず、「禁制」という語は、古くは(室町時代には)「キンゼイ」という読みでした。それがやがて「キンセイ」となり、現在の国語辞典ではこちらを見出し語とします。しかし、「女人禁制」という語は、「宗教上の理由から女性が寺に立ち入ることを禁止していた」歴史的背景があるためか、現在でも多くの国語辞典で(もちろん、そうでないものもありますが)、「ニョニンキンゼイ」のほうを見出し語に立てています。放送関係でも、こちらを採用しているところが多くあるようです。そうした点を総合してみると、今のところ「禁制」の付く語の中でも、「女人禁制」に関しては、「ニョニンキンゼイ」と読むのに軍配を上げざるを得ません(これ、大相撲に掛けています)。
では、また次回。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室