「奇しくも=?」読み間違えたら恥ずかしい漢字3選【ベテラン国語教師が解説】

普段自分で使うだけでなく、人が使うのを聞いたりした時に、そういう読み方で良かったのかなとか、何となく違う気がするけど……と思った経験はありませんか。今回は、そんな読み間違い注意の漢字・言葉を集めてみました。

意外に知らない!?漢字の本来の読み方3選

1.「奇しくも」

「奇しくも二人の出身は同じ町だ

「奇しくも二人の出身は同じ町だった」。「きしくも」と読んだ人はいませんか?

正しくは「くしくも」です。「奇しくも」は、「偶然にも・不思議にも」という意味で使いますが、この言葉は、古語の形容詞である「奇し(くし)=不思議だ・神秘的だ」からきています。「奇妙」とか「奇遇」などの熟語で使われる漢字「奇」の意味がこれですね。この形容詞の連用形「奇しく」に助詞の「も」が付いて、意味を強めているのですね。ですから、「くしくも」と読まなければいけません。スピーチやプレゼンなどで、割と使われることの多い言葉だと思いますので、注意してください。

2.「身を粉にする」

「長年の間、身を粉にして働いて

「長年の間、身を粉にして働いてきた」などと使う「身を粉にする」ですが、「みをこなにする」という言い方を聞いたことはありませんか?

正しくは「みをこにする」です。常用漢字の「粉」には、音読み「フン」と訓読み「こな」の他に、もう一つの訓として「こ」が示されています。「パン粉」「お汁粉」とかにも使われる「こ」です。これも古語の時代からある言葉で、日本語には本来一音の語が多い。「籠」や「蚕」もも、現在は「かご」「かいこ」と訓で読むのが普通ですが、これも本来は同音の「こ」でした(ただし、こちらは現在の常用漢字表の訓読みには示されていません)。それにしても、こうした慣用句は伝統として受け継いでいきたい日本語ではありますが、現実問題として、「身を粉にして働く」ほどの無理は禁物です。

3.「一矢報(むく)いる」

次も慣用句です。「一矢」はもち

次も慣用句です。「一矢」はもちろん「一本の矢」。読み方は、「ひとや」「いちや」「いっし」のどれでしょうか?

正解は「いっし」です。熟語の基本は音読みですから、「一」の「イツ」と「矢」の「シ」の連結で、「イッシ」となるわけです。「矢」の音読み「シ」は、常用漢字表にもきちんと示されていますが、一般的にはこの「一矢」以外ではあまりお目にかかりませんので、読めない場合があるのかもしれません。「物事のはじめ」の意味で用いる難読語「嚆矢(コウシ)」くらいのものでしょうか。
ところで、この「一矢報いる」の使い方は、「敵の攻撃に対し、大勢をくつがえすには至らないが、反撃して意地を見せる」のニュアンスで使います。つまり、本来「敗者」の側に立った言い方ですので、「勝者」の側での使用は、まだ誤用と見る方が多いと考えて、注意したほうがよさそうです。

今回は比較的簡単な漢字の読み方を紹介しました。もしかしたら読み間違えているかも…という不安は、改めて解消しておきたいですよね。では、また次回。

《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「古語林」(大修館書店)
・「なぜなに日本語 もっと」(三省堂)
・「残念な日本語」(宝島社)

文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室

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