【宝塚】大人気雪組トップスター・望海風斗さんのこと|ヅカオタ編集Mがアツく語る⑧

少しずつエンタメ業界も活気を取り戻しつつある今日この頃。『宝塚歌劇』もその影響を受けつつ、先日とうとう公演が再開されました。この機会に宝塚デビューしたい!というCLASSY.読者の方に、ヅカファン歴20年の編集Mがその魅力を好き勝手にご紹介します。

今回のテーマは「雪組トップスター・望海風斗(のぞみふうと)さんについて」。今や5組の中で最年長トップとなり、人気も実力も随一となった望海さんについて、ピンポイントで語っていきたいと思います。ちなみに本当に望海さんへの想いをとうとうと述べてるだけなので、有益な最新作の感想などはありません、ご了承ください。

【宝塚】大人気雪組トップスター・望海風斗さんのこと|ヅカオタ編集Mがアツく語る⑧

profile

望海風斗(のぞみふうと)さん・2003年入団の89期生。花組に配属。その後2014年に雪組へ組替えし、2017年に相手役・真彩希帆(まあやきほ・98期)さんを迎え、雪組トップスターに就任。劇団屈指の歌唱力を持つトップコンビとして人気を博し、2021年4月に真彩さんとともに退団することが先日発表された。

①望海風斗さんの魅力

望海さんの魅力はごまんとありますが、長らく望海さんのファンをしている友人にどこが好きか訊いたところ、論文のような長さのテキストを送ってくれたので、その一部を抜粋して紹介したいと思います。

【歌】
うまいってことを忘れるくらい歌がうまい。だから毎回公演中に突然気づく「歌、うまくない?」
・特に歌い出しとビブラートが好き。音は空気に乗って鼓膜に届くけど、その過程に全くストレスがない。まるで凪みたい
・発音ひとつひとつが明瞭なのに、耳にきつい音が全くない、力みが全然ない
・ロングトーンがはちゃめちゃに強い
・『ファントム』(2018年)で、クリスティーヌに顔を見られておいおい泣きながら銀橋で歌ったとき、感情が声に乗ってどんどん大きくなって、劇場の壁が吹き飛んでしまいそうな感覚になった

【お芝居】
・いつも徹底して古き良き男役の良さがある。「これVHSで見たやつ…宝塚だ…」という気持ちになる
・さりげない仕草がどれをとっても美しくて無駄がないのに、余韻も残してくれる
・男役へのこだわりや憧れ、そこに至る宝塚の歴史を見るよう

【ダンス】
トメハネが明確で迷いがない。その潔さに痺れる
音の取り方が天才。『ONCE UPON A TIME IN AMERICA(ワンス アポン ア タイム イン アメリカ)』(2020年)のフィナーレでふわっと舞い降りるとグロッケンが最高のタイミングで鳴って、「なんという夢か…」と驚いた
ウィンクや掛け声のタイミングがピカイチ
・「よっ!日本一!」って心の中で掛け声かけたい(←わかる。宝塚でも歌舞伎のような掛け声を作ればいい)

【ビジュアル】
・死ぬほど望海さんの舞台化粧が好き。『Victorian Jazz(ヴィクトリアン ジャズ)』(2012年)の写真を見て、「天才か~~~~!!!」ってびっくりしすぎて、便箋5枚くらい使って手紙を書いた
目を伏せる姿や横顔が好き。目頭が目尻にスッと引かれたラインの終わりまで美しくて、歪みも違和感もない
役に合った年齢をメークから感じるのがすごい。『20世紀号に乗って』(2019年)のオスカーからはポマードの香りが漂うようだったし、『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』の壮年期のヌードルスからはバーボンの香りがした
・それらがあの強いスポットライトを浴びて完成するのが一番の感動。永遠に照らされていてほしい

②編集Mが思う望海さん(と上田久美子先生)

①で充分な気もしますが、しつこく編集Mの思う望海さんの魅力について語りたいと思います。

編集Mの大好きな上田久美子先生はかつて、『星逢一夜(ほしあいひとよ※あいは1点しんにょう)』(2015年)という作品で、優しい優しい源太というキャラクターとして望海さんを描きました。 上田先生は当て書きするタイプの演出家なので、おそらく源太の優しさは、望海さんの優しさでもあるんじゃないかと思います。自分がどうしたい、という気持ちより、周りがどうしたいか、を優先させる人間でした。好きな女性のために、自分以外の男性に「あいつをもらってやってくれ」と頼んだり、村のために一揆の先導をして、代表して一騎討ちをして死んでしまうような。

望海さんの優しさは、雪組という組を豊かにしました。その圧倒的な実力で引っ張りながらも、組子に優しく接し、あたたかく見守り、相手役の真彩希帆さんのことは、姉のように母のように、時には父のように教え導いていました。退団記者会見での二人の言葉から見える信頼関係は絶大(真彩さんの「望海さんの隣にいることが、私が生きてきた中で一番幸せ」という言葉に、引くほど泣いた)で、宝塚の男役と娘役の域を越えた舞台人同士の理想像だと思いました。

「宝塚の域を超える」。その表現がしっくりきます。その圧倒的な歌唱力で、宝塚「歌劇」の質を格段に押し上げてくれた望海さんですが、きっとその裏にはどのスターにもあるように、計り知れない努力と、苦労があったのではないかと思います。スターの本心なんてファンには一生わかり得ないものですが、そのなかでも特に、わからない人でもありました。お披露目の『ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』で演じたロベスピエールや、真骨頂とも思えるファントムの、やっぱりどこか遠くを見るような視線に、なんともいえない寂しさと、それでも劇場を優しく包み込むようなあたたかさを感じたのを、よく覚えています。

わからないと書きましたが、源太を除くなら、ファントムのエリックに近い部分のある方ではないかと、やはり個人的に思います。エリックもまあクセが強いので、勿論そのものとは思ってないのですが、エリックの繊細さ、自分の愛する芸術性に対する拘りは、どこか繋がる部分があるような気がします。真面目に、ひたむきに、自分と向き合って芸の道に邁進した結果、宝塚における神様のような領域にまで達しつつある人なのではないかと思っています。あの歌声は、真彩さんともども、一般人にはどんなに思いを巡らせても到底想像がつかないようなレベルだからです。

また、神様といえば、望海さんの退団作は音楽家ベートーヴェンの物語『fff-フォルティッシッシモ-~歓喜に歌え!~』です。作・演出は上田先生。上田先生は過去にブラームスを主人公とした『翼ある人びと』(2014年)で、ベートーヴェンを「彼の音楽は奇跡」「険しく一番高い山」と評していました。ご自身が一番好きな音楽家だとも。その人物を、宝塚の神様のようになりつつあるのぞみさんに当てて書く。宝塚ファンとしても、『翼ある人びと』ファンとしても、非常に感慨深いものがあります。本当に本当に楽しみです。

③退団公演のこと

最後に退団公演について、少しだけ書こうと思います。お芝居については語ったので、ショーについて。

ショー『シルクロード~盗賊と宝石~』の作・演出は生田大和(いくたひろかず)先生。望海さんと縁の深い先生です。生田先生といえば花組時代、デビュー作の『BUND/NEON 上海』(2010年)で望海さんに二番手のマフィア役を振ったのですが、その描き込み方がすごくて、ファンの間で「生田先生…望海さんのこと大好きなのかな?」と噂されていました。その後、小劇場の望海さん主演公演『ドン・ジュアン』(2016年)を経て(そこでも「生田先生…以下略」)大劇場公演のお披露目公演『ひかりふる路』の演出も担当しました。『ひかりふる路』は人気作曲家フランク・ワイルドホーンが楽曲を描き下ろし、望海さんの歌唱力がいかんなく発揮されている作品。ロベスピエールの登場シーンは、編集Mが見てきたトップお披露目の中でも屈指の、大好きなトップスター登場場面。真面目で理想のために突き進んだ結果身を滅ぼしてしまうロベスピエールは、やはり人物像として突っ込みたいところは多々あるものの、望海さんにこの役を当てた生田先生、わかる~…と当時思ったものです。

からの退団公演の担当ということで、もう生田先生が望海さん大好き説は私の中で真実になりました(ご本人の言質はとっていません)。今回最大の注目ポイントは、芝居の演出家だった生田先生が初めてショーを手掛ける、ということ。退団公演ということで、縁の深い先生と最高の体制で臨みたい、ということかなと思いますが、生田先生が望海さんのこと好きすぎてショーでもいいから演出したかったんじゃないか、という邪推も個人的に捨てきれません。それはさておき、内容について公式サイトでは「路往く隊商を襲った盗賊は、一粒の青いダイヤモンドを手に入れる。しかしそれはインドの女神シータの失われた片目であった」とあります。どうしよう、生田先生らしさが満ち溢れている…。生田先生がミューズ・望海さんのためにどんなショーを生み出してくれるのか、こちらも楽しみです。

以上、ヅカオタ編集Mによる、雪組トップスター望海風斗さん語りでした。現在望海さんはコンサート『NOW! ZOOM ME!!』(作・演出/齋藤吉正先生)に出演中。東京公演は26日からで、チケットは完売していますが、10/3にはライブ配信が予定されています!「一刻も早く望海さんが観たい!」という方はぜひご検討を。生の望海さんに会いたい方へ、チケットの取り方や公演日程は、ぜひ宝塚歌劇団公式サイトをチェックしてみてくださいね。

そもそも宝塚歌劇団とは?

花、月、雪、星、宙(そら)組と、専科から成る女性だけによる歌劇団。男性役を演じる「男役」と女性役を演じる「娘役」がおり、各組のトップスターが毎公演の主役を務める。兵庫県宝塚市と千代田区有楽町にそれぞれ劇場があるほか、小劇場や地方都市の劇場でも年に数回公演をおこなう。
公式サイト:https://kageki.hankyu.co.jp/
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