CLASSY.ONLINEで毎週連載中の漢字記事、今回は「人間」に関係する言葉で、使われている漢字自体はよく目にするけれど、特別な読み方(表外読み)をするために、読み間違いをしやすいものを集めてみました。また、読み方だけでなく、その意味も誤解していたりするものもありますので、あわせて考えてみてください。
1.「好好爺」
最初は、「好好爺」です。同じ漢字を繰り返す「々」を使って「好々爺」とも書きます(そうそう、「々」を「漢字」だと思っている人は多いと思いますが、「同の字点」「ノマ点」などと呼ばれる繰り返し記号です)。さて、何と読みますか?
「すきすきじい」なんて読んだ人はいませんか?「爺」は常用漢字表にはない漢字ではありますが、「お爺(じい)さん」と使いますから、そう読んだとしてもわかるような気がします。この「じい」のほか、「じじ・じじい・おやじ」とも読めますが、これらは訓読みです。それに対する音読みは「ヤ」です。熟語は音読みが原則ですから、「好(コウ)」を重ねて、「コウコウヤ」と読みます。
ちなみに、「好色な老人」的な意味を連想した人も多いかもしれませんが、「やさしくて人のよい老人」という意味です。「好」の字は、「愛する」以外に、「このましい・すぐれている」の意味があり、「好人物」「好青年」「好敵手」などの熟語に使われています。
2.「敵役」
次は、「敵役」です。こちらは「敵」も「役」も常用漢字です。さて、何と読みますか?
おそらくは、「てきやく」と読んだ人が多いかと思います。正解は「かたきやく」でした。まず、「敵」の字は、常用漢字表では、音読み「テキ」と訓読み「かたき」が示されます。「かたき」は「仇」とも書き、「目の敵(仇)にする」「親の敵(仇)を討つ」などと使いますね。また、「役」の字は、「ヤク・エキ」の二つの音読みが示されます(訓読みはなし)。そこで、「テキヤク」とそのまま読んでしまうのでしょう。しかし、ここは、いわゆる「湯桶読み(訓+音)」で「かたきヤク」と読みます。
意味は、ほぼおわかりだと思いますが「芝居などで悪人に扮する役」「人から憎まれる立場にある人」、つまり「悪役(アクヤク)」のことです。
3.「曲者」
最後は、「曲者」です。こちらも「曲」「者」が常用漢字です。さて、何と読みますか?
まず、「曲」の字は、常用漢常用では、「キョク/まがる・まげる」の音訓が示されます。同様に、「者」は「シャ/もの」です。そのまま普通に読めば、「キョクシャ」「まがりもの」「まげもの」などという読み方が考えられそうですが、実は正解は「くせもの」でした。「曲者(くせもの)」とは、「あやしい者・ひどくくせあって油断のできない者・用心しなくてはならないこと」という意味で使われる言葉です。
なお、「曲者」を「キョクシャ」と読んで、「芸能に巧みな人」という意味が出ている大型辞書がありますが、一般的に使われる言葉ではなく、また、先ほど説明した意味では「くせもの」としか読みません。念のために申し添えておきます。
今回はいかがでしたか? 私も「敵役」や「曲者」にはならず、「好好爺」を目指したいと思います。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「読めそうでギリギリ読めない漢字」(河出書房新社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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