さて、今回のCLASSY.ONLINEでは漢字そのものの画数が多く、いかにも難しそうであるけれど、実はよく使っている言葉を出題します。
1.「鑑みる」
まずは、常用漢字の範囲内から。例文は「過去の事例に鑑みる」。この「鑑みる」は何と読むでしょうか?
常用漢字「2,136字の中で最も画数の多い漢字は、「鬱」で「29画」になりますが、最初の常用漢字制定時(1981年)には入っていなかったので、その時点ではこの「鑑」が「23画」で、一番画数の多い漢字でした。「鑑定」「図鑑」など、音読みなら問題なく「カン」と読めるはずですが、訓読みは読めない方もいるのでは?
正解は「かんがみる」と読んで、「(鏡に映すように)先例や手本に照らして考える」という意味で使います。「かがみみる」が「かんがみる」と発音変化したのです。
ですから、ビジネスの現場でよく使う「かがみ文(文書の一番上に付ける説明文書)を付ける」という言葉もこの字を使い、「鑑文(または鏡文)」と書くのです。
2.「蘊蓄」
次は、常用漢字外の漢字を使った言葉です。ただし、言葉としてはよく使っていると思います。例文は「彼は蘊蓄を傾けるのが得意だ」。この「蘊蓄」は何と読むでしょうか?
最初の「蘊」が常用漢字外です。「19画」で、「積む」の意味を持ちます。常用漢字「蓄」のほうは「貯蓄」「蓄積」などの熟語でわかると思いますが、「蘊蓄」は「学問や技芸の深い知識」の意味になります。そう、正解は「ウンチク」です。例文のように、多く「蘊蓄を傾ける」という形で使います。
3.「軋轢」
最後は、どちらも常用漢字外の漢字を使った「両者の間に軋轢が生じる」。この「軋轢」は何と読むでしょうか?
正解は「アツレキ」です。「軋(8画)」「轢(22画)」は、ともに部首が「車」であることからわかるように、「車輪がすり動いてぎしぎし音を立てる」という意味を持ちます。この「摩擦」が、「人と人が争う、仲たがいする」ことも表すようになりました。
いかがでしたか? 漢字そのものは難しくても、言葉自体は口にするものではなかったでしょうか。
ちなみに先日、英国ロンドンでは、チャールズ国王の「戴冠式」が行われました。新国王が即位の後、公式に王冠を受け、王位就任を告げる儀式ですが、この「戴冠式」の「戴」は常用漢字外の漢字で、常用漢字にある「栽」「載」「裁」など、字形の似た漢字(ただし部首はそれぞれ違います)が「サイ」と音読みするためか、「サイカン式」と誤読しがちです。正しくは「タイカン式」ですね。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「難読漢字辞典」(三省堂)
・「100ページでテッパンの漢字力」(青春出版社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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