女優&日本舞踊家・藤間爽子さん「アラサー世代が副業やダブルワークをする感覚と近いかもしれないですね」

藤間爽子、またの名を三代目藤間紫――。日本舞踊の家元でもある藤間さんには、雅なイメージを勝手に抱いていました。でもインタビューではシャイな印象ながら、コンプレックスなどを率直に話してくださり私たちと重なる部分も多いと感じました。日本舞踊の動きを活かしたシューティングにも注目です。

舞踊と役者。両方の仕事があることで自分を保つことができるようになりました

ジャケット¥103,400チュ

ジャケット¥103,400チュールレイヤードパンツ¥53,900中に着たつけ襟¥56,100(すべてチカキサダ/エドストローム オフィス)シューズ¥50,600(カチム)ブレスレット¥253,000右手人差し指リング¥209,000(ともにシハラ/シハラ トウキョウ)右手中指リング¥15,400(エネイ/エネイ松屋銀座)

言われたことはまずやってみる、という姿勢でいます

俳優の仕事で監督や演出家に言われたことは、まずやってみる姿勢を大事にしています。日本舞踊には型があり、幼い頃から「とにかく型をやってみろ」と教えられたこともあって、割と周りの意見に疑問を持たずに、まずは受け入れるタイプ。舞踊は真似事から入るので、理屈じゃないんですよね。「これは心と身体の動きが合わないからどうなんだろう?」と理屈っぽくならずに、言われたことをやってみる。そこで腑に落ちないことがあれば意見交換するのが私のスタンスです。

2021年に三代目藤間紫を襲名し家元になったので、流派に所属する全員がお弟子さんで、その数は総勢数百名にのぼります。その中で私が直接踊りを見ているのは5名程度。このお弟子さんたちとは同世代なこともあり、よくないかもしれないですが、友達みたいな関係です。お稽古はプライベートの話もしながら、和気藹々と楽しくやっています。日本舞踊の世界に若い人は少ないから、自分より下の年代もほとんどいなくて、これまでは永遠にひよっ子な立場でした。その中でお弟子さんを持つようになり、教えるってエネルギーがいるし、叱るって勇気がいることなんだな、と身を以て知りました。私は性格的にお弟子さんにも気を遣いがちだったり、「仕方ないか」って諦めてしまうこともあって、正直、年下との接し方は試行錯誤中。私が50、60代だったら話は変わるかもしれませんが、私自身もまだ教わることが多い年代で、未だに頼りない家元です。でも分からないからこそ、みんなの力を借りながら前に進む家元でもいいんじゃないかと最近思うようになりました。この先も舞踊を辞めることはないので、助けていただいたり、周りに頼ったりしながら、新しい家元像を模索しているところです。

舞踊と役者、両方あることで副業みたいな効果があります

3月に出演していた舞台『ハムレット』は、仕事観が変わるきっかけになりました。演出を手掛けていた野村萬斎さんの、狂言の世界に身を置きながら海外でシェイクスピアも学ばれて、垣根を超えて活躍される姿に刺激を受けています。そこで公演期間中、萬斎さんに「どうしてシェイクスピアを学ぼうと思ったのですか?」と伺ったんです。萬斎さんは「狂言のような伝統の世界は割と保守的。でも、シェイクスピア作品は古典でありながら、いろんな解釈がなされて今も上演を繰り返し、常に新しいところに興味があった」と話されていて、日本舞踊にも通じるものがあるなと感じました。伝統を受け継いでいくことも大切だけど、新しさを取り入れることも必要なのかな、と。20代前半で舞踊から逃げるように入った俳優の世界ですが、経験を重ねた今は、この仕事で吸収したことや得たことをいつか舞踊に還元して発信していきたい。そうでなかったら、自分が俳優になった意味がないと考えるようにもなりました。また、今回の公演では萬斎さんから「芝居の中に何か舞踊的な要素を入れられないか?」という相談もいただき、自分がやってきたことを客観的に見つめ直す機会にもなりました。「そっか、この動きは舞踊では定番だけど、普段はやらないことなんだな」という発見もあって、日本舞踊と俳優、お互い還元し合えると、どちらにもいい影響を与えられると気付けた。そういうチャンスをくださった萬斎さんにはすごく感謝していますし、私自身も演じていておもしろかったです。そう、CLASSY.世代が副業やダブルワークをする感覚と近いかもしれないですね。複数の世界に身を置くことで、どちらにもいい影響がある。最近は、日本舞踊家とか俳優とか肩書に縛られず、表現者としていられたらいいのかなとも思っています。以前は自分が勝手に括りすぎてモヤモヤしていた部分もあったのかもしれないです。

褒められたら認める、が20代最後の目標です

若い頃は「私なんてキレイじゃないし、あの人みたいにキレイになりたいな」と周りと比べることもありましたが、最近は比較したってどうしようもないと割り切れるようになりました。今もみんなが求める自分と本当の自分とのギャップに苦しむことはあります。日本舞踊をやっていると理想高めのイメージを持たれることが多く、「そんなに自分はできないのにな」と感じることも。でもそのギャップを少しでも埋めるために、今年は褒められたら自分を認めようと思っています。今までは褒められると「そんなことないです」って謙遜しがちでしたが、「ありがとうございます」と素直に受け入れる。20代最後の目標です。

休日は家にいない!出かけるのが

休日は家にいない!出かけるのが好きです
休日にずっと家にいることはほとんどなくて、映画やお芝居を観に行ったり、友達とご飯や旅行に行くのが定番。先日も友達と箱根でかまぼこ作り体験をしました。出かけることが好きだし、休みの日は誰かとおしゃべりしながら何かを共有したい。仕事で地方を訪れた際も必ず観光します。「せっかく来たんだし、どこか行かなきゃ!」という気持ちになって、ホテルでのんびり……は絶対にしないですね(笑)。

藤間爽子さん
1994年生まれ。東京都出身、青山学院大学卒。幼少期より、祖母・初世家元藤間紫に師事し、7歳で歌舞伎座の舞踊会で初舞台を踏む。以来、数々の舞台に立ち、2021年には三代目藤間紫を襲名。大学時代には劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」に所属し、俳優としての活動もスタート。2017年、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」でデビューを果たし、TBS「マイファミリー」現在放送中のWOWOW「ドラフトキング」、2023年後期放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」にも出演予定。

撮影/水野美隆 ヘアメーク/Tomoe〈artifata〉スタイリング/和田ミリ 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc

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最新号 202406月号

4月26日発売/
表紙モデル:山本美月

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