「結婚や出産を機に転職を考える前に、まず知っておくべき3つのこと」働き方のプロに教えてもらいました

編集部では毎月、〝読者調査=略して読調〟としてCLASSY.世代の女性にお話を伺っています。まずはファッション中心にお話を聞くのですが、いつも行きつくのがキャリアのお悩み。転職する?昇進は?結婚出産のタイミングは?…そんなリアルなお悩みを3人の先生にぶつけてみました。

【お悩み】結婚・出産を見据えて働き方を変えるべきですか?

商社に一般職で新卒入社後、25歳で思い切って転職し、今年で4年目になる29歳です。WEB広告の営業として経験を重ね、大きなクライアントを任されたり、後輩育成も担当するようになりました。仕事は好きだし、やりがいもありますが、30歳という年齢が目前の今、ワークライフバランスに悩み始めています。周りでもバリバリ働きすぎて、潰れてしまう人が多いです。結婚、出産を見据えたとき、このままの働き方でいいのだろうか悩みます。付き合って3年目の彼は金融勤務で転勤があるので、その場合は私が仕事をやめてついてくると思っているようです。(29歳・広告会社勤務)

【堀井 美香先生がお答え】そのときに一番HAPPYなことを選べばいい!

「結婚や出産を機に転職を考える前に、まず知っておくべき3つのこと」働き方のプロに教えてもらいました

子育て中、できない仕事があって申し訳なかったけれど

育休から復帰すると、独身時代に担当していたバラエティではなく、落ち着いたニュース読みやラジオを任されるようになり、まったく毛色の違う仕事になりました。でも悲観することはなく、“自分に合っているものを与えられているんだな”と捉えていましたね。育休期間は、今後のキャリアに向き合う時間にもなりました。これからどうやって会社に役立つ人間になるか、10年後20年後どんなスキルを持っている人になるかを考えていました。以前、『LISTEN』の監訳を担当した篠田真貴子さんを取材させていただいたとき、篠田さんが“ジョブレス”という言葉を使われていたんです。一度レールから降りると再びそのレールに乗るのは難しいけれど、仕事を休んで冷却期間を設け色々考えるジョブレスの期間も実は大事、とおっしゃっていて。私の場合は“育児の時間=ジョブレス期間”だったなと思うんです。ジョブレス期間を通じて自分がやりたいこと・なりたい像が整理でき、自分のゴール地点がふんわりとでも見えると、とてもラクにもなりました。

放送局の仕事は早朝深夜・土日にも及ぶので、復帰したとはいえ、断らざるを得ない仕事も多々ありました。それが申し訳なくて上司に相談したところ「今は子育てに集中して、仕事を断っていいよ。その代わり、4、50歳までに帳尻を合わせてね。それを会社とではなく、自分自身と約束してほしい」と言われたんです。その言葉で自分の働き方が明確になったし、今はとにかく子育てしようって思えた。この言葉の存在は大きかったですね。第一子出産から15年間は子育てに集中していましたが、下の子が中学に入った40歳前からはがむしゃらに働きました。それこそ人手が足りなくなる年末年始の仕事も積極的に引き受けましたし、管理職も経験しました。そのときの自分にできる最大限のことをやる。それを重ねていくと、蓋を開けたときにキャリアが積み重なっている状態に成長していると思います。

100%理想通りにはいかなくても

仕事を続ける中で、上手くいかない時期や転換期は必ず出てきます。特に子どもが生まれると、そういう状況になりやすい。けれどその都度その都度、臨機応変に柔軟に考えて、楽しんでやるしかない。そのためにも何事もきっちり決めすぎないほうがいいと私は思います。学生の頃はそれで成立したかもしれないけれど、会社があったり、家族がいたりすると、ライフスケジュールは必ずしも自分が思い描く通りにはなりません。それから、結婚や出産でキャリアが止まるとか終わるとか思わないでほしい。この相談者の方も一生懸命仕事をする中で、知らず知らずのうちにキャリアが身についていると思うんです。

TBS時代には、管理職として自分のグループを持ち、20代、30代の悩みにもたくさん触れました。私たちの仕事も他の仕事も同じですが、光が当たるときと当たらないときがあると思うんです。アナウンサーの仕事も公平には割り振れないし、タイミングもある。ですが、たとえ光が当たっていなくても自分の中で会社に貢献しているという信念があれば、絶対にいつかは光が戻ってきます。名を上げるとかいい仕事を取るとかではなく、何のために・どこに貢献するために仕事をするのかを見極める。そこを見失わなければ、いつの間にか人より抜きん出ていたり、できることが増えていたり、100%の理想形じゃないかもしれないけれど、そこそこの形にはなるはずです。

堀井 美香先生からのアドバイス

世間の当たり前に縛られない選択を!

1.足枷になっている常識は破っていい
2.〝ジョブレス〟期間もあっていい
3.会社ではなく、自分と約束しよう

教えてくれたのは…

堀井美香/1972年生まれ。フ

堀井美香/1972年生まれ。フリーアナウンサー。1995年TBSに入社。ラジオや報道番組、ナレーションなど幅広く活躍。昨年退社し、フリーに転身。2月18日には、仕事、美容などについて書き尽くした『一旦、退社。――50歳からの独立日記』(大和書房)を上梓。

今後のキャリアを考えるきっかけになった育休期間
第二子を出産し、子育てに追われていた20代後半。上司の言葉のおかげで焦らず仕事できました。

撮影/杉本大希 取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc

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最新号 202406月号

4月26日発売/
表紙モデル:山本美月

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