普段お目にかからないような超難読漢字ではなく、「常用漢字表の漢字で、なおかつ、そこに示されている訓読み」の中から、読み間違えやすい漢字をピックアップして紹介している、CLASSY.ONLINEの連載。それでは、始めます。
1.「懐く」
最初は、「園児が新しい先生にすぐ懐く」の「懐く」です。さて、何と読みますか?
正解は「なつ・く」でした。「懐」という漢字は、「カイ」の音を持ち、熟語なら「懐古」「懐疑」などをよく目にするでしょうか。同じ訓読みでも、「懐く」でなく「懐かしい」なら、簡単に読めますよね。もちろん、「なつ・かしい」です。実は、この形容詞「懐かしい」は、動詞「懐く」が形容詞化したものです。現代では、「動詞=親近感を抱いて慣れ親しむ」と「形容詞=過去のことを思い出して心が引かれる気持ちである」は、直接結びつかないかもしれませんが、形容詞「懐かしい」も、江戸時代くらいまでは、この「心ひかれる」という意味で使用されていました。
2.「担ぐ」
次は、「肩に荷物を担ぐ」の「担ぐ」です。さて、何と読みますか?
正解は「かつ・ぐ」でした。「担」という漢字は、「肩に載せて支える・自分の責任として引き受ける」という主な意味を持ち、「担架」「担当」などの熟語でわかるように、音読みは「タン」です。また、「神輿(みこし)を担ぐ」ところから、「上に立つ者として押し立てる」の意味でも使うことがあります。
ところで、「担」の訓読みは、「担う」というのも常用漢字表に示されています。こちらは、「にな・う」と読み、意味はほぼ同じですが、「担ぐに比べて、文章語的な言い方」と手元の辞書にあります。
3.「賄う」
最後は、「寄付金で経費の一部を賄う」の「賄う」です。さて、何と読みますか?
正解は「まかな・う」でした。「賄」という漢字を普段目にする機会があるとすれば、これは「賄賂(ワイロ)・贈賄(ゾウワイ)・収賄(シュウワイ)」のいずれかではないでしょうか。いずれも「賄」が「不正な贈り物」という意味を持ちます。
しかし、「賄」には「食事の世話をする」という意味もあるのをご存じでしょうか。一昔前まで、「賄い付きの学生アパート」に住む大学生が、都会にはたくさんいました。ワンルームの学生マンションで暮らす学生が主流(?)となるとともに、「賄い(賄う)」という言葉も死語となってしまうのでしょうか。少し寂しい気もします。
漢字の約9割が「形声文字」と言われます。「形声文字」とは、音を表す文字と意味を表わす文字を組み合わせて新しい文字を作ることで、たとえば「銅」という漢字なら、金属を意味する「金」と音を表わす「同」を組み合わせています。ですから、読めない漢字も、音読みであれば「音」を表わす部分を読んでおけば、正解になる確率が高いというわけです。ところが、漢字をその意味をあてた日本語の読み方で読む「訓読み」はそうはいきません。だから、「音読み」よりも「訓読み」のほうが難しいと、よく言われるのでしょう。今回紹介した漢字は、そのようなものの代表例でした。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「さらに悩ましい国語辞典」(角川書店)
・「頻出入試漢字コア2800」(桐原書店)
・「漢検ポケットでる順2級」(旺文社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)