公用文などの文書では、常用漢字に定められた2,136字以外については、漢字使用をせずに、かな書きするのがというのがひとつのルールになっていますが、一般的な文書においてはひとつの目安であり、常用漢字以外の漢字や、常用漢字表記載以外の音訓(表外音訓)が使われる場合もよくあります。
今回は、そのケースに該当する出題です。何と読むのか?また、その意味は?を考えてみてください。
1.「義捐金」
最初は「義捐金」です。「被災された地域に義捐金を届ける」のように使います。さて、何と読むでしょうか?
正解は「ギエンキン」です。「ギソンキン」とか「ギケンキン」などと誤読しやすい言葉です。実はこの言葉は、皆さんがよく目にする「義援金」と同じ意味です。「被災者救援などを目的として寄付する金銭」という意味の「義援金」は、もともとは「義捐金」と書きました。しかし、「捨てる・投げ出す」という意味を持つ「捐」は常用漢字外のため、常用漢字に含まれる同じ発音の「援」を借りて、「義援金」という表記の言葉ができあがりました。「助ける・救う」という意味の「援」には「支援」「救援」という熟語がありますから、「義援金」の表記のほうが一般的になってしまいました。ただし、「義捐金」という言葉がもとですから、これを使っても何ら間違いではありません。「(正)義のために(見返りを考えずに)お金を投げ出す」という本家のこちらも、ぜひ覚えておいてください。
2.「箝口令」
次は、「箝口令」です。「箝」が常用漢字外であるうえに、「箝口令」以外では、まずお目にかからない字ということもあり、書こうとすると迷ってしまう漢字だと思いますが、書けなくても意外と耳にする言葉なのではないでしょうか。「事故に関して社内では箝口令が敷かれた」のように使います。さて、何と読むでしょうか?
正解は「カンコウレイ」です。「箝」は、「はさむ・とざす」という意味ですから、「箝口令」とは「ある事柄について口外することを禁じること」。簡単に言えば、「口外禁止令」ということになります。なお、「緘口令」と書くこともありますが、「緘」は「(手紙などの)封をする」の意味ですから、やはり「箝口」と同じく「口をとざす」ということになります。
3.「独擅場」
最後は、「独擅場」です。例文は、「音楽の話になると彼の独擅場だ。」でどうでしょう。さて、何と読むでしょうか?あれ、「ドクダンジョウ」じゃないの、と思った方もいることでしょう。「土壇場」の連想で「ドクダンバ」と思った方もいたりして……。
正解は「ドクセンジョウ」です。漢字をよく見てください。「壇」ではなく「擅」なのです。常用漢字外の「擅」は「ほしいまま(自分だけで勝手気ままに)」という意味ですが、これを使った「独擅場」は、実は皆さんがよく目にする「独壇場(ドクダンジョウ)」のもとになった語なのです。つまり、「独擅場」の「擅」をよく似た「壇」と勘違いして誤読し、そこから「独壇場」という表記も生まれました。「誤用」も多くの人がそうなれば、やがては「許容」となっていきます。ですから、「その人だけが思いのままにふるまうことのできる場所」という意味の語として、一般化した「独壇場(ドクダンジョウ)」を使うのはもちろんありですが、本家の「独擅場」が出てきたら、ここは正しく「ドクセンジョウ」と読んでください。
では、また次回。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「なぜなに日本語もっと」(三省堂)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室
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