学校で一通り学び、一般の社会生活において使用する漢字の目安となる「常用漢字2,136字」。その範囲内であり、なおかつ、その表内に示されている音読みでありながら、読み間違いが多い熟語を3種類選びました。大学(高校)入試や漢字検定2級程度の漢字の読み書き問題でも頻出の熟語です。
1.「賜杯」
最初は、「優勝力士に賜杯が授与される」の「賜杯」です。さて、何と読みますか?
漢字の右側の部分に「易(エキ/イ)」があることから「エキハイ」「イハイ」とか、「腸」の字に似ていることから「チョウハイ」などの誤答を、これまでテストでは目にしてきました。正解は「シハイ」です。「賜」は「たまわ・る(たま・わる)」と訓読みすることができ、「立場の上の人からもらう」という意味の謙譲語です。この「賜」を使った「賜杯」は、特に「天皇や皇族が勝利者に贈る優勝杯」の意味で使います。
2.「頒布」
次は、「無料で頒布する」の「頒布」です。さて、何と読みますか?「領土」の「領」という漢字に何となく似ていることから、「リョウフ」と読み間違いやすいでしょうか。
正解は「ハンプ」です。「頒」は、常用漢字表では「ハン」の音読みだけが示されていますが、「わ・ける」と訓読みできるように「わけあたえる」の意味を持ちます。「布」の字は、本来の「ぬの」以外に「布を広げるように広く行きわたらせる」という意味を持つので、「頒布」で「広く行きわたるように配ること」の意味になります。「頒」の字を使った熟語は少なく、「頒布」以外だと「頒価(ハンカ)=非売品を頒布する際の価格」くらいでしょうか。
ちなみに、「頒布」と同じ読み方をする同音異義語に「帆布」というのがあります。トートバッグの生地などに使う厚手の布です。これ「ホフ」って読まないでくださいね。
3.「凄絶」
最後は、「凄絶な戦いが繰り広げられる」の「凄絶」です。この言葉は、「たとえようもないほど、すさまじいこと」という意味で使いますが、「ソウゼツ」と読み間違いがちです。こう読んだ人は、恐らくよく目にする「壮絶」という言葉と勘違いしているのだと思います。実は、この「壮絶(ソウゼツ)」は「きわめて勇ましいこと」という意味で、これを「凄絶」と同じ意味で使うのは誤りです。
また、漢字の右側の部分に「妻」があるので、音読み「サイ」から類推して「サイゼツ」と読んだ人もいるかもしれませんが、「妻」には「呉音(最も古く日本に伝わった音)」の「サイ」の他に、「漢音(次いで伝わった唐の時代の音)の「セイ」の音読みがあります。
ということで、正解は「セイゼツ」でした。「凄」は常用漢字表では「セイ」の音読みだけしか示されていませんが、漢字の意味から「凄(すさ)まじい」と訓読みすることができます。
では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「頻出入試漢字コア2800」(桐原書店)
・「漢検ポケットでる順2級」(旺文社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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