CLASSY.ONLINEの「漢字の読み方」に関する連載。今回は、「副詞」と呼ばれる文の成分になる言葉から出題します。「副詞」とは、「主に文の中で他の言葉の意味を詳しく説明する語」です。たとえば、「ゆっくり歩く」の「ゆっくり」や、「とても速い」の「とても」などがこれにあたります。ひらがなで表記するものが多いのですが、中には漢字をあてることのできるものがあります。いくつか紹介していきたいと思います。
読めそうで読めない漢字3つ
1.「専ら」
最初は、常用漢字の音訓表に記載されている読み方をする漢字です。例文「大学では専ら研究に打ち込む」の「専ら」は、何と読むでしょうか?
正解は「もっぱ・ら」です。「その場面で想定される他のすべての可能性を退けて、それだけに事が集中する様子」を表わします。古語に「もはら」というのがあって、発音が変化して「もっぱら」になり、これにほぼ近い意味を表わす「専」の字があてられたと考えることができます。ちなみに、この読みは、中学校で勉強するのが標準となっています。
2.「偏に」
次は、常用漢字ではあるけれど、その音訓表に記載のない漢字の読みです(覚えていますか? これを「表外音訓」と言います)。「偏」という漢字の示された音訓は「ヘン/かたよ・る」のみですが、「偏に」という副詞の形では、何と読むでしょうか? 例文を挙げると簡単に読めてしまうので、あえてノーヒントです。
正解は「ひとえ・に」です。「偏に皆様のおかげです」などという、挨拶口上でおなじみですね。「それだけがすべてで、他の要素は入らないと強調する様子」という意味で、「重なっていない」という意味の「一重(ひとえ)」に助詞の「に」が付いたのがもとです。ただし、「ひとえに」という副詞の形では、「一重に」と漢字表記するのは誤用とされていますので、注意しましょう。
3.「態と」
最後も、「偏に」と同じく、常用漢字の表外音訓です。「態」は音の「タイ」の記載しかありませんが、「態と」は何と読みますか。これだけでは難しいので、ヒントとなる例文を示します、「試合に態と負ける」。さあ、どうでしょうか?
正解は「わざ・と」です。古語にも、「意識的に(何かをする)」という意味の副詞「態と」がありましたが、「わざとやったな」というような悪いイメージの使い方が多い現代とは違って、かつては「故意に」的な意味合いはなかったようです。
ところで、言葉や文字はコミュニケーションの道具です。漢字の勉強や漢字クイズとしてはおもしろいですが、多くの人が読めないと思われる言葉は、やはりひらがなで表記すべきですね。その目安は、やはり常用漢字表だと考えます。では、今回はこの辺で。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第二版」(大修館書店)
・「古語林」(大修館書店)
・「1秒で読む漢字」(青春出版社)
・「ポケット漢検準1級問題集」(成美堂出版)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室
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