今回は「二字熟語に送りがなをつける読みにくい漢字」です。「美味」という二字熟語がありますが、「ビミ」と音読みしますね。この「美味」に送りがなを付けて「美味しい」になると、「おいしい」という読みに変化。ですが、「美」=「お」で、「味」=「い」と読むわけではありません。全体の意味を「当てて」読む、「熟字訓」の一種です。この中から、熟語段階でもそこそこ難しい音読みで、送りがなを付けて読むと、さらに難しくなるものを紹介します。では、始めましょう。
1.「彷徨う」
最初は、熟語「彷徨」です。「彷」も「徨」も常用漢字外ですが、まず、熟語で読むと正解は「ホウコウ」。「あてもなく歩き回ること」という意味です。この意味が次の問いのヒントになります。
では、この「彷徨」に送りがなを付けた例文は「仲間とはぐれてしまって、山中をあてもなく彷徨う」。さて「彷徨う」、何て読むでしょうか?
正解は、「さまよ(う)」でした。
なお、この「彷徨う」のほうが一般的ですが、送りがなが変わって「彷徨く」とあった場合は、「うろつ(く)」と読みます。同じ漢字を使いながら、「さまよう」と「うろつく」では、イメージが違うのがおもしろいですね。
2.「躊躇う」
次は、「躊躇」です。この「躊」も「躇」も常用漢字外ですが、よく使う言葉ですね。正解は、「チュウチョ」でした。「あれこれ迷ってしまって決心がつかないこと」という意味です。
では、この「躊躇」に送りがなを付けた例文は「少しも躊躇うことなく、目標に向かって進みたい」です。さて、「躊躇う」は何と読むでしょうか?
正解は、「ためら(う)」でした。
ところで、この「躊躇」の「躊」の字の「足へん」の右側の部分の「壽」、これ「寿」の旧字に当たりますが、いざ書こうとすると、書けないという人も多いことでしょう。これ、「武士の笛は1吋(インチ)」と覚えておくと書けます(「インチ」とは長さを表す単位ですが、日本でこれに当てる漢字として、国字「吋」を作りました)。ほら、「士」+「フ」+「エ」+「一」+「吋」で、「壽」ができあがりました。
3.「蔓延る」
最後は、「蔓延」です。「蔓」が常用漢字外です。まず、熟語で読むと正解は、「マンエン」でした。「つる草がのびて広がること」というのが本来の意味。「本来の」としたのは、ここから派生した、現在普通に使われる意味を書いてしまうと、次の問題の答えになってしまうからです。
では、「蔓延」に送りがなを付けた例文は「悪が蔓延る世の中を、見過ごすわけにはいかない」です。さて、「蔓延る」何て読むでしょうか?
正解は、「はびこ(る)」でした。なお、「蔓延する」なら、普通に「マンエンする」と読んでください。この「蔓」は、「つる」と訓読みする漢字。眼鏡(めがね)の耳にかける部分も「つる」です。
暑い暑いと言いながらも、「暑さ寒さも彼岸まで」。今週、9月20日が「彼岸」の入りでした。「彼岸」とは、「向こう側の岸」、人間が迷いから脱して煩悩を超越した悟りの境地で、「極楽浄土」のことです。それに対し、その反対語、つまりこの世の現実世界を指す言葉が「此岸」です。これは、漢字の読み問題の定番でもあります。そうです、「シガン」と読みます。
昼と夜の時間がほぼ同じになるこの時期は、太陽が「極楽浄土」のある真西に沈みますので、ここで祈りを捧げることは、仏教では意味のあることと考えられてきました。現在も行われている「お墓参り」もこの仏道修行の一つだったのです。(※お葬儀屋さん数社のHPで勉強させていただきました)
では、今回はこのへんで。
《参考文献》
「広辞苑 第六版」(岩波書店)/「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)/「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)/「古語林」(大修館書店)/「難読漢字辞典」(三省堂)/「難読漢字の奥義書」(草思社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)