働き方が多様化して、起業も以前より身近な選択肢に。なかでも一緒に働く人や社会、世界や地球の未来をよりよくするための事業を起ち上げた、〝ウェルビーイングな起業〟に注目が集まっています。社会問題の解決に取り組む4人の女性のストーリーをお届けします。
白木夏子さん(「HASUNA」CEO・武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部教授)
エシカルな素材にこだわってジュエリー業界に変化を
「ジュエリーブランド・HASUNAの経営と買い付け、週1回の大学の授業、講演活動、後進の起業家のサポートが今の主な仕事です。今年はウェルビーイングの視点でも注目していたオーストラリアにオパールの買い付けに行く予定」
白木夏子さん
ʼ81年鹿児島県生まれ。英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て’09年にエシカルジュエリーのブランド・HASUNAを設立。世界経済フォーラムが選ぶ日本の若手リーダーとして選出されるなど、世界的にも評価されている。
学び、挑戦し続けることで世界がよくなるための循環を生み出したい
創業当初は一人起業、一人社員。当時は自分のスキル、知識を活かしたプロボノ(無償の社会貢献)が注目されていて、約60人のサポートスタッフに起業に関わっていただきました。会社起ち上げには自己資金のほか、個人投資家の方にも出資を募りました。投資会社で働いていたので100社アタックして1、2社が投資してもらえる世界と知っていたので、ひたすら想いを伝え続けました。その中で「社会にとってエシカルという理念は必要になってくる。絶対に社会から受け入れられる」と応援していただける方が見つかりました。
HASUNAは日本的な美しさ、普遍的な美しさを追求し、50年後に見ても美しいと思えるようなデザインがテーマ。ジュエリーの仕事は人の幸せ、笑顔につながっていることが実感でき、すごくやりがいを感じやすい仕事。作ったジュエリーを喜んでくださる方が目の前にいるのはとても幸せなことだと思っています。
私は本当に仕事が好きで、ずっと仕事のことを考えてしまうタイプだったのですが、長女の誕生を機にそんなライフスタイルも変化しました。次の変化は3年前の都心から郊外への移住。しっかり睡眠を取りメンテナンスの時間も取れるようになると、新しい事業など未来のことを考えられるようになりました。
私は学びは絶対止めてはいけないと思っているのですが、2年前に次女が生まれてしばらくは自分の学びの時間がなくなってしまって、アウトプットの質が変わったことに気づきました。そこからは意識してオーディブルを使った読書や、Voicyで情報収集をするように。特に学びが大きかったのは海外の大学のサステナビリティに関するビジネスのオンライン講座。大学で教える立場である以上、世界最先端の事例を知っておきたいですし、教える時の授業の質も変わってくるので、今すごく学んでいる気がします。
社会をよくするための起業を志す学生をサポートする大学の仕事はとても楽しいですね。起業家を育てることで、彼らの商品やサービスの先にいる人の生活もよくしていくといういい循環が生まれます。日本のジュエリーの素材や職人さんなどのサポートもやりたかったことの一つ。愛媛県の真珠や九州の赤珊瑚など、日本の素材で作ったジュエリーを世界に広めるなど、ジュエリーブランドとして新しい取り組みにどんどん挑戦していきたいと考えています。
学生時代のボランティアが起業のきっかけに
素材を探しに訪れた国は60カ国以上
\ウェルビーイングな起業を目指す人へのアドバイス/
「アクションを起こせば社会は変わると実感できる」
「危ない、絶対無理、やっても意味がないと言われたからこそ、誰もやってこなかったことを私がやるべきだと確信しました。エシカル、サステナブルという言葉が浸透した今、アクションを起こせば社会が変わると実感できています」
\ウェルビーイングな仕事の魅力は?/
「自分が感じた〝違和感〟を見過ごさず行動してみて」
「変わりつつある日本のジュエリー業界を見て、自分の感じた違和感を大事にしてよかったと実感。自分が感じた違和感を大切にし、世界をよくしたいと思う起業家が一人育つことで何千、何万の人にいい影響を与えると思います」
撮影/渡邉力斗 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc