堀田茜さん&加藤登紀子さんのインテリア対談「完成形は求めない。手を入れ続け循環する家が素敵」
堀田茜が「30歳になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きにいく連載5回目!この話、ほったらかしにしなくて良かったと思える日が必ず来るはず。
今後ライフステージが変わるかもしれない30代、インテリアをどう揃えるか悩みます
今回のゲストは...加藤登紀子さん
【今月の茜のモヤモヤ案件】
コロナ禍以降、暮らしやすい部屋作りを意識するようになり、これまで以上にインテリアに注目するようになりましたが30代に入った今、ライフステージの変化の可能性を思うと、どう家具を揃えればいいか迷います。ファッションよりも難しく感じるインテリア、どう考えたらいいですか?
完成形は求めない。手を入れ続け、循環する家が素敵です。(加藤)
茜:そうか、少しずつでいいんですね。どうしても「早く部屋を整えなければ」と完成を焦ってしまって。
加藤:完成形を目指して全て揃えて、固まってしまってはつまらない。クラッシー世代なら、自分と一緒にインテリアも進化させていくといいですね。
茜:ファッションと同じですね。何もかも揃えてそこでおしまいにしてしまったら、すぐに古いファッションの人になってしまう。
加藤:そうですね。30代はライフスタイルが変化していく時期。今シングルであれば、自分の好きなものを見つめられる時間だと思います。以前デンマークを取材した際、若い頃はロイヤル・コペンハーゲンのカップ&ソーサーをセット買うことができずに、1組ずつふやして揃えていった。そしてパートナーができた時に、お互いの生活の道具や家具を持ちよって、二人の部屋をつくり始めたという話を聞いて、いいなと思いました。
茜:そのときどきで楽しんでいけばいいというのはすごく前向きになれますね。ずっとインテリアに完成を求めてしまっていたけれど、完成させなくていいとわかってホッとしました。
加藤:よかった。インテリアは服と違ってトライ&エラーのチャンスが少ないのでむずかしい、とよく言われますが、ファッションと同じように考えてみるのも一つの手です。色のバランス、素材感、そして家具などのサイズ感が自分の部屋に合っているのかというように。
茜:ファッション感覚と思えば考えやすいです。それで言うと、オシャレと便利さの両立も難しいなと思ってしまうのですが…。
加藤:両立の第一歩は収納でしょうね。収納って、体幹のようなもの。ととのうと、無駄な動きがなくなって、格段に動きやすくなり、部屋もすっきり見える。キッチンや洗面所に、必要以上のものを、まるで心配ごとの積み重ねのようにストックして、結果、奥にあるものが忘れ去られてしまうケースがありますよね。溜め込みすぎて、ものが循環しないと、そこは靄がかかったようで、オシャレとも便利とも遠ざかってしまう。ものと暮らしを循環させることは大切です。
茜:そうすると好きなものが浮かび上がってきますし、そこを軸に色々考えられますね!インテリアで人生変わりそうですね。
加藤:人生は変わりますよ。インテリアは、そこに住む方や集う方の幸せのためのものですから。変えたことによって、ご夫婦やご家族の仲がよくなった、という嬉しいお話はよく聞きます。
茜:そこまで影響があるんですか!すごいですね。
加藤:気持ちよく生活することが、余裕や優しさを生むからでしょうね。とはいえ、私も忙しさに追われて、今日は部屋と心をととのえよう、と片付けのギアを入れる日もありますね(笑)。
茜:加藤さんがインテリアで大切にしていることも伺いたいです。
加藤:いくつかありますが、一つあげるのなら素材ですね。素材は部屋の空気感を大きく左右するので、できる限り自然素材を選んでいます。たとえば麻のカーテンは凛とした表情と優しさがあって、手に触れた時も気持ちがいい。肌触りのよいベッドリネンやクッションは、時にストレスも和らげてくれます。テーブルや床の木材も、長い間を一緒に暮らすものなので、経年変化も味になり、大切にできる素材を選ぶようにしています。
茜:素材にはあまり注目したことがなかったです。カーテンって特に家の雰囲気を左右しますよね。私も麻にすればよかった…!
加藤:繰り返しになりますが、器ひとつでも、小さなスタンドひとつでも、大切に思えるものを暮らしに取り入れてみてください。きれいだな、気持ちがいいなと、心が満たされていきます。また見慣れた部屋を再発見する気分転換の技として、コードレス照明とスツールをお勧めします。照明は置く場所ひとつで、部屋の雰囲気がガラリと変わりますよ。またスツールは、キッチンや洗面所だけでなく、部屋のいろいろな場所へ置いて腰かけてみると、この部屋にこんな景色があったのか、という発見があります。今の部屋にはまだポテンシャルがある、と楽しむ工夫もぜひ試してみてください。
家の中の写真を撮る、家の中を歩いて回ってみると新たな発見があります(加藤)
茜:具体的な話もお伺いしたいのですが、〝オシャレに仕上がっているのか〞や、いらないものがないかなどを判断する方法はありますか?
加藤:これは私が取材した方から聞いたお話ですが、1ケ月に1度、家中を歩いて、今いらないもの、オシャレじゃないと思ったものを整理する。それから家の写真を撮ること。これはいい方法だと私も思いました。
茜:写真!考えたことなかったですが、自分のことを写真や鏡で見て客観視するのと同じで、インテリアにも活用できますよね。すぐにでも実践したいと思います(笑)。
加藤:ぜひ。「自分たち家族の個性をおそれずにインテリアに表現して」と言った方の言葉が心に残っています。茜さんもぜひインテリアを自由に楽しんでください。
茜:難しく考えず、もっと自由でいいんだなと楽しくなってきました。今日は帰ったらまず家の中を歩き回って写真を撮ってみます!
\茜の取材ノート/
お話を聞いている間ずっと家の中のことが頭の中にありました(笑)。インテリアは人が思う以上に人生に直結しますし、変化させることで人生がいいほうに循環していくって夢があると思いました。ファッションやスキンケアと同じように、コツコツ積み重ねていくことで整っていくものだとわかったのでおろそかにしないようにしたいですし、急いで買い集めて完成させようとせず、探す楽しさを持ちたいです。加藤さん、穏やかで上品で素敵な方でした。
インテリアデザイナー・エディター・ライター/加藤登紀子さん
デザインオフィスシュエット主宰。住宅・店舗・商業施設のインテリアコーディネートを行う。「住む人を幸せにするインテリア」をライフワークとし、国内外1,100軒以上の家を訪問・取材し続けている。著書に『心をととのえるインテリア』『心をととのえる水周りのインテリア~キッチン・洗面・バスルーム』(ともに光文社)。
堀田茜さん、加藤登紀子さんともに衣装は私物です
撮影/杉本大希 取材/野田春香 再構成/Bravoworks.Inc