今回の漢字連載は、「読めない(かもしれない)食べ物」です。それも、私たちの毎日の食生活には欠かすことのできない「野菜」に絞って紹介します。スーパーや青果店の店頭では、ひらがなやカタカナで書かれていることも多い野菜ですが、漢字ではちょっと見慣れない書き方かもしれません。では、紹介していきます。
1.「南瓜」
まずは基本問題として、漢字問題の定番「○瓜」からの出題です。「西瓜」「胡瓜」などはもちろん読めますね。そう、「すいか」「きゅうり」です。では、「南瓜」は? ヒントは、「大形の果実を野菜として食用するウリ科のつる性一年草。夏、黄色い雄花と雌花を開く」です。さて、何て読むでしょうか?
正解は「かぼちゃ」でした。16世紀にポルトガル船によってカンボジアからから渡来したことから、という語源説があります。冬至の日に食べる習慣がありますので、冬のイメージもありますが、俳句では「秋」の季語となります。なお、漢字で書く際は、「爪(つめ)」と似ていますが「瓜(うり)」ですので、お間違いのないように。
2.「独活」
次は、ちょっと難しくなります。「独活」はどうでしょう。ヒントは、「生長すると高さ2メートル以上にも達するウコギ科タラノキ属の多年草。芳香のある若い茎(くき)は食用」です。うーん、辞書的な説明は、あまりヒントになりませんね。
正解は「うど」でした。「体ばかり大きくて何の役にも立たない人」のたとえとして、「独活の大木(たいぼく)」というのがありますよ。俳句では「春」の季語ですから、これからの季節、天然物が出回り始めますが、特に天婦羅(てんぷら)は、春の代表的味覚のひとつですね。
3.「糵」
最後は、今回一番の難問です。「蘖」はどうでしょう。もちろん常用漢字にはなく、いわゆる漢検1級レベルの漢字ですから、こんな漢字は初めて見たという方もいらっしゃるはずです。ヒントは、「大豆(だいず)・小豆(あずき)・緑豆(りょくとう)などの豆類を水に浸し、日光をさえぎって発芽させたもの。野菜として食用する」です。これで、おわかりですね。
正解は「もやし」でした。漢字「蘖」は音読み「ゲツ」で、「種子から発芽」を意味します。この「もやし」を表す漢字には、別バージョンで「萌やし」がありますが、「発芽させる」ことが「萌やす」ですから、こちらの「萌やし」のほうがわかりやすいですね。
実は、先週私が見た某バラエティ番組で、この値上げのご時世にもかかわらず、相変わらずの「もやし」の価格の安さが話題になりました(そこでこの「蘖」も登場)。たしかに、一袋30円以下というのは、ありえませんよね。
また、続編をやります。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「難読漢字辞典」(三省堂)
・「できる大人の漢字語彙力1500」(リベラル文庫)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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