今回は、訓読みの漢字を紹介します。漢字の中には複数の読みを持つものがありますが、訓読みの場合は、どのような文脈で使われるかどうかはもちろんですが、送りがなで読み方が変化するものもあります。読み方が2種類あるものは、結構ありますが、3種類以上となるとぐっと少なくなります。今回は、そんな多くの訓読みを持つ漢字を集めてみました。
1.「均しい」「均す」「均える」
最初は常用漢字の「均」です。この「均」は、常用漢字表では、音読みの「キン」のみが示されます。「平均」「均一」などの熟語でおなじみですね。では、訓読みはと言えば、これが示されていません。
しかし、訓読みとは、中国から渡ってきた外国語である漢字を本来の日本語の意味で読んだ、一種の「翻訳読み」ですから、漢字の持つ意味を考えれば読むことができます。
では、「均しい」「均す」「均える」を送りがなの違いで、読み分けてください。
正解は「均(ひと)しい」「均(なら)す」「均(ととの)える」でした。
2.「萎む」「萎びる」「萎れる」
これも常用漢字の「萎」です。常用漢字「萎」の読みは、音読みの「イ」(ほぼ「萎縮」でしかお目にかかりませんね)と「萎(な)える」が示されます。「気力が萎える」などと使います。しかし、送りがなを変えると、まだ「表外読み」の訓読みがあります。「萎む」「萎びる」「萎れる」を送りがなの違いで、読み分けてください。
正解は「萎(しぼ)む」「萎(しな)びる」「萎(しお)れる」でした。
3.「拗ねる」「拗ける」「拗れる」
最後は、難しいかもしれません。常用漢字外の「拗」です。ただし、常用漢字外ではありますが、「執拗(シツヨウ)に迫る」などの熟語で、音読み「ヨウ」はわかるのではないでしょうか。では、訓読みは?先ほどと同じく、「拗ねる」「拗ける」「拗れる」を送りがなの違いで読み分けてください。
正解は、「拗(す)ねる 」「 拗(ねじ)ける 」「 拗(ねじ・こじ)れる」でした。いずれも共通するのは、「曲がったり、素直でなかったりして、事態が悪くなる」ことを表しているということです。
なお、最後の「拗(ねじ・こじ)れる」ですが、「ネクタイが拗れる」なら「ねじれる」、「風邪が拗れる」なら「こじれる」と読むべきでしょうが、「交渉が拗れる」だとどちらで読んでも(私は「こじれる」派)通用します。
いかがでしたか?漢字の構成部分から読めることも多い音読みと違い、訓読みは漢字の意味がわからないと読めません。そのぶん、難しいけれどおもしろいといえます。では、今回はこの辺で。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「もっと1秒で読む漢字」(青春出版社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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