競馬ファンにとっては、胸躍らせるレースの連続ではないでしょうか。いよいよ今週末は、その頂点となるビッグレース「日本ダービー」の開催を迎えます。その競馬にも、いわゆる専門用語があります。普段から競馬を楽しむ人には当たり前のように読める漢字であっても、なじみのない方には意外と読めない漢字です。というわけで、「競馬難読語」の特集です。
1.「東京優駿」
冒頭で、今週末のビッグレース「日本ダービー」の開催を紹介しましたが、実はこのレースの正式名称は「日本ダービー」ではなく、「東京優駿」です。さて、常用漢字外の「駿」を含むこの「東京優駿」は、何と読むでしょうか?
正解は「トウキョウユウシュン」でした。「駿」は、「はやい・すばやい・するどい・すぐれる・足の速い馬」を意味する漢字で、「シュン」以外に「スン」の音読みがあります。たとえば静岡の古い地名で「駿府」がありますね。
さて、「東京優駿」のレースは、「東京競馬場(東京都府中市)」の芝2400メートルが舞台です。本家本元はイギリス・ロンドンで行われる「ダービー」ですが、創始者の伯爵の名前を冠した「ダービー」は、他の国々でも、近代競馬発祥の国イギリスのこの名がついたレースが行われるようになりました。
日本の「ダービー=「東京優駿」は、同じ年に生まれた約7000頭の中の「足の速い優れた若馬たち」が頂点を目指します。競馬に関わるすべての人たちの目標であるビッグレース。記憶に残る素晴らしいレースになることを期待しています。
2.「斤量」
競馬のレースでは、出走馬は、決められた負担重量(騎手の体重や馬の背に装備する「鞍(くら)」などの総重量)を背負って出走しなければなりません。その負担重量のことを「斤量」と言います。さて、この「斤量」は何と読むでしょうか?この「斤」は常用漢字です。
正解は「キンリョウ」でした。現在、負担重量はキログラム単位で示されますが(「東京優駿」なら牡馬(=オス)は57キログラム・牝馬(=メス)は55キログラム)、昔は単位が尺貫法の「斤」(1斤=600グラム)だったため、今でもこのように呼ばれています。
ちなみに、食パンの単位もこの「斤」を使いますが、こちらは、明治初期に食パン一塊(かたまり)の重量を、「1斤=一山=1ポンド=約450グラム」としたことによるそうです。上記の尺貫法の一斤とパンの一斤とは違っているのが不思議ですね。
3.「埒」
競馬場のコースの内側と外側には柵が設置されていますが、これをそれぞれ「内埒」「外埒」と言います。さて、この「埒」は何と読むでしょう?
正解は「らち」でした。なお、この常用漢字外の「埒」は競馬場だけに限らず、馬場の周囲にめぐらした柵を指す言葉ですが、慣用句「埒が明かない」でも使われています。「埒が明かない」とは、「物事の決まりがつかない・はかどらない・進展しない」という意味で使いますが、やはり、その語源の一つに、古くから日本で行われていた「競馬(くらべうま)」の馬場の柵が開かなければ何も始まらない」というのがあるようです。これ、柵が「開く」なのですが、慣用句としては「明く」と書きます。
競走馬には真っすぐ走るのが苦手な馬もいて、そうした馬は内埒を頼って走ることもありますが、時にはぶつかってしまうケースもあります。しかし、素材は柔らかく、馬がぶつかると大きく「撓(たわ)む」ように作られています。
では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新字源」(角川書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「競馬語辞典」(誠文堂新光社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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