元宝塚娘役で現在は舞台やドラマなどで幅広く活躍している花乃まりあさん。同じく宝塚出身の美弥るりかさん、大先輩である剣幸さんとともに三世代の女性の物語を描く話題の作品、Musical『The Parlor』に出演。今回の舞台や共演者について、さらにパーソナルな質問にもお答えいただきました。
――今回の作品、『The Parlor』のお話がきたときのお気持ちを教えて下さい。
「お話をいただいたときは簡単な概要と出演者しか決まっていませんでしたが、演出が小林香さんということと宝塚OGの剣幸さん、美弥るりかさんと共演できるということで、是非お受けしたいと思いました」
――演出の小林香さんはどんな方か教えていただけますか?
「香さんとは一度お仕事させていただいたことがあるんですが、お稽古で弱点をたくさん指摘してくださり、乗り越えるべき試練を与えてくださいました。そして、どうすればいいか一緒にもがいてくださったのが印象に残っています。お稽古や公演はがむしゃらに過ぎましたが、しばらくたった時にその作品が自分にとってかけがえのないものになっていく感じがじわじわと広がり、自分が成長できたと感じたんです!厳しくて大変なことはわかっているけれど、絶対にやりたいと思える演出家さんです」
――宝塚OGの剣さん、美弥さんはどんな印象ですか?
「お二人が男役として活躍されていたことは存じ上げていましたが、実際にお会いするのは初めてだったのでドキドキしました。でも、お二人とも飾らないお人柄なのでとても居心地が良く、楽しくお稽古させて頂いています。先日三人並んでいたら、香さんに『本当の家族に見えるね』と言っていただいたのが嬉しかったです。剣さんは体から包容力が溢れていて、お稽古場で初めて目が合った時に泣きそうになってしまいました。一つ一つの動きや言葉に温かさを感じるんですよね。それに対して私の心がぐるぐる動かされています。美弥さんはいろんな面を持っている方です。男性的だったり女性的だったり、現代的だったり古風だったり。そんなところが今回のお役に合っているんじゃないかなって思っています。お会いするたびに新しい一面が見られるのがとても魅力的です」
――舞台で二役を演じるのは今回で二回目ですがどんな役作りをされていますか。
「以前は性格の違う双子の役だったので、演じ分けを意識しました。顔は同じだけど、声色やしゃべり方をまったく変えるといった感じです。今回は27歳くらいで亡くなったお母さんと、今生きている27歳くらいの娘を演じます。〝生き写しの二人〟や、〝どんどんお母さんに似てくる〟という設定があるので難しいですね。二人に共通するベースから作ってそこに違う部分を肉付けしていくという、前とは違うアプローチをしています」
――今回の作品はジェンダー問題もテーマになっています。
「〝男の子はブルー、女の子はピンクなのはなぜ?〟といったことがテーマの一つになっていて、実際に『私はピンクが好きでロングヘアも好き、自分の意志で選んでいます!』って思っていましたが、これって刷り込みなのかな?と初めて疑問に思いました。〝可愛らしくいる〟ことで褒められた成功体験がそう思わせているの?って。正直難しいので香さんの思いをどこまで理解できているかわかりませんが、当たり前だと思っていたことに『あれ、おかしいのかな?』って思うだけでも大事なことなんじゃないかなって思っています」
――ここからは、花乃さんご自身についてお聞きします。今年で30歳ですが、どんな30代を過ごしたいですか?
「30代って楽しいよって言ってくださる先輩がたくさんいるので、私も楽しみたいです! 20代はがむしゃらだったので、30代は今まで通り過ぎていたことを立ち止まって見つめ直したいと思っています。環境や政治のこともそうですし、何より自分自身に向き合ってインナービューティのことを見直したいです」
――ご結婚されてそろそろ1年、結婚生活はいかがですか?
「結婚ってとてもいいものだなって実感しています。とても幸せです。結婚してから世界の見え方が変わったなと感じているんですが、一番変わったのは仕事に対する考え方です。今までの私は、仕事で評価される結果を残さなければと思うあまり、臆病な部分もありました。でも、人と暮らすことで日々のさまざまなことをこなしていることが自信になったんです。家事も、仕事も、結果だけでなく頑張っている自分自身を認めることができるようになりました。」
――〝明日海りおさんのお嫁さん〟が本当にいいお嫁さんになった感じですね。元相手役の明日海さんとは連絡はとられていますか?
「コロナ禍なのでお会いするのは難しいですが、明日海さんの舞台は必ず観に行っています! 明日海さんは大活躍されているのでお忙しそうですが、ますます美しい女性になっていかれて、ご活躍を拝見できることが嬉しいな、と陰ながら応援しています。今の相手役である夫には、結婚する前に『明日海さんは私の命をなげうってでも守りたい大切な方です。それをわかっていただけますか?』と言ったくらいですから(笑)」
花乃まりあさんにとっての「ウェルビーイング」
「先ほどの話とつながりますが、私はオンとオフの切り替えがある生活が向いているようです。オフをしっかり生きると、オンも頑張れるということに気が付きました。オフで自分の食べる物や暮らす空間をないがしろにしないことで、オンも充実するんです。なので、お稽古に行く前は晩御飯の下準備もして家をきっちりと片づけてから向かうようにしています。そうするとお仕事に集中できるんです。インスタに料理の写真を載せるのはひけらかしみたい?とも思いましたが、写真をアップした日は本当に頑張って作ったんだからそれでいい!と思って載せています(笑)」
花乃まりあ
‘10年宝塚歌劇団に96期として入団。可憐な容姿と演技力で入団当初から注目される。’14年花組トップ娘役に就任し、明日海りおの相手役となる。’17年退団。卒業後は舞台だけでなく「ZIP!」のリポーターを務めるなど活動の場を広げている。’21年結婚を発表。
Musical『The Parlor』
気鋭の演出家小林香によるオリジナルミュージカル作品。三世代の女性により守り継がれてきたパーラーを舞台に〝なりたい自分を求め〟集う人々の物語。宝塚OGの美弥るりかが主演を務め、剣幸、花乃まりあが共演。音楽はアメリカを拠点に活躍するアレクサンダー・セージ・オーエンが担当。4月29日(金)~5月8日(火)東京公演(よみうり大手町ホール)5月14日(土)、15日(日)兵庫公演(兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール)
撮影/平井敬治 ヘアメーク/miura(JOUER INTERNATIONAL) スタイリング/津野真吾(impiger) 取材/よしだなお 編集/中畑有理(CLASSY.編集室)
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