今回のCLASSY.ONLINEの漢字記事では、久しぶりに読み間違いやすい「三字熟語」の出題です。いずれも漢数字が含まれます。使用されている漢字自体は、中学校までで習う常用漢字2,136字の範囲内ですが、読み方はひと工夫必要です。それでは、紹介していきます。
1.「八百万」
最初は「八百万の神」などと使われる「八百万」です。もちろん、そのまま普通に「ハッピャクマン」と読んで、具体的な数値を表わすのに使いますが、神道で「多くの神々」のことを総称する時に使うことから転じて、「きわめて数が多いこと」という意味にも使います。その場合は、さて、何と読むでしょうか?
正解は「やおよろず」でした。なお、「八百(やお)」だけでも、「数多くの」の意味を持ちます。「野菜類などの食物を数多くとりそろえて商いをする」というのがその名の由来の一つと考えられる「八百屋(やおや)」の読みは、分かりますよね。こちらは常用漢字表の「付表(いわゆる当て字を示したもの)」にも掲載されています。
また、「万」(旧字は「萬」)を「よろず」と表外訓(常用漢字表にない訓読み)で読むのは、多くの地名などにも残っています。
2.「三行半」
次は、「夫から三行半を突きつけられた」などと使われる(使っていた?)、「三行半」です。「江戸時代、簡略に離縁理由を書いた」ことから、「離縁状」のことを表わした言葉でしたが、さて、何と読むでしょうか?
正解は「みくだりはん」でした。「行」を「くだり」と読むのがポイントでした。常用漢字表での「行」の読みは、音の「コウ・ギョウ」と訓の「いく・ゆく・おこなう」ですが、表外訓として「くだり」という読みがあることを知っていましたか?「文章の縦の行(ギョウ)」という一般的な意味ではなく、「文章の特定の部分」を意味する使い方があり、たとえば「小説の主人公が起業する行(くだり)がおもしろい」というふうに使います。覚えておきましょう。
3.「四方山」
最後は「友人と四方山話で時を過ごした」などと使われる「四方山」です。さて、何と読むでしょうか?「シホウサン」なんて山が実際にありそうですが、この場合はこの読みではありません。
正解は「よもやま」でした。「四方八方(シホウハッポウ)」という四字熟語を聞いたことがあるでしょう。もともと、「四方」とは「東・西・南・北」を、「八方」とは「北東・北西・南東・南西」を表わしていますが、ここから「あちらこちら・あらゆる方面」という意味で使うようになりました。この言葉は「四方八方(よもやも)」とも読めます。問題の「四方山(よもやま)」は、この言葉が変化して、さらに別の漢字が当てられたという説があります。
したがって、例文で示した「四方山話」であれば、「さまざまな話題の話・世間話」という意味で使われるわけです。
では、また次回。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)