おうち時間も増えた昨今、映画デートを自宅で楽しむことが増えましたよね。【大人女子のための映画塾】では、シチュエーションによっては観るのをあまりお勧めしない名作を、映画ソムリエであるライターがナビゲートします。どの作品もAmazonで視聴可能です。
「カップルで一緒に観ないほうがいい映画」5選【Amazon作品】
【1.ブルーバレンタイン】
後味の悪さでは、“もはや鬼畜ぶりピカイチ”の傑作
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なぜタイトルにバレンタインなんて入っているのでしょうか?ひと組のカップルが運命的に出会い、ラブラブ絶頂期を迎え結婚するまでと、彼らの冷え切った現在をミルフィーユ構造で交互に描くという、“もはや鬼畜ぶりピカイチ”の傑作です。結婚7年目の夫婦の関係は冷え切っていて、とにかく言い争いが多く、ほとんどのシーンで喧嘩。興醒めで目を覆いたくなります。以前、某映画サイトの後味の悪い映画特集に選出されていますし、事件は一切起きないのにトラウマ映画とも名高いです。
しかしながら、とてつもなく勉強になる学びが隠れています。「男は女に変わらないことを願い、結婚する。女は男に変わって欲しいと願って結婚する」この映画から伝わるのは、相入れない男女の性質。女は現実的で男性の方がロマンチストなんですよね。これを充分に理解しておくことで、大事なものを見失わずに済むかもしれません。名作なので、お1人でどうぞ。
【2.愛アムール】
家族にいつか起こる介護の問題だからこそリアルで重い気持ちに
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愛する人の死を見届けることは終わりなのでしょうか?それとも、ひとつの愛の完成系なのでしょうか?やはり、こちらも重い傑作です。カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞した、フランスの老夫婦が介護や病と向き合います。愛、アムール。どこぞやの歌謡曲にありそうなタイトルの作品ですが、本作は気軽に観れるものではなく、観るには覚悟を要します。誰にも訪れる老いや死がテーマでこの問題はいずれ、家族に、そして自分にも起こるだからこそ、リアルに想像を巡らせるだけで重い気持ちに。しかも介護の描写がうんざりするほどリアル。パリのアパルトマンが舞台ですが、キュートな老夫婦のキッチュなライフスタイルのお話ではありません。
「衝撃のラスト」とは、ミステリーやサスペンス映画におなじみのうたい文句ですが、本作も該当します。かつては凛としていた女性だったのに、現在は完全に介護を受ける女性となり我が子を誰かもわからなくなっていく妻アンヌを演じたエマニュエル・リヴァは、史上最年長でアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされました。
【3.レボリューショナリーロード】
結婚生活の暗部をかき集めた、デート映画に選んだカップルを奈落の底に突き落とす
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公開時、タイタニックのケイト・ウィンスレットとレオナルド・ディカプリオの11年ぶり再共演という安心感から、デートムービーに選んでしまったアベックたちを、奈落の底に突き落としたことで有名なレボリューショナリーロード。現実と理想の狭間でもがくカップルの運命を、アメリカンドリームの終わりと共に綴るラブ・ストーリー。いわば、結婚生活の暗部をかき集めたような作品なので将来を考えているカップルを見るとあまりにも重いです。
特におすすめしないのは、自分は一般人とは違った特別な存在だ、と考えているどことなくアーティスティックはカップル。「俺たちは普通の人たちとは違うんだ」と思い込んでいる人間の、浅はかさと不気味さが浮き彫りにされていて、そんな人間自体が俗物のように目に写ります。でも男女が長続きするには、ある程度の割り切りが必要だと学べる側面も。
監督のサム・メンデスは『アメリカン・ビューティー』という映画でオスカーを受賞していますが、こちらの作品も後味は要注意!
【4.ミッドサマー】
2人の好みが「メルヘンな世界にエログロ」がOKならば超おすすめ!
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どこまでも絵画的で美しくメルヘンな風景の続く北欧の村にカップルを含む友人たちメンバーで訪れた学生たち。そこには色とりどりの花が咲き誇り、明るく歌い踊る村人たちはとても親切で!まるで、ここは天国?と感激するやいなや、実はそこは地獄!人が…残酷な姿で死んでいきます。しかも、悪趣味な飾られ方をしていたり。R-15指定ですが、個人的にはR-18指定の方が良いと思います…。
この映画のシーズンは夏至(昼が最も長い季節)。なので常に画面が明るいのですが、よくあるホラー映画と言えば、真っ暗な場所が多いですよね。ですが本作は「明るく、よく見えてしまうほうが怖い」という新概念を植えつけてくれました。よく見える方が怖い…とは、すっぴんの肌とどこか似てた概念でよく分かります…。メルヘン世界にエログロという合わせ技にぎょっとしつつも「これを好き!」と声を大にして男女共に言えるのであれば、最高の愛称のカップルかもしれません。勇気があれば、この映画をリトマス試験紙のように使ってみるのもありかも!?
【5.愛の渦】
カップルにはちょっと強烈!気まずさを与える「女子会用映画」
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午前0時~5時。参加料金は男:20,000円、女:1,000円、カップル5,000円。都会の一室で営まれる乱交パーティに参加する男女10人。この一夜限りのために集まった初対面の男女は、相手を変えながら、やり方を変えながら、体を重ねることで本能が浮き彫りになっていきます。主演の池松さんも門脇さんもタオル1枚か裸かという非日常な空間の中で約2週間の撮影に臨んだそう。役者魂に拍手!
ほぼ濡れ場で成り立った稀有な作品で確かにエロいけれど、どんな人間にも必ず備わっている”本音と建前”が垣間みえていつの間にか目が離せなくなります!裸の男女のやりとりが終始続くので、見ている方まで独特な緊張感を味わえるのが新鮮な作品ですが、やっぱりデート映画では気まずいです。
しかしこういうタイプの作品は屈折した形で話題になりがちですが、人間の欲望でや感情のうごめきをうまく切り取っていて、濡れ場よりも会話劇に本質があると理解してから、とにかく見応えのある作品だと気付けました。カップルには強烈なので女子会映画として、推したい所存です。
「男女で一緒に観ないほうがいい映画」4選【Amazon作品】
【1.ゴーン・ガール】
女性恐怖症になる男性続出!?プロポーズ待ちの女性はやめたほうが…
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『セブン』『ファイトクラブ』の鬼才デビッド・フィンチャー監督が描いた、いびつな夫婦の愛の形にゾクリとします。結婚5年記念日に、妻が血の痕跡を残して失踪します。果たして、この事件のその真相は?
ネタバレはしないように書きますが、体感温度が3度ほど下がるラストに、女性恐怖症になる男性が続出しました。いつかのプロポーズを期待している彼とは、観ないほうがまず無難でしょう。映画好きから敬愛され、新作を常に待ち望みされているD.フィンチャー作品で二転三転なストーリー、最後までどこに落ち着くかわからない脚本はとても秀逸なものなので、楽しめることは間違いないです。しかし、あえてこれを一緒に観なくてもよいかと。
裏テーマで「結婚生活の長続きにおいて、何が一番大事なことか」が描かれており、そのあたりが興味深いです。大事なのは愛ではなく、日々「理想の夫、妻」としての役割を演じきるというモチベーションの重要性。なんとも重く、でも本質を捉えた強烈なメッセージとして受けとれます。また、男性に対して「従順な良いコで3日で忘れ去られるような女より、どれだけ怖がられても生涯忘れられない女になるのも、ある意味勝利なのでは?」と、自分の中に潜む危険な思想と対峙してしまうのも本作。夫婦は「個」のユニットであり、小さな「チーム」なんだと、震えながらも学びとなった作品です。
【2.ニンフォマニアック】
性の話が多いゆえに、彼にあらぬ疑いをかけられぬよう
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自らを色情狂(ニンフォマニアック)と認め、常に満たされず性にむきだしで不特定多数の相手と関係を持ってきた女性の「性の目覚めから50歳まで」を2部構成(なのでvol.2もあります…)で描いた衝撃作。言うまでも無いですが、セックスシーンに溢れすぎで、物議を醸しました。物語の進行も独特で、色情狂女子と年配独身男子の「具体的すぎる性に関する会話」により、露わになっていく彼女の壮絶な人生。いや、人性。「私が他の人と1つだけ違うことは、夕日に多くを求めすぎたことかも」と一周回ってどこか哲学的に見えてくる会話で展開される、性の話。知的かつ痴的…。エロいだけでは終わらない新感覚です。さすが、なにかと闇を抱えがちな性格が作風に顕著に現れる名監督の作品。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー氏による映画です。
『ニンフォマニアック』は2009年の『アンチクライスト』、2011年『メランコリア』に続くトリアー監督の「鬱三部作」の最終作と呼ばれる作品ですが、色情狂という突き抜けたテーマでやりきってくれる作品なのでどこか面白おかしく、山崎ナオコーラさんには失礼ですが「人のセックスを笑うな」とは、この映画においては言えなくなりました。大事な彼に「お前もまさか色情狂では?」と、一瞬でも疑われぬように、一緒に観ない方がよさそうでしょう。
【3.世界一キライなあなたに】
ラブロマンスのようなDVDジャケットと裏腹に「尊厳死」「安楽死」がテーマ
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この映画、数千本の映画に出会ってきた映画ソムリエとしても大好きな作品ですが涙の塩梅をコントロールできないほど泣いてしまうので、デートには私はおすすめできません…。世界40カ国以上で翻訳されベストセラーとなった恋愛小説、『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』が原作です。安心感のある恋愛映画と思いきや、テーマは「尊厳死」「安楽死」。順風満帆の人生を送っていた男性が交通事故に遭い、ある日から脊椎損傷により首より下が動かなくなってしまい、その介護を任された女性との恋物語を描いております。男女が出逢い引かれ合い、恋に落ちてゆくラブストーリーではあるのですが…鑑賞したあとの会話がどうしても重くなりがち。
「何がなんでも生きるべき」なのか「死は自由に選択できるべき」なのか。ハードル高めのテーマについて討論すること不可避でしょう。彼の価値観を深く知りたいときには良いかもですが、DVDジャケット写真のようなテンションのラブロマンスを期待して観るのは危険です。劇中に出てくるスイスの自殺幇助を支援するディグニタスという団体は、実在しており、未だ正解の出ていないテーマに対して丁寧に繊細に映画が作られています。作品に触れて自分はどう考えているか、自分の胸に問いただすことでいつもと違った時間を味わえるはずなので、1人の夜に是非。
【4.恋の渦】
男女の「よくない」面が浮き彫りになってしまうかも
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制作費10万円。製作日数わずか4日間のインディーズ映画にも関わらず満席や立ち見が続出し脅威のロングランへ。公開当時に話題になった『恋の渦』は、第1作目『愛の渦』に続く、渦シリーズの第二弾です。恋の本質を描く天才『モテキ』の大根仁監督がメガホンを取りました。とある宅飲み合コンに集まった男女9人。正直、ドキュンと呼ばれる面々たちです。そこから始まる恋模様ですが、「男性の言う可愛い」と「女性の言う可愛い」の概念の差異があったり、男と女の欲望渦巻く関係性の中に起きがちなあるあるがとにかくリアルで惹き込まれます。バーナーでエイヒレを炙っている時の感覚に近いような…ジワジワと出来上がっていく、ゲスな人物像。恋愛における既視感ある会話が生々しくて、映画というより、部屋で合コンしてる様子を覗き見しているくらいの感覚です。
ひとりの寂しい夜に観ると、なんだかその人間臭さに妙にホッとするかもしれません。男女それぞれのよろしくない面が浮き彫りになっていくのでデートには不向きですが、登場人物たちが卑しすぎて、人間が猿に見えはじめてくるという新感覚を堪能させてくれる唯一無二の映画です。ひとり時間には推し!
「カップルで観ると、結婚が遅くなってしまう映画」4選
【1. あと1センチの恋】
男性は恋を上書き保存できない!カレが初恋の相手を鮮明に思い出してしまうかも
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大好物の映画ですが、社会人以降に出会った恋人と観るのはおそらく適さないであろう、名作恋愛映画です。幼なじみのロージーとアレックスが主人公。この2人はお互い想いあっていた高校生の頃からなんと12年、くっついては離れを繰り返します。結婚、進学、就職、出産…。「好き」というたった一言が言えないせいで、人生の重大トピックをまるごとパーフェクトにすれ違いを繰り返し、現実だったら地獄といっても過言ではない状態に陥り、長すぎる冬を過ごします。
さて、長期間にフォーカスしたすれ違いモノを楽しめるのは、基本的には女性です。なぜなら女性は、忘れることで前に進める生き物。新しい恋愛対象を基本的には1番好きな人と思うことができるからです。忘却という強い本能が携わっているわけですね。その点、男性は昔の彼女を個体個体で「名前をつけて保存」する生き物。なので、おのずと長期の恋愛相手や初恋の相手をどっぷり思いだしがちな作品なんです、この映画。筆者の友人の映画ライターも「初恋の佐藤さん(仮名)に会いたい」と試写会のあと、ぼやいていました。この映画は“初恋の魅力”が溢れすぎて尊いレベルです。
体内の胸キュンをすべて絞り取られるレベルなので、女性が観ることで恋愛脳を確実に刺激してくれるので1人の夜に是非とも。そして『あと1センチの恋』このタイトルも秀逸で、恋愛に必要なのって物理的な距離では改めてないんですよね…。ロージー役は、今や世界の人気者『エミリー、パリへ行く』のリリー・コリンズです。整った顔にチャーミングさが同居したラブリーさはこの頃から、光っています。
【2. テイク・ディス・ワルツ】
カレが女性不信になりかねない!観賞後の感想に困る映画
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結婚5年目の夫婦、妻は旅先で出会った魅惑の青年に心惹かれてしまいます。しかし帰宅後、彼が自宅の向かいに住んでいると知り、禁断の関係へと踏み出してしまいまいます。いわゆる不倫ものですが、軸となっているのは夫婦の倦怠といったところでしょう。奥さんの方が青年と火遊びするという構図で、結婚生活における倦怠感にメスを入れています。
カップルでの鑑賞後、映画の感想を言い合うのが一般的だと思いますが。しかしこの作品の場合「女ってみんなこうなの?」「君だったらどうなの?」と、聞かれてしまう可能性が高く、結婚への道が遠のくことが予想されます。
この映画といえば…なセリフで「人生なんてずっと物足りないもの」というフレーズがあるのですが、作品の世界観全体がこの味つけをされているため、なんとなく自分の現実すらも物足りなく思えてしまいます…。なので、楽しいデートには向きません
恋愛感情は必ずいつの日か、家族愛に変化するもの。それを受け止められず、いつも恋愛の初期の旨味しか求めないのならば、誰と一緒にいても幸せにはなれないと痛感させられる学び深き1本。ちなみに、以前も紹介した夫婦の最後の1日を描いた『ブルー・バレンタイン』のミシェル・ウィリアムズ主演作です。
【3. それでも恋するバルセロナ】
恋愛の面倒さが凝縮&人間関係が複雑すぎて男性は置いてけぼり!?
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仕事、趣味、男友達…。男性にとって、恋愛が1番重要なコンテンツではないかもしれません。単純にマルチタスクではないので、1つのことにしか集中できない傾向が多いのが男性脳。そんなときに、恋愛の面倒くささで出汁をとって煮詰めたような映画を観てしまったら、恋愛自体に胃もたれする可能性があるでしょう。
恋愛体質な自由美女、婚約中の慎重派女子というアメリカ女子2人がスペインに旅行へ、そこでラテン系の魅力溢れる男性が登場しますが、そこに気性の激しすぎる元妻まであらわれます。こんな4人がバルセロナで、恋のひと悶着。三角関係でもややこしいのに、なんと四角関係です。男1人VS美女3人。一見、ハーレムのような映画で彼が喜びそうですが、全員アクが強い。ひと夏とは思えないほど濃密でバルセロナに吹く風というのは、恋愛脳を刺激する薬物でも混じってるのではないか…?と心配になるほどです。
しかし、恋愛って不思議。当事者たちの状況が混乱すればするほど、観ている女性は面白くなってくるんですよね。でも男性は、ちょっと引いてしまいそう。本作の監督は、恋のいざこざ、ドタバタ、こじらせぶりを描いたらおしゃれで天下一品の巨匠ウディ・アレン。映画ソムリエ的に言うと、救いなのはウディ・アレン特有のナレーション。ドロドロなお話もナレーション説明ですっきり(笑)、96分で楽しめます。そして、74歳でこの作品を世に送り出したウディ・アレン監督にもあっぱれです。地獄のように暑い夏が待ち受けていますが、情緒あふれるバルセロナの風景は彼らの恋模様を癒やすようで、旅行の前に観るとモチベーションをあげてくれる予感も♪
【4. her/世界でひとつの彼女】
もはや結婚しなくて、AIでもよいのではと思われそう
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近未来のLAを舞台に実態のない存在である最新の人工知能型OSに恋をしてしまう男を描いた物語。寂しい夜に何かと「Hey!Siri!」と話しかけがちな方はより作品に没入できる予感です。大問題なのは、この人工知能OSちゃんのボイスをスカーレット・ヨハンソンが担当しているところ。セクシーなハスキーボイスが全世界で称賛を浴びているあの“スカヨハ”、彼女です。OSだと忘れてしまうほど完璧な受け答えの進化したコミュニケーションなうえに、スカヨハボイスで「もはや結婚しなくてよいのでは?」と思うくらい、男性を翻弄します。ブレスや間の取り方、囁きと、聞き上手ぶりに圧倒されます。正直、実態がなかろうが惚れても仕方ないレベルです。
同棲していない限り、なかなか恋人と会えなくなる可能性のあるこの時代。カレとの電話シチュエーションには大変勉強になりそうなので、「声のお作法映画」として、教材映画とすることを個人的にはおすすめします。真剣に見れば見るほど奥深い作品で、「なぜ私たちは、苦労しながらも他人を求めるのか」「どうして、人間は他者が必要なのか」という答えの難しい問いを考えるきっかけになります。自分が誰かと過ごす意義のようなものと対峙できる名作ですので、クレバーな彼と鑑賞すれば、逆にお互いを求め合う結果になる予感も。
「日曜の夜に見てはいけない映画」4選【理由はいろいろなんですが…】
【1. 食べて、祈って、恋をして】
仕事を休みたくなる、女が直面するあらゆること探究の書
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イタリアやインド、バリ島でロケを行った美しい風景も見どころのジュリア・ロバーツ主演作。NYでジャーナリストとして活躍する女性が、離婚と失恋を経た後、すべてを捨てて自己探求の旅に出ます。イタリアでは食の快楽を追求し、インドでは精神力を高めるべくヨガと瞑想に浸り、最終的に訪れたインドネシアのバリ島では、恋に落ちます。タイトルそのまま、贅の極み…。コロナの影響で旅行になかなか行けない現状を踏まえますと、旅行気分を味わえて素晴らしいのですが、あまりにも楽しく暮らしすぎていて、ミラー効果なのか、こちらとしても完全に仕事を休みたくなります。特に休みたい欲に拍車をかけるのはイタリアパート、ここでは”何もしない歓び”を学ぶので、月曜日直前にはやはり不向きです。
ちなみに最初に観たときはジュリア・ロバーツ演じる主人公が、一見自己中心に見えて戸惑いましたが、2度めに鑑賞した際は「本当の自分がわからなくなってこの女性、混乱しているのね」と女子ならではの共感ポイントに出くわします。密かに「名言映画」としても映画好きには有名で「傷ついた心を持っていても大丈夫。何かのために努力した証拠だから」や「誰のために、このドレスを買うの?」という問いに対して「自分のために買うんだよ」と答えるなど、アラサー女子の処方箋となる名言にも出くわします。小説『食べて、祈って、恋をして』のサブタイトルは「女が直面するあらゆること探究の書」とあるだけに、一度は鑑賞しておいて損はない名作でしょう。
【2. アデライン、100年の恋】
ロマンチックな気持ちになり、しばらくその余韻に閉じこもっていたくなる
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『ゴシップガール』でおなじみのブレイク・ライブリー主演。とある事故をきっかけに歳をとらなくなった、1907年生まれで100年以上孤独に現代まで生きている女性が主人公のアデライン。全く見た目の変わらない彼女は時にFBIに追われたりするため、関わる人に迷惑をかけたくないという願いから名前を変え、都度人生をリセットしながら生きています。そのため恋愛のチャンスは何度か訪れたものの、深い関係になることはできず、最後にはいつも姿をくらませてしまっていたんですね…。なんとも孤独…。でも、そんな彼女にも運命の出会いが、訪れます。
さて、この作品の見所はブレイク・ライブリーの現実離れした美しさ。個人的には彼女の美しさではNo. 1の作品です!しかも、彼女にとって出産後の復帰作。何といっても100年生きている設定を活かした時代ごとのファッションは髪型、メイクも華やかです。グッチやディオールのコートの着こなしといったクラシカルなファッションから普段着にドレスまで。『ムーラン・ルージュ』でアカデミー賞を受賞した衣装デザイナーの、アンガス・ストラシーが担当。そして“100年以上生きている女性の久しぶりの恋愛”というだけあって、相手男性オランダ人俳優・ミキール・ハースマンの魅力の説得力。セクシーな肉体をみせてくれたり、包容力抜群で現代を生きる王子の生き写しのようです。運命の恋✕ブレイク・ライブリーの美貌✕めくるめくファッション!
とにかくうっとりして、ロマンチックな気持ちになり、しばらくその余韻に閉じこもっていたくなるので、仕事前に観たくない作品です。「老い」をテーマにしたことで気付ける学びにも奥行きがあり、アンチエイジングに躍起になりすぎている人は、若さを維持するよりも年齢を重ねることの魅力に触れられるのもポイントです。
【3. 冷たい熱帯魚】
負の感情がミキサーにかけられ、とにかく観るだけで疲れまくる
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漬物石を10個背負って1キロほど歩いた直後を想像してみてください。実在するいくつかの猟奇的な殺人事件に着想を得た、人間の狂気と愛を描いたサスペンス『冷たい熱帯魚』の鑑賞後は、そんな感覚に襲われてしまいます。
とにかくグロいし、重いし、エロいし、怖いし、残酷。不愉快なハラスメント描写も…。負の感情がミキサーにかけられ「疲労困憊作用」をこれでもかと促します。私の場合、鑑賞した翌日の疲れは小学生の運動会後に匹敵するくらいでした。全力で鑑賞した感があります。しかし、同時にそれだけ引力を持つ作品で、単純に視覚的なキツさだけでなく、人間の精神の闇や主従関係の生まれてしまう心理構造まで掘り下げて描いていて、とにかく圧倒されるのがこの映画の凄さ。役者たちの演技も光っています。
念のため、はっきりいいますが人体の解体シーンがグロすぎますし、笑顔でそれをやってのけるキャラクターは…。「●●は死んだんじゃねぇんだ。ボデーが透明になっただけなんだよ」「ボデー(ボディではなくボデー…)が透明になっちまえば 何も分かりゃしねぇよ!!」と言いながら淡々と解体。はい、どう考えてもイヤすぎませんか…。覚悟してのご鑑賞を!
【4. 世界の果てまでヒャッハー!】
秘境を旅している感覚で開放的に!明日から真面目に働けなくなる
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はじめてこれを観た時は衝撃、いや笑撃しかありませんでした。フランスで8週連続ナンバーワンという驚異の大ヒットを記録したサバイバル・コメディ。正直うまくこの作品の説明をできません。フランス版ドリフ、ハングオーバーという表現が1番近いでしょうか?
恋人にプロポーズするために友人たちと、ブラジルにある高級リゾート地にバカンスにやってきた男。しかし恋人の祖母の世話を押しつけられ、気付けば大騒動。行方不明になりいつの間にやらジャングルの秘境ツアーに繰り出してしまいます(どうしてそうなった…)。消えた主人公たちに何が起こったのか、残されたビデオカメラの映像で突き止めていくという、一見ホラー映画形式のようなドキドキの設定でストーリーが展開しますが、これが意外にもコメディと相性よし。しかし、邦題のヒャッハーというニュアンスからも伝わるように、鑑賞してしまうとひどく偏差値の下がってしまう映画でもあります。
タイトル通り世界の果て、すなわち秘境を旅している感覚にもなれますので開放的になって、土日をストレスゼロで過ごしたい、そんな金曜日夜向けの映画として強く推したいです。珍道中をともにするおばあちゃんの豪快カーアクションも爽快です。大爆笑ですのでコメディ映画を求めている彼とのデートにもおすすめです!
「初めてのデートで、観てはいけない映画」4選【理由はいろいろですが…】
【1. クワイエット・プレイス】
鑑賞後、カップルで無言になる可能性大
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実生活でも夫婦であるエミリー・ブラントとジョン・クラシンスキー主演、さらにクラシンスキーが監督・脚本を手掛けたサスペンスホラーです。全米では「IT」を超えるスマッシュヒットとなりました。音に反応して人間を襲ってくる「何か」によって人類滅亡の危機に瀕した世界で、音を立てずに生き残った一つの家族の壮絶な戦いを描きます。ただのホラーではなく家族の絆が描かれていて感動もする映画ですが、「音を出したら殺される世界」の設定なので、緊張感と没入感が凄まじい。作品にのめり込むほど、鑑賞しているこちらも無音状態になり、観賞後も独特の音を出さない設定の疲れを引きずり、まったく喋る気がなくなります。吊り橋効果は十分に得られる映画ですので、相手のことを知ってからデートで見るのが個人的にはオススメです。90分という試聴時間も見やすいですし、本物の夫婦共演ということで、命がけで助け合う姿はドキュメンタリーではありませんが、違った萌えポイントを味わえる作品です。
【2. ミッドサマー】
別れたいカップルは、ぜひ一緒に鑑賞を
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今ハリウッドが”1番組みたい監督”と言っても過言ではないアリアスター監督によるスウェーデンの夏至のお祭りを舞台にした画面明るめのホラーです。スウェーデンの奥地の楽園のように美しくも謎めいたコミューン。カラフルな花冠、白いリネンのワンピース、花や木の実にあふれた一見するとなごやかな村で行われる100年に1度のお祭りミッドサマーに参加することになったアメリカ人留学生たちの恐怖に陥っていく様を描き、とにかく終盤はエログロを極めております。 「『この2人は別れたほうがいい』というカップルが周囲にいたら、ぜひおすすめしてください」と監督も自らコメントし、自身の失恋の体験を昇華させるために作ったと言っても過言ではない作品なので当然初デートには向きません。とあるシーンで業火が登場しますが、恋人との思い出を燃やしたとしか思えないメタファーに。監督に一体何があったのでしょうか…。慰めてあげたくなります…。
この映画に登場するアメリカ人カップルは交際歴4年ですが、男性の気持ちが彼女から離れているので2人の間に性的情熱は消えていて、男性サイドはスウェーデン女との“秘めたる交流”を楽しみにしています。そんな彼氏に対して彼女が下す裁きもお楽しみください。浮気された経験のある女性はおそらくスカッとします…。ムカつく男性と別れたばかりのときは恋の傷を癒やす映画になりますし、別れを自ら切り出しにくい女子にとってもサヨナラの特効薬になるかもしれません。
【3.『お嬢さん』】
変態描写のオンパレード!気まずい空気間違いなし
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1939年日本統治下の韓国を舞台に、お嬢さんの遺産を狙う、とある詐欺師が計画した富豪家族の財産強奪の行く末を追いかける、エロティックサスペンス映画です。韓国、日本共に成人映画指定ですが、エロいだけじゃなく、とにかく仕掛けのある脚本は映画に騙される快感を味わえる傑作。登場する大豪邸はディテールにこだわっていて、その豪邸を素晴らしいカメラワークで撮影されていて圧巻の映像美。こちらも迷い込んだ気分になれて没入感もGOOD!そんな良作ですが、残念ながら初映画デートで異性との鑑賞は向いていません。その理由は一言で言いますが、変態指数100%といっても過言ではないほどのド変態描写で構成されている映画だからです。お嬢様と侍女による超濃厚なラブシーン、官能小説朗読会、春画、ムチ…。とくに男性のお客様を集めて、お嬢様による“官能小説の朗読会”が開催されるシーンがありますが、幼顔女優キム・ミニが決して完璧とは言えない辿々しい発音で読み上げるエロ小説は未体験の生々しさの極みです。しかもこのシーンは長丁場で、妙な雰囲気になりかねません。「私は何を見させられているんだ…」と冷や汗が流れます。また春画のシーンもわざわざ虫眼鏡で秘部をアップにしたり、どう反応したら良いかの戸惑いの演出が続きますのでご注意を。面白い映画なのは間違いないので1人の夜に、ぜひ。
【4. ザ・ハント】
グロめの描写は、カップルよりおひとりさまに向いています
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米国では内容の過激さや社会風刺要素が強すぎると、ドナルド・トランプがTwitterで猛批判。一時公開中止にもなった問題作です。目が覚めたら猿ぐつわをはめられた状態で人間狩りゲームに参加させられる獲物12人の運命はいかに…。富裕層と言える上流階級と庶民階級の溝を“金持ちが人間狩りを楽しむ社会”という構図で描いた人間狩りアクションで、流行りのデスゲーム系ジャンル『イカゲーム』同様の勝ち組・負け組的な要素が加わり、さらに嫌な話になりました。美男美女が登場して「可愛い!カッコいい!素敵な主人公カップル!」と心を踊っていると数分後には即死亡したり…予測不能の展開が続きます。死に方もグロめなので、初デートには向きません。誰が主人公なのか、ついでに誰が味方なのかもわかりませんが、始まってからは怒涛。
89分と短い時間で鑑賞できますし、精神的にも肉体的にも強い女が登場するので、仕事を頑張りたい日の前夜にもってこいの映画です。残酷描写の続く作品ですが親切な点もあり、デスゲーム系の作品でありがちなのは”運営者サイドの目論見”がわかりにくい作品が多かったりしますが、本作はストレートな現代的なメッセージがとてもわかりやすいです。ネットの悪口やSNSのトラブルの散乱するこの時代にピリリと効くメッセージにしびれます。
シチュエーションによっては観るのをあまりお勧めしない名作、いかがでしたか?参考にしてもらえたら嬉しいです。
この記事を執筆したのは
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
http://higashisayumi.net/
Instagram:@higashisayumi
再編集/CLASSY.ONLINE編集室
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