「日曜の夜に見てはいけない映画」4選【理由はいろいろなんですが…】

映画ソムリエの東紗友美です。今回の【大人女子のための映画塾】では、日曜の夜に見てはいけない映画を4本紹介します。どれもハッキリいってすべて良作ですが、日曜日夜に鑑賞してしまうと来る月曜日の朝、会社に行くのがイヤ率6割増しになる可能性が高いので、どうか気をつけて鑑賞を。
アラサー女子にオススメの自己啓発できる映画やデート映画もチョイスしているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

1.『食べて、祈って、恋をして』

仕事を休みたくなる、女が直面するあらゆること探究の書

イタリアやインド、バリ島でロケを行った美しい風景も見どころのジュリア・ロバーツ主演作。NYでジャーナリストとして活躍する女性が、離婚と失恋を経た後、すべてを捨てて自己探求の旅に出ます。イタリアでは食の快楽を追求し、インドでは精神力を高めるべくヨガと瞑想に浸り、最終的に訪れたインドネシアのバリ島では、恋に落ちます。タイトルそのまま、贅の極み…。コロナの影響で旅行になかなか行けない現状を踏まえますと、旅行気分を味わえて素晴らしいのですが、あまりにも楽しく暮らしすぎていて、ミラー効果なのか、こちらとしても完全に仕事を休みたくなります。特に休みたい欲に拍車をかけるのはイタリアパート、ここでは”何もしない歓び”を学ぶので、月曜日直前にはやはり不向きです。
ちなみに最初に観たときはジュリア・ロバーツ演じる主人公が、一見自己中心に見えて戸惑いましたが、2度めに鑑賞した際は「本当の自分がわからなくなってこの女性、混乱しているのね」と女子ならではの共感ポイントに出くわします。密かに「名言映画」としても映画好きには有名で「傷ついた心を持っていても大丈夫。何かのために努力した証拠だから」や「誰のために、このドレスを買うの?」という問いに対して「自分のために買うんだよ」と答えるなど、アラサー女子の処方箋となる名言にも出くわします。小説『食べて、祈って、恋をして』のサブタイトルは「女が直面するあらゆること探究の書」とあるだけに、一度は鑑賞しておいて損はない名作でしょう。

2.『アデライン、100年の恋』

ロマンチックな気持ちになり、しばらくその余韻に閉じこもっていたくなる

『ゴシップガール』でおなじみのブレイク・ライブリー主演。とある事故をきっかけに歳をとらなくなった、1907年生まれで100年以上孤独に現代まで生きている女性が主人公のアデライン。全く見た目の変わらない彼女は時にFBIに追われたりするため、関わる人に迷惑をかけたくないという願いから名前を変え、都度人生をリセットしながら生きています。そのため恋愛のチャンスは何度か訪れたものの、深い関係になることはできず、最後にはいつも姿をくらませてしまっていたんですね…。なんとも孤独…。でも、そんな彼女にも運命の出会いが、訪れます。
さて、この作品の見所はブレイク・ライブリーの現実離れした美しさ。個人的には彼女の美しさではNo. 1の作品です!しかも、彼女にとって出産後の復帰作。何といっても100年生きている設定を活かした時代ごとのファッションは髪型、メイクも華やかです。グッチやディオールのコートの着こなしといったクラシカルなファッションから普段着にドレスまで。『ムーラン・ルージュ』でアカデミー賞を受賞した衣装デザイナーの、アンガス・ストラシーが担当。そして“100年以上生きている女性の久しぶりの恋愛”というだけあって、相手男性オランダ人俳優・ミキール・ハースマンの魅力の説得力。セクシーな肉体をみせてくれたり、包容力抜群で現代を生きる王子の生き写しのようです。運命の恋✕ブレイク・ライブリーの美貌✕めくるめくファッション!
とにかくうっとりして、ロマンチックな気持ちになり、しばらくその余韻に閉じこもっていたくなるので、仕事前に観たくない作品です。「老い」をテーマにしたことで気付ける学びにも奥行きがあり、アンチエイジングに躍起になりすぎている人は、若さを維持するよりも年齢を重ねることの魅力に触れられるのもポイントです。

3.『冷たい熱帯魚』

負の感情がミキサーにかけられ、とにかく観るだけで疲れまくる

漬物石を10個背負って1キロほど歩いた直後を想像してみてください。実在するいくつかの猟奇的な殺人事件に着想を得た、人間の狂気と愛を描いたサスペンス『冷たい熱帯魚』の鑑賞後は、そんな感覚に襲われてしまいます。
とにかくグロいし、重いし、エロいし、怖いし、残酷。不愉快なハラスメント描写も…。負の感情がミキサーにかけられ「疲労困憊作用」をこれでもかと促します。私の場合、鑑賞した翌日の疲れは小学生の運動会後に匹敵するくらいでした。全力で鑑賞した感があります。しかし、同時にそれだけ引力を持つ作品で、単純に視覚的なキツさだけでなく、人間の精神の闇や主従関係の生まれてしまう心理構造まで掘り下げて描いていて、とにかく圧倒されるのがこの映画の凄さ。役者たちの演技も光っています。
念のため、はっきりいいますが人体の解体シーンがグロすぎますし、笑顔でそれをやってのけるキャラクターは…。「●●は死んだんじゃねぇんだ。ボデーが透明になっただけなんだよ」「ボデー(ボディではなくボデー…)が透明になっちまえば 何も分かりゃしねぇよ!!」と言いながら淡々と解体。はい、どう考えてもイヤすぎませんか…。覚悟してのご鑑賞を!

4.『世界の果てまでヒャッハー!』

秘境を旅している感覚で開放的に!明日から真面目に働けなくなる

はじめてこれを観た時は衝撃、いや笑撃しかありませんでした。フランスで8週連続ナンバーワンという驚異の大ヒットを記録したサバイバル・コメディ。正直うまくこの作品の説明をできません。フランス版ドリフ、ハングオーバーという表現が1番近いでしょうか?
恋人にプロポーズするために友人たちと、ブラジルにある高級リゾート地にバカンスにやってきた男。しかし恋人の祖母の世話を押しつけられ、気付けば大騒動。行方不明になりいつの間にやらジャングルの秘境ツアーに繰り出してしまいます(どうしてそうなった…)。消えた主人公たちに何が起こったのか、残されたビデオカメラの映像で突き止めていくという、一見ホラー映画形式のようなドキドキの設定でストーリーが展開しますが、これが意外にもコメディと相性よし。しかし、邦題のヒャッハーというニュアンスからも伝わるように、鑑賞してしまうとひどく偏差値の下がってしまう映画でもあります。
タイトル通り世界の果て、すなわち秘境を旅している感覚にもなれますので開放的になって、土日をストレスゼロで過ごしたい、そんな金曜日夜向けの映画として強く推したいです。珍道中をともにするおばあちゃんの豪快カーアクションも爽快です。大爆笑ですのでコメディ映画を求めている彼とのデートにもおすすめです!

いかがでしたでしょうか?どれも映画ソムリエイチオシの見応えたっぷりの作品群、ぜひ日曜日の夜以外で、楽しんでみてくださいね。

この記事を執筆したのは 東 紗

この記事を執筆したのは
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
http://higashisayumi.net/
Instagram:@higashisayumi

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