CLASSY.ONLINEでおなじみ、漢字の読み方を紹介する記事、今回は久しぶりに慣用句がテーマです。慣用句とは、「二つ以上の語が結びついた形で使われ、全体である特定の意味を表わすもの」。たとえば、「油をしぼる(=叱ったり責めたりして、きつく懲らしめる)」の類です。この中には、意外と読み間違いをしやすいものが多くあります。仮に自分で使うことはなくても、他人の発言や文章の中で、見聞きすることがありますので、読み方や意味は知っておきたいですね。
1. 「現を抜かす」
最初は、「ゲームに現を抜かして、勉強を顧みない」などと使われる「現を抜かす」です。さて、何と読みますか?
常用漢字表では「現」の読みは、「ゲン/あらわ・れる、あらわ・す」の音訓が示されます。でも、「ゲンをぬかす」ではありません。正解は「うつつをぬかす」でした。「現(うつつ)」とは、「目覚めているときに確かに存在する意識される現実」のことですから、「現を抜かす」で、「あることに熱中して本心を失う」の意味になります。
ところで、「夢うつつ」という言葉を聞いたことがあると思います。この語は「夢」と「現」が合体していますが、両者は「対義(反対)語」のはずです。ところが、「うつつ(現)」の意味が「夢」に寄ってしまい、「夢を見ているようにぼんやりした状態」として使っているのは、本来は誤りとも言えますね。
2.「なす術もない」
次は、「万策尽きて、なす術もない」などと使う「なす術がない」です。さて、何と読みますか?
常用漢字表では「術」の読みは、音読みの「ジュツ」のみです。そうなると、「なすジュツがない」としか読めなかった人もいるかもしれませんね。正解は「なすすべもない」でした。「なす」は「為す」とも書き、「する・行う」の意味。「為(な)せば成(な)る」なんて使い方もよく聞きますね。これに付いた「術(すべ)」は、「手段・方法」のことですから、「もうできることがない」というケースでで使います。
3.「縁も縁もない」
最後は「私と彼とは、もともと縁も縁もない」などと使う「縁も縁もない」です。同じ漢字「縁」が使われていますが、読み分けるのがポイントです。さて、何と読みますか?
正解は「エンもゆかりもない」でした。常用漢字表では「縁」の読みは、「エン/ふち」の音訓が示されますが、「縁」は常用漢字表にない表外訓が、「よすが、えにし、ゆかり、へり、よ・る」とたくさんあります。この中の「ゆかり」とは、古い時代から使われている言葉で、「何かのつながりがあること」を表わし、「所縁」とも書きます。お菓子や食品名を思い起こす人もいるかもしれませんが、各社ウェブサイトによれば、やはり「ご縁を大切にする」思いが込められているネーミングのようです。以上のように、「縁も縁もない」とは、同じ意味の言葉を重ねた表現で、「何も関係はない」ことを強調して表わしています。
いかがでしたか?皆さんも、慣用句を正しく使いこなして、「大人の会話」を目指してみてはいかがでしょうか。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「古語林」(大修館書店)
・「読めそうでギリギリ読めない漢字」(河出書房新社)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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