『進撃の巨人』や『ワールドトリガー』をはじめ多数の作品に出演、現在の声優人気を牽引している梶裕貴さんがCLASSY.ONLINEに登場! 日本はもちろん、世界中で大ヒットを収めている『僕のヒーローアカデミア』(通称『ヒロアカ』)の主要キャストの1人、轟焦凍(しょうと)も梶さんが演じている代表的なキャラクターの一つです。この夏、待望の劇場版第3弾が公開。インタビュー1回目ではまず作品の見どころを梶さんにお聞きしました。
――今回の劇場版は「ワールド ヒーローズ ミッション」というサブタイトル通り舞台を世界に移し、まさに世界中のファンが待ち望んでいる作品です。劇場版第3弾が決まった時の気持ちは?
「とにかく、とても嬉しかったです! なにせ、2度目の映画化の時に(堀越耕平)先生が『原作の最終話として考えていたストーリー案のひとつ。今後もう映画化することは無いでしょう』とおっしゃっていたので、期待してはいけないなと思っていたんです。でも、それ以降も世間のヒロアカ熱はますます盛り上がりを見せるばかりだったので“もしかしたら…”という気持ちもどこかあって。そんな時に第3弾決定のお知らせを聞き、ものすごく気持ちが昂りましたね! “-世界を、救え。-”とキャッチフレーズにあるように、ついに轟たちの活動が世界規模になったという事実も感慨深かったです。彼らはまだインターン生ではあるけれど、現場に立つ以上、その責任はプロと同等。過酷な環境に戸惑いながらも、必死に奮闘する彼らの姿には心打たれました。“これまでの物語を経て、確実に成長した彼らの姿がここにはある!”と感じましたね。加えて今回は、演じさせていただいている轟焦凍も、物語の根幹に関わる大切なポジションを担っているというのが、演者として誇らしかったです」
――梶さん演じる轟 焦凍(しょうと)が物語の軸に関わっているというのはとても楽しみです。今回の映画で轟がどのように成長しているか、また見どころも教えて下さい。
「轟の成長を最も感じるのが、父であるエンデヴァーとの関係性です。そもそもインターンの実習先にエンデヴァー事務所を選んだというのが、物語初期の頃から考えるとあり得ないこと。この選択自体が、そのまま彼の成長を表していると思います。彼の個性である“半冷半燃”は父の炎燃と母の氷結から成っているんですが、序盤では、母を苦しめた父への反目から頑なに炎の個性を封じていて。その後、物語の中で主人公・緑谷(出久)との出会いを通して炎も扱うようになっていくわけですが…それって、能力を使う・使わないという単純なことではなく、葛藤しつつもどうにか自分を顧みて、父や家族と向き合えたからこそできたことなんです。今でも父との関係にぎこちなさはあって、まだまだ未完成ではあるものの…そんな風に健気に向き合おうとする姿勢には、彼の大きな心の成長を感じますね。そんな彼のひたむきな心の在り方に感銘を受けるのは、僕だけでなく、きっと読者や視聴者の皆さまも同じだと思います。そして彼のプロヒーローという夢は…No. 1ヒーローになるという夢は、そんな父に追いつき、追い越した時に成就するものだと思うんですよね。本作品では、その片鱗が垣間見えたような気がするので、是非そのあたりを楽しみにしていただきたいです」
――父との関係性に悩む轟を演じる難しさはありましたか?
「親と子の関係性に悩むことって、どんな人にでもあると思うんです。特に、同性の親への何かしら偏った思いというか、壁みたいなものって。息子にとっては、父親が一番身近な男性像・大人像なわけで。その父にライバル心を抱いたり、わずらわしく思ったりする気持ちは、僕自身も通ってきた道だからこそ理解してあげられている部分もあると思っているんです。“父との確執”というドラマを背負っている轟に、ある種の縁を感じながら、自分の人生経験を演じるうえでのアクセントとして活かせたらなと思いながら向き合っています」
――『ヒロアカ』にはいろんな“個性”(超常能力)が出てきますが、劇場版第3弾を迎えた今、好きな個性は変わりましたか?
「“個性”があるか、ないか。持っていたとして、どんな“個性”なのか。それも本作品のテーマのひとつだと思っています。最強のNo.1ヒーローであったあのオールマイトですら、激戦の果てに引退し、今は指導者となりましたし…そんな彼の個性“ワン・フォー・オール”は間違いなく最強クラスだと思いますけれど、それを継承したはずの緑谷も、現に葛藤し続けている。他にも、通形ミリオというキャラクターの個性は“透過”というものなんですが、普通は“どうやって戦いに活かすの?”というような能力なんです。でも、本人のアイディアと努力で、ものすごく強力なものに仕上げている。“強い能力を持っているから最強か?”といえば決してそんなことはなく、それなりの対価を支払って…血の滲むような努力と経験の果てに、物理的にも精神的にも使いこなすことができなければ、その個性は活きてこないんですよね。
“個性”ってつまり、今の僕らの言葉の意味に置き換えると“自分・己”ということにもなると思うんですが、結局はどんな“個性”であろうと“自分が持っている力としっかりと向き合って、それをどう外に伝えるか”を考え、実行にうつさなければ、結果はついてこないものなんだなと改めて感じました。そして、今回の主題歌はASIAN KUNG-FU GENERATIONさんの『エンパシー』という曲。“エンパシー”という言葉に、恥ずかしながら馴染みがなかったので調べてみたのですが、“他者に対して共感すること=シンパシー”とは違って“自分とは違う他者の考えを理解しようとすること=エンパシー”というそうです。あくまで僕なりの表現ではありますが。でも、それってすごいことですよね。まさに“個性”で社会と繋がっていく『ヒロアカ』のテーマだ!と感動しました」
――轟、デク、爆豪の3人が今回の作品で、どのように個性と向き合って戦ったのか教えてください。
「誰もが憧れる“個性”を手に入れ、強い意志があるけれど葛藤し続けている緑谷、誰よりも強い勝利への執着がありつつも、仲間と共闘することの大切さを学んだ爆豪(勝己)、誰にも共有することのできない重い過去を抱えつつも、新たな一歩を歩み始めた轟。これまでのドラマにも幾多の苦難がありました。それぞれの強い“個”だけでは乗り越えられない壁に何度もぶち当たるなかで、この3人は仲間の大切さを学び、信頼関係を築いてきたと思うんです。そんなタイミングで、満を持して描かれる『ワールドヒーローズミッション』。今だからこそ立ち向かえるハードルが、ここにはあります。3人の絆を感じられる物語となっておりますので、ぜひ映画館でご覧ください!」
次回は、梶裕貴さんご自身についてインタビュー。好きな女性のファッションについてなど盛りだくさんでお聞きしたのでお楽しみに!
梶裕貴
1985年東京都生まれ。『進撃の巨人』エレン・イェーガー役、『七つの大罪』メリオダス役など多数の作品でメインキャストを務める、声優人気を牽引する中心的存在。梶裕貴YouTubeチャンネルの開設や、アパレルブランド「en365°(エンサンビャクロクジュウゴド)」を立ち上げるなど、多方面で活躍中。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』
‘14年に『週刊少年ジャンプ』で連載開始以来、コミックが世界累計5000万部を突破、TVアニメシリーズは第5シーズン放送中、劇場版も国内のみならず世界各国でヒットを収めている超人気シリーズ『僕のヒーローアカデミア』待望のアニメ劇場版最新作。世界中の“個性”保持者の殲滅をもくろむ謎の組織ヒューマライズにデク・爆豪・轟の3人が立ち向かう。声の出演:山下大輝、岡本信彦、梶裕貴ほか 原作・総監修・キャラクター原案:堀越耕平(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)●8月6日(金)公開
撮影/平井敬冶 ヘアメーク/中山芽美(e-mu) スタイリング/SUGI(FINEST) 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)