日本全国に792ある市の中から、地元の人なら難なく読めても、そこに縁のない人にとっては読めない市名ってありますよね。47都道府県から一つずつ選んで出題する「日本難読市名に挑戦」の第3回目「中部」編。中部9県の各県代表となる難読市名をご紹介します。
1.「新発田市」(新潟県)
新潟県からは「新発田」です。すべて常用漢字、普通に読めば「シンハツデン」でしょうか。
正解は「しばた」です。地名の由来としては、「米どころ 新潟」なだけに、「新たに開かれた田」的な説があるようです。新発田市は、新潟県北部に位置し、県庁所在地の新潟市に接しています。
2.「滑川市」(富山県)
富山県からは「滑川」です。地名は古い地名ほど訓読みで読まれる傾向にありますが、常用漢字「滑」には「すべる・なめらか」の訓読みがあります。
正解は「なめりかわ」でした。ここで「川」は濁りません。地名の由来としては、波が逆流入する「波入川」と呼ばれたものが「滑川」となったという説などがあるようです。滑川市は、富山県の中央部のやや北東に位置し、富山湾に面しています。沖合はホタルイカの生息地として知られ、世界で唯一の「ほたるいかミュージアム」があります。
3.「羽咋市」(石川県)
石川県からは「羽咋」です。中部編では一番の難読地名でしょう。「ハサク」「ウサク」などと読まれた方が多いのではないでしょうか?
正解は「はくい」でした。「咋」は常用漢字ですが、音読み「サク」だけが示されますが、意味(訓読み)として「食う」があります。地名の由来は、かつて現れた怪鳥の「羽」を犬が「食い」退治したという伝承によるそうです。「はくう」から「はくい」の変化ですね。羽咋市は、日本海に突出した能登半島の西の付け根あたりに位置します。
4.「鯖江市」(福井県)
福井県からは「鯖江」です。漢字クイズの定番「魚へん」の右側は「青」の旧字体「靑」ですが、読めますか?
正解は「さばえ」でした。地名の由来は、古代このあたりの豪族が平定された際に、天から降ってきた矢が「鯖の尾」に似ていたことから、この地が「鯖矢」と名付けられ、その発音変化ですね。鯖江市は、福井県のほぼ中央に位置しますが、メガネフレームの国内シェア9割以上を誇ります。
5.「笛吹市」(山梨県)
山梨県からは「笛吹」です。難読縛りから「うすい」と読んだのではないでしょうか。そう読む名前の方もいますからね(「うすい」と読むのは諸説あり)。
しかし、この市名は、素直に「ふえふき」と読みます。笛吹市は、甲府盆地のほぼ中央に位置し、平成16年に近隣6町村の合併により誕生した市です。市内を命名の元となった笛吹川が流れ、桃とぶどうの生産日本一を誇ります。
6.「安曇野市」(長野県)
長野県からは「安曇野」です。ました。
正解は「あづみの」です。このかな表記にも注目してください(「あずみの」ではないのは市の見解)。地名の由来は、古代、北九州地方の氏族の一つ「安曇氏」が、遠くこの地にも移住してきたことによるそうです。安曇野市は、長野県のほぼ中央に位置する市で、平成17年に近隣5町村の合併により誕生しました。市の西部は、雄大な北アルプス連峰がそびえ立つ中部山岳国立公園の山岳地帯です。
7.「各務原市」(岐阜県)
岐阜県からは「各務原」です。
正解は「かかみがはら」です。「かがみがはら」(JRの駅名はこれ)は不正解です。市名は昭和38年の合併の際、古代からあった美濃国「各務原」郡が採用されました。「各務」は銅鏡などを作る職人がいたことによるそうです。つまり、「各務=鏡(かがみ)」」だったのですね。各務原市は、岐阜県南部に位置します。古くは中山道の宿場町として栄え、現在は航空機産業とともに発展した名古屋に近いベッドタウンです。
8.「湖西市」(静岡県)
静岡県からは「湖西」です。どこが難読?と思うかもしれません。しかし、地元以外の方に「コサイ」か「コセイ」かと尋ねれば、迷うのではないでしょうか。
正解は「コサイ」でした。「西」の音読みは、「サイ(呉音)」と「セイ(漢音)」の二つが認められています。「東西」は「トウザイ」、「北西」は「ホクセイ」と読むように、「サイ・セイ」は混在しています。全く同じ漢字で、琵琶湖の西を通る鉄道に「JR湖西(コセイ)線」があるので、関西の方はこれと間違えたことでしょう。湖西市は、静岡県の最西端で、愛知県と接していますが、東側はその名の通り「浜名《湖》」に面しています。
9.「知立市」(愛知県)
愛知県からは「知立」です。
これも普通に読むと「チリツ」でしょうが、正解は「チリュウ」でした。現在、「立」を含む熟語の多くは「リツ」と読まれていますが、これはいわゆる「慣用音」で、これとは別に「リュウ」の音があります(現在目にするのは「寺を建立(コンリュウ)する」くらいでしょうか)。知立市は、愛知県のほぼ中央に位置し、ここには古くから地名の元となる「知立神社」がありました。江戸時代には東海道五十三次の宿として「池鯉鮒」宿が栄えましたが、これも読みは「チリュウ」と読みます。
ちなみに「中部」地方って、どこまでかわかりにくいと思いませんか?とくに「三重県」が「中部か近畿か」と迷う方は多いはずです(三重県のHPでも「どちらにも属している」という曖昧な見解)。ですが、今回は三重は近畿として、中部9県の各県代表となる難読市名を選びました。
各問の解説文作成にあたり、今回も該当各市のHPも閲覧させていただきました。次回は「近畿」編です。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「難読漢字の奥義書」(草思社)
・「旅に出たくなる地図 日本」(帝国書院)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室